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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成20年12月1日  Vol.73━

投機と投資

                      生活者主権の会  松井 孝司

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 高金利で資金を調達していたアイスランド、リーマン・ブラザー
スなど米国の投資会社の破綻で俄かに世界経済の風向きが変わり、
新自由主義の崩壊と投資ブームの終焉が叫ばれるようになった。

 しかし、自由な経済活動と投資を否定したら世界経済の低迷は避
けられないだろう。

 投資家のG・ソロスやジム・ロジャースらは早くから米国のバブ
ル経済に警告を出していたし、弱者から高金利を搾り取るサブプラ
イム・ローンの破綻は、新自由主義を持ち出すまでもなく予測でき
たのに、不動産ローンを証券化した金融商品を正しく評価できなか
ったことが問題であった。ファニーメイのような巨大な政府系住宅
金融機関がなければ、今回の金融危機は無かったという意見もある。

 イラク戦争などにつぎ込んだ政府の膨大な資金が巨大な投機マネ
ーとなって世界を徘徊し危機を拡大したのだ。世界各国のGDP
(国内総生産)をはるかに凌駕するカネ余り社会をつくった「大き
な政府」、通貨の過剰流動性こそ、元凶と見るべきだろう。

 投機による収益は「土地ころがし」と同じで、米国の金融立国に
よる繁栄は投機による信用膨張が生んだ幻想だったのである。理不
尽に膨張した信用は必ず収縮する。投機が急速な信用収縮を促進し、
金融危機をもたらしたのである。GDP(=付加価値の総和)をは
るかに上回る信用の膨張を許してはならないのだ。

 今も投機マネーは無くなってはいない。次の獲物を虎視眈々と狙
っており、愚行の歴史は繰り返されるに違いない。

 投機は金融危機をもたらしただけではなく、投機によるマネーゲ
ームは所得格差を不当に拡大し、同時に投機の敗者の人生を破壊す
る。

 新自由主義や投資行動が悪いのではなく、悪かったのは実体経済
を無視した「投機」である。多くの人の信用で維持される通貨は
「公共財」であるとの認識を全世界が共有し、理不尽な信用膨張や
信用収縮を誘発する「投機」は規制すべきことを教えてくれたのだ。

 経済学者の中には「投機」と「投資」の違いは紙一重であり、実
際に経済活動が行われる現場では投機と投資の区別をつけることは
難しいと考える人がいるが、そうだろうか?

 投機的資金の流れには、「実体経済」とかけ離れた資金循環とい
う明らかな特徴がある。

 モノまたはサービスの供給を伴わない資金の流れ、例えば、短期
間の取引、先物取引やレバレッジによる取引などは容易に区別でき
る。株式のデイ・トレード、空売りはその一例であり、このような
投機的取引を規制することは可能である。

 政府による過剰な規制が、経済発展を阻害することは社会主義国
家で実証済みであり、規制すべき取引と、規制の必要が無い取引を
峻別する必要がある。

 投機を規制できれば、自由な取引を容認する市場経済のシステム
は、社会主義国家が実践し失敗した計画経済、統制経済よりはるか
に優れたシステムであることは間違いない。

 問題は投機を規制する方法であり、規制の対象となる金融機関は
2種類に分ける必要があると思われる。利潤追求を目的とせず、公
的資金の投入を許してよい公有の金融機関と、果敢にリスクを取り、
高配当を期待する私的投資会社への分離である。

 投資は付加価値創造の源泉である。しかし、付加価値の創造は誰
にでもできることではない。投資会社には監視を強化し、レバレッ
ジによる投資、短期の取引や先物取引を規制し、破綻のリスクを軽
減する必要があるのだ。

 一方、公有の金融機関は通貨の流通と信用を維持するための機関
であり、投資のリスクは取らず、法人、個人への融資、送金、決済
などの短期取引を主目的とする。

 実際に破綻の危機にある欧米の銀行は次々に公有化されているし、
日本でも公有のままの金融機関は多い。具体的には投資を目的とし
ない日本銀行や民営化された「ゆうちょ銀行」の株式は永久に売却
せず、国または地方政府が所有し、資金不足に陥ったら政府の責任
で信用創造(貨幣または債券の発行)を許し、健全な融資先の破綻
を防止し、日本がデフレ経済に陥ることを回避する。

 米国では銀行の株式所有は禁止されており、金融危機の震源地と
なったのは投資会社である。日本では多くの銀行が投資会社に近い
業務を行っており、所有する株式の評価損が大きくなり時価会計を
凍結せよとする要望が出ているが、公有の金融機関となる途を選択
し、高金利のジャンクボンドや株式を所有しなければ評価損とは無
縁になる。

 日本銀行のように巨額の融資を行う公有の金融機関は、実質的に
通貨を管理する権限を持つことになるので、知力を備えた有能な経
営者を厳選しなければならない。融資や債権回収で信用膨張や信用
収縮をもたらさないよう、経営者には通貨の本質とグローバル化し
た経済をよく理解し、臨機応変に世界経済の変化に対応できる人材
を選出する必要がある。

 米国だけではなく、すべての政府が肥大化する傾向があり、信用
膨張をもたらしやすいので金融機関の運営は政府から切り離し、民
意が反映されるように「公有民営」の形態とするのが望ましい。

 倒産の心配がなく融資の権限を持つ公有の金融機関は、税収に苦
しむ政府以上の大変な利権を持つことになるので、既得権益の巣窟
になりやすい。経営者の任期は短くし、特定の融資先を優遇したり、
収益を私物化して職員を高給で遇したり、円の独歩高を容認したり、
日本のデフレ経済を長期間放置するような人を公有金融機関の経営
者に選んではいけないのである。

 公有金融機関の経営者には見識と実績を問い、人材を公募すべき
かもしれない。


「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


生活者通信メルマガ版
(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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