<生活者通信メルマガ版>「メルマガ送付のご希望」 「バックナンバー」 (2)━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成20年4月1日 Vol.65━ 所沢市一般廃棄物処理基本計画案に対するパブリックコメント 生活者主権の会 河登 一郎 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆本稿は所沢市の意見募集に応募したものです。 はじめに: 廃棄物問題に日頃関心を寄せている1市民です。 「所沢市一般廃棄物処理基本計画(案)」に関するパブリックコメ ント募集の機会に、問題意識の一端を提言させて頂きます。 「基本計画」に対する意見の性格上、具体案についてはそれぞれ別 の機会に譲りますが、単なる理念としての抽象論では無責任ですか ら、政策の方向に関しては可能な範囲で具体的に触れました。 1.ごみ減量の目標が低すぎます: (1)「平成18年度実績に比べて11年後の平成29年度には家庭ごみ、 事業系それぞれ5%減を目標にする」という本計画案の目標は、 Reduce(ごみ減量)を最重要目標とした基本方針に照らして低すぎ ます。予想される若干の人口増を加味すれば、ごみ総量の減少は更 に目減りすることになります。 (2)他の自治体の中には、「ゴミゼロ宣言」、「95%減」をはじ めとして、「半減」、「三割減」など、野心的な目標を立てて本気 で取り組んでいる自治体もたくさんあります。 (3)ごみ減量は人類の悲願です。京都議定書での日本の約束を果 たすためには、残り4年で14%もCo2排出を削減せねばならず、日 本が議長国となる来年の洞爺湖サミットでは、2050年の長期目標で はありますが、現状より50%減を安倍元首相がぶち上げました。所 沢市としても11年後の目標としてはせめて30−50%程度の目標を掲 げてはどうでしょうか。今回の市長選に際して市民団体が行った公 開質問に対して、現市長を含む殆どの候補者が、「(目標としては) 30−60%は減らしたい」と回答しておられます。官民が全面的に協 力して本気で取り組めば可能な目標だと思います。 2.若干の具体的方向について: ごみの減量や資源化に関しては、既にいろいろな分野で検討は進 んでいます。市長マニフェストにあったように、早い時期に検討委 員会を設置し、期限を切って具体案を策定すべきです。以下、項目 別に若干補足します。 (1)厨芥ごみも目標を高く: a.重量的には燃えるゴミの半量近く、成分のほとんどである水分を 焼却するために膨大な費用がかかっています。 b.所沢市も生ごみの減量・資源化を重要政策と位置づけ、処理機器 購入費用一部負担や啓発など努力していますが、平成18年度実績で は、家庭系生ゴミのうち堆肥化されたのは79トン=0.3%に過ぎま せん。一部の熱心な市民が細々と実行しているだけで、市の「重要 政策」としての実績からは程遠い実態です。 c.今回の市長選前の公開質問に対して、本件についても殆どの候補 者から30−60%削減を目標にしたい、との回答を得ています。 d.この目標を効果的に実現するためには、縦割り行政を排し、廃棄 物対策課・農政課・コミュニティ推進課・企画政策課・財政課など 横断的な対応が不可欠です。 (2)事業系ごみは料金引上即時実行: ・・・省略・・・ (3)その他プラスチック焼却の是非: 後記4.参照。 3.3R(Reduce/Reuse/Recycle)の重要性: (1)本計画案でも、ごみ処理の基本方針として3Rが正しく指摘 されています。これをさらに下世話な表現に直すと、<1がReduce、 2がReuse、3,4がなくて、5がRecycle>と云うべき程、最初の 2つが圧倒的に重要です。ムリなRecycleは下記4.のように、総合 的に比較すると却って有害なケースが多いことに留意すべきです。 (2)ごみ減量(Reduce)には発生抑制(製品生産段階で長持ち・ 詰替・部品交換などごみが減る商品設計)と排出抑制(消費段階で ごみを出さない努力・工夫)があります。排出抑制は自治体と市民 の努力で実行できますが、生産段階での発生抑制は、法律改正など 国レベルでの改革が不可欠です。所沢市としても、消費者団体・市 民団体などと協力して、EPR(拡大生産者責任)原則に基づく国の 政策変更を強く求めるべきです。 4.「その他プラスチック」焼却の是非: (1)現在「その他プラ」は、不燃ごみとして、一部寄居の県営処 分場に持ち込むほか大半は青森県・山形県など遠距離の処分場に運 ばれています。遠距離輸送に伴って巨額の費用が発生するほかCo2 排出など大きな環境汚染を撒き散らしています。 (2)そのために、市では「その他プラ」の焼却を計画しており、 反対意見との調整が急務になっています。「その他プラ」の処理方 法としては、a.リサイクル、b.不燃ごみとして埋立、c.焼却の3つ がありますが、以下のごとくいずれも問題があり、いわば<地獄の 選択>を迫られています。即ち、 a.「その他プラのリサイクル」は、ペットボトルと異なって(ペッ トボトルや発泡スチロールは汚れが少なく単一素材なのでリサイク ルしやすい)多くの場合汚れがひどく複合素材なので、リサイクル するためには、洗浄・破砕・複数回の運搬・溶融・諸々の加工、と 複雑な工程を経るために、それぞれの工程で石油・電力を大量に消 費し、水質汚濁・粉塵発生などの環境負荷をもたらしますので、総 合評価としては、コスト・資源・環境負荷の面で有害であるケース が多いと思います。 b.「不燃ごみとしての最終処分(埋立:現状)」は、遠距離輸送に 伴う大気汚染や土壌・水質汚染の原因にもなり、高コスト、最終処 分場の逼迫などの問題もあります。 c.「焼却」は、大気汚染が問題です。廃棄物焼却に伴う環境汚染は、 ダイオキシンだけではありません。複合素材の化学物質や金属類の 高熱焼却から発生・合成される排気ガスの中には色々な有害物質が あり、科学的に未知な物質も多いと思われます。そのため環境先進 国では、焼却炉からの排ガスに対する諸々の規制・基準があります が、日本では殆ど規制されていません(重金属類に関しては規制な し)。 上記諸点を考慮して、以下の配慮が不可欠です。 a.「リサイクルのためのリサイクル」は慎重にすべきです。多くの 場合、部分的には<コスト減・資源節約・環境に優しい>と見えて も、総合的な分析(LCA)をすると有害であるケースが多いからで す。 b.「不燃ごみとして最終処分」する場合は遠距離輸送を可能な限り 避け、巨額の輸送費の代わりに、自区内処理のための水質や土壌汚 染防止を徹底すべきです。 ・・・後略・・・ c.「焼却」:上記のリスクを最大限避けるためには、排ガスの性状 を充分にチェックすることが最低限必要です。市民の健康を守るた めには、明文の規定・基準があるなしにかかわらず、少なくとも環 境先進国並みの基準で自己規制すべきです。 5.廃棄物会計による正確なコスト分析が不可欠:・・省略・・ 6.ごみ収集の民間委託は良かったのか: (1)ごみ収集の民間委託は既に数年前から、一部地区について実 施されています。 (2)民間委託は、正しいやり方をすれば、コストダウンとサービ ス向上が同時に実現可能ですが、そのためには公正でオープンな競 争と情報公開が必要条件です。 (3)しかし、現在実施されているごみ収集の民間委託によるコス ト削減効果は検証されていません。部分的に比較すれば行政の人件 費・収集費は削減されたと思いますが(正確には検証されていない) 委託費が増え、苦情処理・事故の場合の行政責任の有無まで総合し て考慮した上で、民間委託が市民・納税者にとって改善だったか改 悪だったかを比較する正確な資料は担当部にもありません。提案し た行政も、承認した市議会も、市民・納税者に対する説明責任を果 たしていません。 (4)市の方針では、今後も民間委託や指定法人制度への移行を積 極的に進めるとのことですが、部分的でなく全体としての費用対効 果を比較した上で、公正さと透明さが保証された仕組みが不可欠で す。 (5)民間への委託の場合の「民間」とは、企業だけでなく、NPO 諸団体も含めて検討すべきです。 7.ごみ収集の有料化;奨励金: (1)ごみの排出抑制の一環として、「有料化」が提案されていま す。有料化は市民に対する負担増の意味で反対論も多いようですが、 「啓発」の効果には事実上限界があるので、経済的な動機づけを与 えることはそれなりに効果があると考えます。但し、以下の諸点へ の配慮が不可欠です。 a.不法投棄:有料化すれば不法投棄をする人は、残念ながら必ず出 てきますので、対策が必要です。監視には自治会や市民団体の協力 が不可欠です。ルール違反者に対しては罰則も検討すべきです。 市民団体の協力に関しては後記8.参照。 b.リバウンド:有料化を実施した自治体では、多くの場合リバウン ド現象(有料化直後はごみが減るけれど、だんだん元に戻る傾向) があると云われています。不断の啓発が必要です。罰則とは逆の経 済的動機付け(買い物袋持参者に値引きなど、一部では実施されて いますが、全市的な運動として定着させるなど)も有効でしょう。 c.「受益者負担原則」:・・・省略・・・ 8.市民と行政との協働について: (1)最近「行政と市民との協働」が色々な場面で主張されますが、 多くの場合、単なる行政人件費削減の方法として提案される傾向が あるようです。 (2)行政コスト軽減はもとより急務ですが、それを善意のボラン ティアの無償奉仕に求めるのは安易に過ぎますし、責任の所在(特 に事故の場合)が不明確になります。善意の労力にも限界がありま す。 (3)行政のやるべき公的機能を市民(団体)に委託する場合には、 必要実費とできれば若干の経済的メリットを考慮し(それでも行政 コストに比べれば格段に安い)、一定の報告義務を課すこと、一定 期間経過後は公平な評価をして委託先を見直すなどの仕組みの併用 が必要です。コストの大幅削減とサービスの向上が同時に実現可能 です。 最後に:パブリックコメントの取り扱いについて: 1.概要版はもう少し詳しく: ・・・省略・・・ 2.フォローアップがきわめて重要です;市民のチエは活かさない と意味がありません: (1)この種のパブリックコメントでは、行政がコメントの論点を 整理して、いくつかのテーマに分類してHPなどで公表されることが 多いですが、それだけでは不十分です。 (2)それだけでは、せっかくの意見が活かされたのか・一部は役 に立ったのか・内容が不充分だったのか・間違っていたのか・無視 されたのか・ガス抜きに使われただけなのか、分りません。 (3)できることなら、意見に対しては(悪意の非難は別として)、 市としてそれぞれに誠意を持って回答し、提言のうち参考になる件 については、市民・行政共同で検討会を作り、建設的な方向へ進め る、など前向きのフォローアップが極めて重要だと考えます。行政 が独自で進める場合に比べれば時間と手間はかかるでしょうが、民 の知恵を生かす・行政と市民との協働とは本来そういうことだと思 います。 (4)「市民委員会」: ・・・省略・・・ 以上 ☆本稿は、長文のため一部省略してあります。 全文は、「生活者通信・2008年3月号」に掲載されています ので、下記のホームページをご覧下さい。「著者・河登一郎氏関連のHP」 http://www.seikatsusha.org/ne/ka/ |
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(マガジンID:0000146184)
ー「創刊号」 2005年01月01日発行/2005年05月01日現在読者数:1342名ー ★「メールマガジン」送付ご希望の方は、 下欄左に「メールアドレス」を記入し「登録」ボタンをクリック下さい。 <メールマガジンの購読は無料です。>
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