「大統領制型2大道州制」の検討状況
道州制実現推進委員会委員長 小俣 一郎
道州制実現推進委員会では2011年、約1年をかけて「大統領制型2大道州制」について議論してきました。現在も検討を続けている最中ですが、現時点までにまとまった内容等を会員の皆様にご報告し、ご意見を伺い、更に多角的に検討を加えたいと考えています。ご意見を私宛にお送り頂ければ幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「大統領制型2大道州制」
大統領制型2大道州制とは、50ヘルツと60ヘルツという電気の周波数を境に、東西の2つの大きな州(東日本州と西日本州)に分ける道州制で、各州の運営にはアメリカ合衆国大統領制の長所を取り入れている。
これは、平成23年1月に「生活者主権の会」で提案された考えで、現在、同会の「道州制実現推進委員会」でさらに検討が加えられている。
基本的な考え方は、「地域主権型道州制」とほぼ同じだが、州を2つにしているところに大きな特徴がある。日本を、国・東日本州・西日本州という3つの政治的な極を持つ国に変える構想。
また、将来的に2つの州からさらに新たな道州が独立することも想定しており、道州制を早期に実現するための、「地域主権型道州制」への一過程ということもできる。
政治改革のために、州にアメリカ合衆国大統領制の長所を取り入れていることも大きな特徴で、
1.各州の知事は、住民が直接選挙で選び、任期は4年、2期8年までとする。
2.州知事選挙では、副知事及び複数の知事補佐官候補を事前に指名することを義務付け、共に審判を受けるようにする。つまり、事前に「チーム」をつくり、「チーム単位」での選挙とする。
3.州知事に事故があったときは、副知事が残りの任期を担当する。
4.州の幹部スタッフは、州知事のブレーンを多数外部採用し、州知事交代の際には入れ替えることができるようにする。
5.州議会議員の任期は2年。議会は解散なしで通年開催とする。
6.州知事選挙は必ず州議会選挙と同時に行う。
といった仕組みを取り入れている。
○ポイント
a.受け皿を大きくすることにより、国から地方への権限・財源・人材の早期移行が実現する。
b.国の官僚機構の多くを道州に移行することにより、中央集権の弊害、縦割行政の弊害が是正できる。
c.日本の政治の仕組みを、州・基礎自治体が『自主・自立』を基本として運営する『分権型国家』に変えることにより、政治的な役割分担を明確にし、責任の所在をはっきりさせることができる。また、その地域の実情に最も相応しい政治が行われるようになる。
d.国の権限の多くを地方に移すことにより、参議院が強すぎるという現在の日本型議院内閣制の欠点を是正することができる。
e.直接選挙の幅が広がるので、選挙民が自らの意思と責任でリーダーを選べる。
f.東西の州で、また基礎自治体間で政策を競うことにより、政治の質がより高まる。
g.国政の仕組みを根本から変えるような大改革だが、憲法を変えずに行える。
h.議員・首長の数を大幅に減らすことができる。
○キャッチフレーズ
「政治家は減らす 役人は移す」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上記は、9月2日の委員会で決定した「ウィキペディア」に掲載しようとした文です。残念ながら、この文章は、当会の「広告宣伝」と判断されてしまい、現在「ウィキペディア」でこれを見て頂くことはできませんが、全体像を把握して頂くためには最適だと思い、まずこれを掲載しました。
次に現時点で考えている実現手順を掲載します。これはまだ議論を始めたばかりで議論が足りないところもありますが、国のしくみを「早期」に、そして「段階的」に変えられるという特徴を全体の流れでつかんで頂ければと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「実現手順」
(概略)
1.現在の国政を「国」が行うべきものと「地方」が行うべきものに分け、「東日本州」と「西日本州」という新たな州をつくり、「地方」が行うべきものは「国」から「東日本州」「西日本州」に移す。
2.現在の「政令指定都市」を新制度での「基礎自治体」とし、都道府県と対等の自治体とする。
3.他の市町村を「基礎自治体」と「特別基礎自治体」に分け、都道府県の機能を「基礎自治体」及び「州」に移す。
4.都道府県を廃止する。
【第1段階】
1.「大統領制型2大道州制移行法」を作成する。
2.衆参両院の過半数、あるいは、衆議院の3分の2以上の賛成で「移行法」を可決する。
3.道州を設置にできるように地方自治法等を改定する。(必要に応じて法律を順次改定する。)
4.国会で、「州知事」及び「州議会議員」選挙の日程を決定する。
5.国会で、各「州都」を決定する。
6.現在の国政を、「国」が行うべきものと「州」が行うべきものに仕分けする。
7.州都に「州庁」を設置し、該当する霞が関の機能を移行する。(権限・財源・人材を移す。)
8.州知事・州議会議員を選挙し、州の行政を開始する。
9.州行政開始後の国政選挙から順次、衆参の国会議員を削減する。
【第2段階】
10.都道府県の機能を「州」及び「基礎自治体」に移行できるように地方自治法等を改定する。
11.現在の都道府県の機能のうち、広域行政に該当する部分を「州」に移す。(担当職員も移す。)
12.現在の政令指定都市を新制度での「基礎自治体」とし、都道府県と対等の自治体とする。
13.都道府県議会から政令指定都市に配分されている議員定数を削減する。
【第3段階】
14.「特別基礎自治体」及び「基礎自治体の行政区」を新設できるように地方自治法等を改定する。
15.政令指定都市以外の市町村と東京23区を「基礎自治体」と「特別基礎自治体」に分ける。
16.準備が整った「基礎自治体」に、順次「都道府県」の残りの機能を移行する。(担当職員も移す。)
17.都道府県議会から「機能移行が完了した基礎自治体」に配分されている議員定数を順次削減する。
18.「特別基礎自治体」に関する都道府県の機能は、「州」に移行する。(担当職員も移す。)
19.特別基礎自治体に対する補助の方法等を「州議会」で決定する。
20.人口70万を超える基礎自治体に「行政区」を設置し、首長・議員を公選する。(70万以下も可)
【第4段階】
21.基礎自治体及び州に機能移行が完了した都道府県より順次廃止する。
22.個々の事情により基礎自治体への移行が不十分な機能を州に一時的に移す。
23.すべての都道府県を廃止する。
【その先の可能性】
24.2つの道州を分割して、道州を更に増やす。(例えば、北海道・名古屋[中部]州・九州・沖縄州など)
25.人口が100万?を超える基礎自治体は分割する。
26.特別基礎自治体を合併により、基礎自治体にする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○なぜ「大統領制型2大道州制か」
この案を道州制実現推進委員会で提案し、議論を始めた理由は、政権交代したにもかかわらず政治が前に進まないのは、日本の政治のしくみ自体に大きな問題があると改めて感じたからです。
第二院の参議院が強大な権力を持っている「日本型議院内閣制」という不安定な制度のために、国政の最高責任者である首相が毎年変わる。これで政治が安定するはずはありません。しかもその国に権限の多くが集まっているために、それが日本全国に波及して、地方も含めてすべてが不安定になってしまう。この根本のところを直さないと日本の政治の再生はないのではないでしょうか。
それを、東西の2つの「州」という大きな地方自治体をつくることによって早期に実現しようという構想が「大統領制型2大道州制」です。
○権限・財源・人材を「早期」に移行し、政治的な役割分担を「早期」に明確にする
民主党でも自民党でも他の野党でも、ほとんどのところは国から地方への権限の移行を口にしますが、現実にはそれは遅々として進んでいません。そこには受け皿をどうするかという大問題があります。
そこで、東西2つの「大きな受け皿」を州という形で新たにつくり、そこに現在国が抱えこんでいる政治分野で地方が担当した方がよいと思われるものを、現在それを担当している官僚ごと移してしまうのです。これが「地域主権」を一番早く実現する方法ではないでしょうか。
今の国政が分かれ、国と地方の役割分担が明確になれば、国民の選択肢も広がります。多くの問題が複雑に絡んでわかりにくくなっている選挙での選択が、極端に言えば、外交と内政に分けて選択できるようになります。それにより選挙民の意思をより反映した政治家が選出されることになるはずです。
○新しい組織をつくり、理想的なしくみを政治に組み込む
既存の組織を変更するのに比べて、新たな別の組織、別のしくみをつくることは、それまでの慣例やしがらみに囚われることがない分、現在あるものを変更するよりもより理想的なものをつくることができます。そこでまず新たなしくみである「州」をつくり、そこに現在日本が抱えている政治的諸問題を改善できるシステムを組み入れます。つまり、アメリカ合衆国大統領制の長所を取り入れて「直接制を拡大」し、また「ねじれを改善」するわけです。
また新しくつくるのですから、州庁は現在の省庁間の壁を取り払ったものにします。そうすれば現在の縦割行政の弊害をなくすことができます。もちろん、一度つくられた組織も州知事のリーダーシップがあれば容易に最善の組織体に変えることができるでしょう。
○州にアメリカ大統領制の長所を取り入れる
州では州知事を副知事とペアーで、さらには補佐官も含めて「チーム」単位で、選挙で選べるようにします。また「幹部スタッフの政治任用」も制度的に組み込んでしまいます。
4年の任期を担保された州知事が、専門性を持った側近を伴って政治を行えば、議員の力関係で専門外の大臣が選ばれるような日本型議院内閣制に比べて、格段に実効性のある政治を展開できるのではないでしょうか。橋下大阪市長のような強力なリーダーシップを持った知事が、しかも「チーム橋下」を引き連れて西日本州を運営する、そのような姿を思い浮かべて頂ければと思います。
また州知事と議会のねじれをふせぐために、州議会の選挙は知事の選挙と同時に行います。そうすれば議会とのねじれで知事の政策が進まないといった事態を防ぐことができるはずです。
そして議員の任期もアメリカ下院と同様に2年とします。2年目に中間選挙として州議会選挙を行えば州知事にストップをかけることもできます。中間選挙で敗れたオバマ政権が議会に妥協しているように、それで州知事の暴走を防ぐことができるでしょう。また、2年ごとに議員への審判があれば、議員もより働かなければならなくなります。
○州が安定するまで、現在の都道府県・市町村のしくみは大きくは変更しない
大統領制型2大道州制の大きな特徴は、国の改革から始めるところにあります。まずは今の国政を国と州に分けることに専念し、州が安定するまでは現在の都道府県・市町村のしくみを大きくは変更しません。ですから身近な役所の役割に当面はほとんど変化がなく住民に過度の不安感を与えずに済みます。
その後も、都道府県の広域行政分野を州に移す、政令指定都市を都道府県と同等にする、などを段階的に行っていく案ですので、大改革ではありますが、国民の混乱は最小限度に抑えられるはずです。
○重複がなければ、政治形態が当面4層になっても構わない
新たに国と都道府県の間に「東日本州」「西日本州」をつくることによってその段階では政治が4層になります。これは委員会でも大いに議論されたところですが、最終的には都道府県を廃止しますが、制度改革が完了するまでは部分的に4層になります。しかし、いわゆる行政の重複がなければそれは容認できるのではないか、というところに議論は落ち着きました。
重複さえなければ、どこが政治的にその分野を担当しているかが明確になります。それは国なのか州なのか、それとも市町村か、それが明確になれば、国民の声を政治に反映させやすいし、国民が最終的に判断を下す選挙における争点も自ずと明確になってきます。
もちろん、当面組織が増えるわけですから、全体として経費が増大しないかという大きな問題もあります。しかし、役人を国家公務員・地方公務員を問わず、最善の形で移動させれば、つまり人員配置の見直しを全面的に行えば経費の増加は最小限度に抑えることができるはずです。
そして、公務員の給与が民間と比べて適正かどうか等を改めて、選挙を通じて国民が判断し、経費の縮小策を決定していくことになります。
○第一段階が実現すれば、日本の政治は一変します
最終的に目指すところは「第4段階」ですが、第1段階が完了すれば、日本の国かたちは大きく変わります。そしてこれは国会議員の多くが決断すれば実現が可能です。
いまのような、毎年首相が代わるような制度でよいのか、官僚に振り回されている現状でいいのか、システムを変える必要はないのか、国会議員の皆さんによく考えて頂きたいと思います。
現在国が抱えている多くの難問のうち、地方ができるものを州に移せば、国会・内閣の役割もその分軽減されます。それにより国会・内閣も蘇るのではないでしょうか。
○ぜひホームページをご覧下さい
http://www.seikatsusha.org/dohshusei/index.html
その他、「東京一極集中の改善」「二重行政の解消」「基礎自治体の基本的な姿」「大きい基礎自治体には行政区を設け、公選の首長・議員を選ぶ」「基礎自治体のあり方は住民の意向を尊重する」「特別基礎自治体というかたちで『矢祭町的なあり方』を容認する」「議員の数を減らす」「日当制の議員を増やす」等々、申し上げたいことはいろいろあるのですが、残念ながら紙面がなくなってしまいました。
これからも折に触れて、会報でご報告したいと思いますが、議論の内容等は、当委員会独自のホームページに掲載されていますので、ぜひそれもご覧頂ければと思います。
会員の皆様のいろいろなご意見をお待ちしております。