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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成25年2月1日 Vol.111━

アベノミクスは成功するか?

                      生活者主権の会  松井 孝司

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アベノミクスの成否

 第二次安倍内閣は発足早々アベノミクスで円安、株高が実現しつ
つあり、緩やかなインフレによるデフレ経済の脱却と貨幣で計量さ
れる国内総生産(名目GDP)の増大の期待が生まれ順調な滑り出
しをしている。

 インフレによる貨幣価値の下落は日本の富を減少させる愚策だと
する批判もあるが、貨幣は価値と信用の媒体に過ぎず貨幣の量が日
本の富ではない。日本国内の土地と人材が生む生産力が維持され、
悪性のインフレを防止できれば貨幣量の増加は気にしなくてもよい
だろう。日本に通貨安戦争を警告する国もあるがインフレに苦しむ
国が自国の通貨安を許したら自分の首を絞めることになる。デフレ
に苦しむ日本だけが通貨安を許容できるのだ。円安誘導で国内の生
産力が海外に流出することを阻止することが重要であり、アベノミ
クスの成否は国債発行額を上回るGDPの増大を達成できるかどう
かに懸っている。

 インフレは貨幣価値を減少させるので公務員や年金受給者、現金
を蓄える高齢者には不利であるが既得権に守られる官民格差、世代
間格差を是正する効果が期待できる。しかし、インフレで資産価格
が増大すれば資産を持つ者と持たざる者の格差が拡大し、土地や株
式への投機でバブル経済を再現させる危険性がある。土地、株式の
売買による収益には累進課税ができるように所得税の分離課税制度
は廃止するのが賢明な策と思う。

 インフレによる国債金利の上昇がアベノミクス最大のリスクとも
いわれているが、金利が理不尽に上昇したら新規国債の発行を中断
し、金利ゼロの政府貨幣で借り換え債を償還すれば金利の抑制は可
能である。日本には政府紙幣で歳入不足を補った前歴があり、明治
の初期過度のインフレを招くことなく政府紙幣と金札公債を担保に
して国立銀行紙幣をダブル発行した実績がある。明治15年に発足し
た日本銀行は西南戦争で乱発した紙幣を回収して松方デフレを引き
起こしたが、インフレ抑制は日本銀行の得意とするところでバブル
経済崩壊後の平成デフレ不況でもその遺伝子が引き継がれているこ
とが実証された。

 アベノミクスで危惧されるのは積極財政のつもりの歳出が放漫財
政に化けてしまうことである。投資をしても付加価値を生まない公
共事業の増大が心配だ。交通量が少ない道路の建設や農林業の育成
を忘れた耕作放棄地での補助金漬け太陽光発電などはその典型例で
ある。

 農林業再生のためにも円安誘導は不可欠であり、円安になれば巨
額の補助金を農林業に投入しなくても日本の農産物が海外の安い農
産物と競争できるようになりTPP(環太平洋パートナーシップ協
定)を徒に恐れる必要はなくなるだろう。

 GDPは領海も含めた日本国内の土地が生む付加価値の総和であ
りアベノミクスを成功させるには人口ではなく土地の単位面積当た
りの付加価値を増大させる視点が欠かせない。都市部への人口集中
は効率化と利便性を求める経済活動の必然の結果でもある。東京へ
の一極集中で地方の疲弊を招いているが、道州制を導入して人口集
中を日本全国の都市に分散し、地方の小都市は限界集落を吸収して
コンパクトシティー化すべきだ。都市部住宅投資の経済波及効果は
大きく消費税25%のスエーデンでも住宅に対する消費課税はゼロで
ある。日本も地震による災害が危惧される木造住宅密集地の区画整
理や省エネ型街づくりなど付加価値を生む都市環境整備のためのイ
ンフラ投資は積極的に推進して内需を喚起し、人口減少を放置せず
労働力不足を補うために規制を撤廃して優秀な若い人材を海外から
誘致できればGDPの倍増も可能だろう。


安価なエネルギーの重要性

 アベノミクスの3本の矢とされる金融政策、財政政策と成長戦略
のうち成長戦略が最も重要であり且つ実現が困難な課題だ。GDP
の増大に欠かせないのが安価なエネルギーの獲得と海外交易の拡大
である。GDPは国内企業の総売り上げと総原価の差額でありエネ
ルギーコストはすべての経済活動の原価になる。円安でエネルギー
コストが増大すれば日本企業の競争力が低下して貿易収支の赤字は
常態化しGDPの増大は望めない。円安を志向するアベノミクスに
とって成長戦略を成功させるために克服しなければならない最大の
難題だ。

 産業のエネルギーコストを下げるためには発送電事業を分離し電
力事業に競争原理を導入することが重要になる。発電事業には過剰
な規制や保護を加えず完全に自由化し、送電事業は地域独占の私的
利益を回避するため半官半民の企業(公的資金が投入された東京電
力など)に託し電力の安定供給を義務付けるべきだろう。

 長期的戦略としては外国に依存しない自主エネルギーの獲得が重
要であり、日本の領海に存在するメタンハイドレートの採取技術の
向上や海上での緑藻類培養による光合成技術など日本の科学技術を
総動員して新エネルギー資源を発掘する必要がある。

 短期的な戦略としては原発の安全性を確立して再稼働させ、プル
トニウム廃棄物をエネルギー資源として再利用する技術開発を急ぐ
べきだ。プルトニウムの再利用に最も有望視されるのがトリウム原
発である。現行の軽水炉原発を潜水艦用に開発したワインバーグ博
士は米国のオークリッジ国立研究所で航空機用にトリウム溶融塩炉
の実証炉を完成させ、安全性が高く小型化が可能なトリウム原発の
採用を中曽根首相にも働きかけたといわれるが実現しなかった。最
近になって米国、中国、インドなどでトリウムが再度注目されるよ
うになった理由はトリウムがレアアースの副産物として豊富に存在
し、プルトニウムを中性子源として利用することにより核燃料とし
て燃焼、消滅させれば核廃棄物を激減できるからだ。トリウム原発
も放射性廃棄物を残すが少量なら放射線を恐れる必要はない。高い
自然放射線で知られるインドのケララ州は住民の長寿で知られ、日
本でも原爆の洗礼を受けた広島市が長寿番付で上位を占めている。

 核エネルギーは人類にとって20世紀最大の発見であり少量の原子
が生む膨大なエネルギーの付加価値は計り知れない。原子力安全革
命をめざしてトリウム原発を実現しようと故古川和男氏は孤軍奮闘
されたが、高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発を否定されたためか
古川氏は原子力村から村八分にされ日本でのトリウム原発の実現は
中国に遅れを取ってしまった。しかし、日本はトリウム溶融塩炉を
実用化するために必要な溶融塩技術、無人ロボット技術の先進国で
ある。正しい知識で国民の放射線恐怖症を解消し、地球温暖化の防
止、低炭素産業革命実現のために原子力の安全な利用技術を早期に
確立すべきだ。

 アベノミクスは日本経済再生の最後のチャンスといわれるが、安
価なエネルギーの獲得に失敗し石油ショックの歴史を繰り返すこと
になれば物価だけが高くなる悪性インフレで日本の経済成長は難し
くなり、財政の健全化も望めず日本の財政破綻が現実となるだろう。

「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


生活者通信メルマガ版
(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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