<生活者通信メルマガ版>「メルマガ送付のご希望」 「バックナンバー」 (2)━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成23年7月1日 Vol.99━ 未来志向のエネルギー戦略を! 生活者主権の会 松井 孝司 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 福島第一原発の爆発事故は、原発に対する国民の意識を大きく変 えてしまった。 日本だけではなく日本から遠く離れたドイツやスイスの国民の意 識まで変えドイツとスイスは国策として「脱原発」を決めた。影響 はイタリアにも及び国民投票で原発を拒否したが原発で発電した電 力をフランスから購入することを容認していては自己矛盾だ。 日本でも日本製原発システムの安全性を信じて海外への輸出を推 進しようとしていた人達まで「脱原発」を口にするようになった。 「脱原発」は次期総選挙の争点になりそうだが「羹に懲りて鱠を吹 く」のは無知な人間のすることである。 爆発の原因を徹底的に究明し、今後の事故に備えた対策を講ずる ことこそ賢明な人間がとるべき道だろう。核エネルギーの本質を正 しく理解せず一時的な恐怖心に駈られて対処すると日本経済の未来 に取り返すことができない損害をもたらすことになる。 「失敗は成功のもと」であり、失敗を授業料と考えて無駄にせず 生かす智恵があれば「災いを転じて福とする」ことができるのだ。 地震と津波の被害を受けながら福島第二原発が大事故とならなか った事実は重要である。 大事故にならなかったのは震災直後に炉心冷却用の電源を確保し 3月15日には冷温停止を実現できたからである。早急に日本国内の すべての原発について大地震、大津波が襲来しても電源が遮断され ないよう対策を講ずる必要がある。 爆発の原因は原子炉で高温となったジルコニウムと水が反応して 発生した水素によることが明かにされている。水素が発生し爆発の 危険があるシステムの安全性の保証は難しい。爆発で大気中に放射 性物質が飛散したら遮蔽は難しく、放射性物質が遠くまで飛ぶので 被害が拡大しやすいことも容易に想定できたが、これが現実となっ てしまった。 核燃料のメルトダウンより放射性物質の拡散が被害を拡大した事 実を重視すべきだ。 排気筒(ベント管)を持つ原発は何を意味するのか? 今から振りかえれば沸騰水型軽水炉原発システムの設計思想に問 題があった。 原発の多くが電力の消費地から遠く離れた場所に設置されている ため送電ロスも無視できない。一か所に巨大な原発システムを集積 させ地元自治体に交付金などの支出を強いられる上に自治体の承認 がないと稼働できずコスト高となることも問題だ。 原発のもう一つの問題点は使用済み核燃料の廃棄処理を難しくし ていることである。 テロ集団の武器となる核燃料の拡散防止も重要課題であり、ウラ ンを核燃料にする現行の原発システムには問題が多すぎる。 現行の巨大な軽水炉原発は事故を起こしたら採算がとれない欠陥 システムであり、地震大国の日本での増設は取りやめた方が賢明だ ろう。 しかし「脱原発」の声に応えて、すべての原発システムの研究開 発と新設まで中止するのは早計である。 新興国の経済成長に伴うエネルギー需要の増大で化石燃料の価格 高騰が危惧されるし、ほぼ無尽蔵の核エネルギーが人類の未来を託 すエネルギー源であることに変わりはないからだ。 検討に値すると思われる原発の一例は古川和男氏が提唱するトリ ウム溶融塩炉原発である。トリウム溶融塩炉は「腐食に問題あり」 として不当に弾劾排除されてきたそうであるが、核兵器の原料とな るプルトニウムの生産を優先するためではなかったのか? 核兵器の開発を諦めたドイツ、イタリア、スイスの「脱原発」と 核兵器を保有する米国、イギリス、フランス政府の「原発推進」が 対峙していることが象徴的だ。 古川氏が指摘される通り原子炉は「化学プラント」であり、炉心 は制御が容易な液体核燃料の使用を前提に設計すべきであった。 チェルノブイリ原発の事例のように爆発破損した原子炉を石棺に して放射性物質を閉じ込めるなどという処理方法は国土の一部を永 久に廃墟とすることを意味する。国土再生には六ヶ所村の再処理工 場で実施されているようにメルトダウンした核燃料を化学的に処理 する以外に方法は無いだろう。 古川氏によれば「トリウム溶融塩核エネルギー協働システム」を 採用すればプルトニウムを含む放射性廃棄物もエネルギー源として 燃焼消滅させることができるという。放射能汚染で立ち入り禁止と なり廃墟となる可能性が高い福島第一原発でトリウム溶融塩協働シ ステムの安全性を試してみてはどうだろう。 都市近郊での分散発電の試行を兼ね溶融塩原子炉は地下深くに設 置して発生する熱も利用するコージェネ・システムとし、効率より 安全性を優先させて事故が発生しても対処しやすい小型の発電シス テムとすることが望ましいと思う。 福島第一原発の跡地を六ヶ所村に次ぐ核廃棄物の貯蔵所とすると 同時に、化学処理で放射性核廃棄物を再利用することができれば、 核廃棄物を蓄える原発跡地が高付加価値のエネルギー貯蔵庫となっ て蘇るかもしれない。日本の軽水炉で排出される使用済燃料からプ ルトニウムを分離すれば核燃料は100年分が備蓄されていること になる。 放射線の本体はエネルギーであり、太陽光も放射線である。風力 などの自然エネルギーも、元を糾せば太陽から出る核エネルギーが 変換されたものである。自然界は放射線に充ち溢れており、言葉を 変えれば自然界は核エネルギーの宝庫なのだ。 原子炉から出る放射線が有害なのはエネルギーが強過ぎるからで あり、太陽光の危険性が少ないのは放射エネルギーが弱いからであ る。 太陽光発電が代替エネルギーとして注目されているが、太陽の放 射線の多くはオゾン層などで遮蔽されるため地上に到達する単位面 積当たりのエネルギー量が少なく発電効率は悪い。補助金を付けた り発生する僅かな電気を高額で買い取らなければ発電パネルが普及 しないようではパネル製造の付加価値も少なく、メガソーラーと称 して大規模発電用パネルで休耕地を覆うのも貴重な土地の付加価値 を高めることにはならないのである。 降雨の少ない砂漠のような不毛の土地、または大気圏外での太陽 光発電なら採算が合うだろうが、日本のように太陽と水に恵まれる 国土では太陽光発電より、同じ土地で有用な植物を育てた方がはる かに付加価値は大きい。 太陽光発電はエネルギーの一部を電気に変えるだけだが、植物は 光合成で太陽光エネルギーを無駄なく取り込み、衣食住の素材とな るだけでなく、炭酸ガスを吸収して酸素を供給しバイオマスとして 熱源、発電用の再生可能のエネルギー源にもなるからだ。石油が枯 渇したとき代替となるのは植物である。 農林業を自然エネルギー利用の未来志向の戦略産業に位置付け育 成強化すべきだが、農林業の付加価値を帳消しにし、農林業を衰退 させているのは円高である。杉の古木が伐採されず花粉を飛ばしつ づけ花粉症患者を増やしているのは、林業が円高のため購入価格が 安くなった輸入材に対抗できなくなったからだ。 円安誘導は農林業だけではなく日本経済の再生にとって不可欠の 重要戦略であり、円高を許容し農産物や化石燃料が安く輸入できる と喜ぶのは近視眼的で戦略不在と言わざるを得ない。 円高は米ドルの価値が目減りした結果であり1985年のプラザ合意 後、日本は円高による産業の空洞化を招いて経済を低迷させただけ ではなく、ドルベースで海外に貸し付けた円と購入した米国債の価 値を大きく減らし巨額の損失を被っている。 一方世界最大の米国債保有国となった中国は日本の失敗の歴史に 学んだ国家戦略により極めて小幅な元高調整を世界に容認させてい る。 失敗を繰り返さないためには失敗の歴史に学び未来の戦略を立て なければならない。 有史以来、人類は放射線によるDNA損傷を修復しながら進化し、 突然変異で多様化された生物群と共存してきた歴史的事実と生物の 自然への適応現象にも学ぶ必要がある。 日本国内の多くの医学、薬学系大学で行われた動物実験では、低 線量の放射線照射は骨密度の減少を抑制し、癌抑制遺伝子p53を 活性化して癌の転移を抑制し、ラジカル消去酵素SODを増やして 過酸化脂質を減らし老化を抑制するなどホルミシスと呼ばれる効果 が確認されている。 ホルミシス効果を頑強に否定する人も存在するが偏見を持つこと なく放射線の核種と線量を変え詳細に検証する必要があるのではな いか? ホルミシス様効果はワクチンなどの弱毒にも見られる普遍的現象 であり医薬品の多くが少量の「毒」を使い方によって「薬」に変え ているといっても過言ではない。使い方を間違えると「薬」も「毒」 になる。 仏教で説く「変毒為薬(毒を変じて薬となす)」の箴言は「毒」 の本質を知り尽くした知力が可能にするのであって、欠かすことが できないのは「毒」に対する正しい知識である。 有害な放射線の遮蔽、制御技術を確立し、徒に放射線を恐れるこ となく核エネルギーの本質を正しく理解して有効利用を推進し、低 炭素産業革命を実現することこそ未来志向のエネルギー戦略だ。「著者・松井孝司氏関連のHP」 「市民が創る日本再生のシナリオ」 http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/ 「21世紀のライフスタイルを考える会」 http://www.jstyle21.net/ http://www.seikatsusha.org/ne/ma/ |
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(マガジンID:0000146184) −「創刊号」 2005年01月01日発行− ≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫ ★「メールマガジン」送付ご希望の方は、 下欄左に「メールアドレス」を記入し「登録」ボタンをクリック下さい。 <メールマガジンの購読は無料です。>
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