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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成23年2月1日  Vol.96━

大統領制型道州制 〜トップリーダーを直接選挙で選ぶ〜

                      生活者主権の会  小俣 一郎

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 1月14日に菅第2次改造内閣が発足したが、これは「問責辞任
がなければ審議拒否」という野党が数を持つ参議院の、数の力に屈
する形で行われた異例の改造であった。

 しかし、与謝野氏が入閣したことにより、自民党は徹底抗戦の継
続を決めた。菅内閣が何とかこらえるのか、それとも総辞職するの
か、あるいは総選挙へと進むのか、政治の混迷は当分続きそうであ
る。

 この日本の政治が安定性を欠く大きな原因として、「首相が直ぐ
に代わる」ということと共に、「第二院である参議院が大きな力を
持っている特異な議院内閣制」という日本の制度的な欠陥を挙げる
ことができる。現在の制度では、一部を除いて、参議院の賛成がな
ければ法案は成立しない。議院内閣制を採用する国で第二院の力が
これほど強い国は他にはない。参議院が直接の引金、あるいは遠因
となって首相が辞任したことも何回もあった。

 日本と同じ議院内閣制の国として英国がよく比較されるが、英国
の上院は貴族院であり、下院の優越が確立され、下院に大きな権限
がある。故に、選挙で勝てば、党首が首相になり、基本5年間の任
期が担保され、約束したマニフェストを5年間をかけて実行すると
いう体制になるわけである。たから、同じ議院内閣制にもかかわら
ず、英国では首相はあまり交代していない。

 この日本政治の制度的な欠陥は、当然戦後ずっと存在していたわ
けであるが、自民党長期政権という大きな流れの中で問題はなんと
か吸収されてきた。2007年からはねじれ国会になったが、当時は例
外的に政権与党が衆議院で3分の2を持っていたので今日ほどの弊
害にはならなかった。それが民主党政権となり、本格的な政権交代
が実現して、にわかに顕在化してきたわけである。しかし、参議院
は憲法に規定されている制度であり、そう簡単には変えることはで
きない。

 ではこれを改善する良い方法はないのだろうか。

 日本を東西2つの大きな地方自治体に分け、それぞれの知事を直
接選挙で選び、4年間をその知事に託す、というのはどうだろうか。

 日本には50ヘルツと60ヘルツという電気の周波数の違いがあ
る。それを境として日本を2つに分け、東は東京州、西は大阪州と
し、そこに国内政治の多くの権限と財源を移してしまうのである。

 47都道府県は廃止し、2つの州にし、日本の政治の運営主体を
国・道州・基礎自治体とする。そしてその役割を改めて見直し、明
確化するのである。いわゆる道州制である。

 道州制を導入すれば、国の役割を大幅に減少させることができる。
そうなれば、相対的に国会の力は弱くなる。「良識の府」のはずが、
政党の数の論理が横行している参議院の暴走も抑えることができる
わけである。これならば憲法を改正しないで行える。

 この東日本、西日本という規模は、他の国と比較しても十分に一
国に値する大きさである。つまり、その州知事を選ぶことは、それ
こそ東日本国・西日本国の大統領を選ぶようなものである。実現す
れば、2人の州知事は首相と肩を並べる日本のトップリーダーとい
うことになる。

 東京州・大阪州は、大きいとはいえ、法律上は地方自治体である。
だから、知事は直接選挙で選ばれることになる。これは画期的なこ
とである。首相に並ぶトップリーダーを国民が直接選ぶことができ
るようになるのである。憲法を変えずに「首相公選制」が実現する
ようなものである。

 いまの政治不信は、首相が国民の選択とは関係ないところでころ
ころと代わり、決定されていることも大きな要因となっている。も
し東京州・大阪州が実現し、自らの投票でその知事を選ぶことがで
きるようになれば、国民の意識も当然変わることになるだろう。

 直接選挙になれば「選んだ者の責任」もより問われることになる。
そうなれば、選ぶ側にもより責任感が出てくるだろうし、「より慎
重に選ぶ」という好ましい現象も付随して起こってくるはずである。

 そして州知事には4年の任期が担保されることになる。州知事は
それを背景に思い切った政策を打つことができるようになり、結果
として、日本の国内政治の大部分が安定的に運営されることになる。

 有能なトップリーダーが選ばれれば、そこには多くの権限が集中
するので、政治決断のスピードも格段に上がり、日本の政治は一気
に好転することになるだろう。

 道州制は、安倍内閣のときに担当の大臣が置かれ、また道州制ビ
ジョン懇談会により十分に議論されている。政権交代のために最終
答申まではいかなかったが、内容的には既にまとまった体系ができ
上がっており、その気になればいつでもその方向に進める。

 道州制ビジョン懇談会で示された道州制の理念は、「時代に適応
した『新しい国のかたち』をつくる〜中央集権型国家から分権型国
家へ〜」であり、具体的には「国・道州・基礎自治体の役割の見直
し」「国の役割を限定し、地域に主権」「国家組織の再編」などが
掲げられた。ただ、「地域間格差をどうするか」「大都市をどのよ
うに扱うか」等の問題も残っている。

 しかし、日本を2つに分けるのであれば、東京州は首都圏、大阪
州は関西圏・中京圏という地域を含むので、道州制に移行すること
による道州間格差というものは起こらない。もちろん道州内格差は
当然残るが、それはいまの日本国全体としても同じであり、道州内
で調整すればよいことである。そして、少なくとも東京一極集中は、
東西の二極になり、分権は前進する。

 また、このように東西の大きな州にしてしまえば、東京特別州を
作るかどうかといった大都市をどうするかという問題も基本的には
解消できる。現在も首長・議員を選挙で選んでいる東京23区をそ
れぞれ基礎自治体としてしまえば、基礎自治体にでこぼこはあるが、
制度的にはその役割を特定することができる。

 道州制を導入すれば、国の役割は、外交とか、国家戦略とか、国
家的基礎部分の決定、統一すべき基準の制定等に限定されることに
なる。当然、国会や首相に求められる資質も変わってくるだろう。

 いまは中央集権で、多くの権限と財源を国が持っているので、国
会が迷走するとそれが直接地方にも波及してしまう。しかし、東京
州・大阪州が存在すれば、それとは別次元で、主体的に動くことが
できるのである。

 そして国の権限が少なくなり、そこで議論される問題が限定され
ることになれば、国会議員を選ぶ基準もより鮮明になり、国全体の
政治も安定することになるだろう。

 中国・北朝鮮の一党独裁体制はもちろん、米国もロシアも韓国も
大統領制で、その任期は安定している。日本の周りはみんな長期政
権なのである。国・東京州・大阪州の三極になれば、日本の政治も
やっと長期政権の仲間入りができることになる。

 東日本、西日本という大きさは、当然、他の国との経済競争にも
十二分に耐えうる大きさであり、また、西と東に分かれることによ
り、東西日本が「善政競争」を行うことにもなる。

 通常の一国に十分に値する東西日本の州知事を選ぶことは、それ
こそ大統領を選ぶことに擬することができるだろう。 そのような
『大統領制型道州制』とでも言うべき制度に、大胆に日本の政治を
変えることが、いま必要なのではないだろうか。

「著者・小俣一郎氏関連のHP」
http://www.seikatsusha.org/ne/omata/


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(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
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