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━━━生活者通信メルマガ版━━━ 令和2年12月1日 Vol.150 ━

「大阪都構想」より「道州制」の実現を!

                  生活者主権の会 松井 孝司

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「大阪都構想」とメデイアの偏向報道

 2012年に与野党7会派の共同提案で成立した「大都市地域特
別区設置法」にもとづき大阪市を廃止して4つの特別区を設置する
「大阪都構想」の是非を問う住民投票が2020年11月1日に実
施された。

 都構想の背景には大阪経済の地盤沈下への危機感がある。名目府
内総生産の低下に歯止めがかからず2019年に府外に転出した企
業は237社もあったという。
 二重行政の解消に加え、東京一極集中の是正と大阪を日本の副首
都にするために大阪維新の会が10年に亙って築き上げた構想を実
現するための戦いであったが既得権益を死守する与野党の抵抗勢力
に負け反対多数で否決されてしまった。

 投票日の一週間前、10月26日付毎日新聞の「大阪市の4分割
でコストが218億円増える」との報道は意図的な「誤認誘導報道」
である。NHKと朝日新聞が真に受けて続報し、誤認に気づいて訂正
したが毎日新聞は訂正しないまま投票日を迎えており、反対勢力と
結託したメデイアによる偏向報道であった。
(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76959参照)

 巨大メデイアの報道が地域住民の投票行動に大きく影響したこと
に疑問の余地はない。反対票を投じた人の多くがメデイアに洗脳さ
れ易い女性と既得権を持つ高齢者であり、大阪の未来を担う若年層
や大阪市北部に居住する政治意識の高い住民は賛成票を投じたよう
だ。
 一貫して都構想に反対してきた公明党が衆議院大阪選挙区の議席
欲しさに賛成に転じ、若干の修正を加えて住民投票実現に協力した
が女性票が多い公明党支持者の意識を変えることはできなかった。

 誤認を訂正したとはいえNHKと朝日新聞が毎日新聞の報道に追従
した影響は大きく、SNS(Social Network System)を含めフェイク
ニュースの安易な拡散と視聴者に迎合するTV各局の横並び報道が日
本国民の考える力を低下させている。
 民主国家では政府よりメデイアの影響力が強く東日本大震災の福
島第一原発事故に起因する「放射線の風評被害」が10年を経過し
た今もなお終息せず、1000個の巨大タンクにトリチウム水を溜
めつづける愚策の原因は不正確な知識で放射線のリスクだけを煽る
日本のメデイアの偏向報道にある。
 核反応エネルギーの利用やパンデミック予防のためのワクチン開
発は最先端の科学知識が求められる高付加価値の知識集約産業であ
る。日本の高付加価値産業が欧米や中国に後れをとる理由もリスク
・ゼロを求める国民とメデイアの報道姿勢にある。

 日本のメデイアと自民党と共産党が共闘する不可解な行動の背景
には天下り利権団体や公務員と巨大メデイアが持つ既得権益を死守
する意図があり、改革反対勢力と結託するメデイアが攻撃したいタ
ーゲットには既得権と悪しき前例主義を否定する菅内閣も含まれて
いるのではないか?


中央集権制を解体して「道州制」の実現を!

 大都市が行政権の拡大を求める動きは早くから始まっており、
1956年に現行の政令指定都市制度ができたが、「都道府県」と
「政令指定都市」は行政権が重複するので業務や施設も重複する無
駄が多くなりがちで是正が求められる。
 日本経済を成長軌道に乗せるために必要となるのは大都市を分割
して特別区とすることではなく広域行政による行政権の重複解消と
業務の効率化であり、国と地方の行政が抱える不効率解消は今なお
日本政治の未解決の課題である。
 日本国憲法に三権分立は明記されておらず立法権を持つ議員で構
成される内閣が行政権を担い司法権も支配下に置いて日本は省庁縦
割りの交付金・補助金漬け行政が既得権益の巣窟になり資金循環の
効率を悪化させて経済活動の付加価値を減らし、日本経済が低迷す
る原因をつくっている。

 民主制に関する不朽の名著A.トクヴィルの「アメリカの民主政
治」(講談社学術文庫、上)によれば「国民は強力な政治的中央集
権なくしては、生活することはできない」としながら「行政的中央
集権は、これに服従する諸民族を弱め衰えさせる」ことを指摘して
いるが日本の現状はトクヴィルが指摘した通りだ。
 日本経済が東京一極集中になり地方が衰退し日本の国力が低下す
るのは行政的中央集権が機能しているからである。日本の国力低下
を阻止し、国民を強くして日本全国を繁栄させるために行政の中央
集権システムは解体されなければならない。

 日本国憲法は第8章で「地方自治の本旨」という意味不明確な言
葉で自治の組織と運営に関する条文を定めているが、米国から与え
られた英文の憲法草案では地方自治(Local autonomy)が民主主義
の普遍的な原理(The principle )であることを明記している。
 福沢諭吉はA.トクヴィルの著書からヒントを得て「分権論」を
執筆し、政権(ガバメント)と治権(アドミニストレーション)を
区別し、中央政府は政権を執り、地方の人民は治権を執り、互いに
助け合って国家を維持することを提案している。
 法律を定めること、租税を収めること、外国との交際、貨幣を造
って品位名目を定めることなど政権の属するものは一様に全国に適
用するが、地方に居住する人民の幸福を図る道路、橋脚、堤防の営
繕、学校、寺社、遊園の設立を全国一様にする弊害を指摘し、「政
府の手をもって自ら事を行えば結局浪費乱用の弊を免れ難し」と述
べている。

 過去30年間、日本経済が低迷をつづける間にお隣の中国が国民
の可処分所得を驚異的に増やす経済の大発展を成し遂げたのは中国
の中央政府が行政権を大幅に地方政府に委譲して企業を市場経済の
競争原理に晒し、地方政府は経済開放特区でBAT(バイドウ、アリ
ババ、テンセント)などの新興企業に自由な経済活動を許し、個人
情報を活用して行政と産業のデジタル化を推進し生産と消費の破壊
的イノベーションを実現したからである。

 行政的中央集権を解体するには中央省庁の縦割り組織と「都道府
県」が持つ行政組織を解体し、地域ごとに再統合して新たに広域行
政を担う「道州」を設置する構造改革、即ち地域主権の「道州制」
の実現がその具体策になる。地域主権の「道州制」は行政区画をゼ
ロベースで見直す「第二次廃藩置県」であり、明治政府が廃藩置県
で確立した中央集権の組織を見直し、グローバル化する世界経済に
対応する地域産業の自立振興策でもある。

 地域産業を振興するための行政区画は「府」と{県」では狭すぎ
る。人口規模が500〜2000万人になるように日本国内を8〜
12の「道州」に分割して地方政府とし、地域住民への行政サービ
スを担う行政区画は大き過ぎても小さ過ぎても効率が悪く、自治の
単位は人口規模が20〜50万人になるように縮小または拡大する。
 老齢化で崩壊の危機にある人口規模が1万人以下の山村や過疎地
の自治体は隣接する大きな自治体に吸収または合併し、交通の便利
が良く安全な場所に店舗、医院・介護施設などを備えたコンパクト
でバリアフリーのスマート・シティーを築いて居住区とし、都市部
の年金生活者も受け入れて消費需要を拡大する必要がある。

 パンデミックとなった新型コロナウイルスの大流行は国民の価値
観を大きく変えるので平時には不可能であった構造改革を実現する
大チャンスである。
 行政の効率化は経済活動に伴うコストの低減により日本経済の付
加価値を大幅に増やし、日本のGDP(国内総生産)増大に貢献する。
霞が関の省庁縦割り組織と都道府県の行政組織を解体して道州制を
実現し、行政組織のスリム化と行政システムのデジタル化で効率の
良い電子政府と電子自治体を実現できれば長期に亙り低迷してきた
日本経済を再び高度成長の軌道に乗せることができるだろう。

 大阪維新の会は住民投票に負け行き先を失ったと論評されている
が、日本国憲法の不備と行政システムの抜本的な改革をめざす賢明
で信頼できる政策集団に変身し、政府組織の構造改革をめざす実行
力のある政党に協力して既得権益まみれの抵抗勢力を牽制しながら
政権与党となる道が残されている。

「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


生活者通信メルマガ版
(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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