改革市民ネットの会・はるた/ご意見(1).......... 作成:2001年05月26日/治田桂四郎


事実上首相公選となる議院内閣制選挙制度案

松尾 匡 [matsuo@cec.mii.kurume-u.ac.jp]

 福岡県久留米市在住の松尾匡ともうします。次のような選挙制度案を考案しましたのでご検討いただければ幸いです。

【目的】
 次の四条件をすべて満たす選挙制度を示す。
◆ 事実上の首相公選となること。
◆ 議院内閣制の原則は守ること。
◆ 死票が少なく、少数党が排除されないこと。
◆ 二、三の安定した勢力の間での政策の選択ができること。
【骨子】
(1) 「二段階投票制」
 名簿搭載資格者を選ぶ選挙と名簿を選ぶ比例代表選挙の二段階とする。

(2) 「名簿搭載資格者の選挙」
 一段回目は、個人候補に投票して名簿搭載資格者を選ぶ。定数は衆議院定数の二倍とする。少数党でも選ばれる可能な限り死票の少ない制度で選ぶ。

(3) 「名簿の結成」
 名簿搭載資格者の選挙後、当選した名簿搭載資格者からなる名簿を結成し、二段階目の比例代表選挙での選択肢とする。この際、立候補登録される名簿は、いずれも衆議院議員定数の過半数の名簿搭載資格者をそろえなければならない。すなわち、各政党は単独では名簿を組むことが困難なので、政党の連合を組んで名簿を結成することになる。

(4) 「比例代表選挙」
 二段階目の選挙は結成された名簿に対して投票し、ドンド式比例代表の方式で議席を配分する。投票に際しては、名簿筆頭者の名前を記名することで名簿を選択する。すなわち、名簿筆頭者は事実上の首相候補で、連立政権の組み合わせどうしを選択することになる。

【補足説明】
(2-a) 「名簿搭載資格者選挙の選挙区と定数配分」
 各都道府県を選挙区とする。各都道府県の有権者人口を票に見立てて、衆議院定数の二倍の定数を、ドント式比例代表制の方式で各都道府県に割り振る。その際、定数が3未満となる都道府県が出たら、隣接する都道府県と選挙区を合わせる。

(2-b) 「名簿搭載資格者選挙の投票方法」
 単記投票とする。

(3-a) 「名簿搭載順位の決定方法」
 ひとつの名簿を結成することにした政党連合の名簿搭載資格者各自が、その名簿のメンバーに対して互いに順位をつけて記名投票する(必ずしも全員に順位をつけなくてもよい)。その一位記載者の票を集計し、最多得票者が名簿筆頭者になる。次に、一位にその名簿筆頭者を記載した票は、二位の記載者に対する2分の1票として読むこととし、その他の票は一位の記載者に対する一票と読み、集計して最多得票者を名簿の二位搭載者とする。以下同様にしていく。すなわち、第n位搭載者までが決まっているとき、各ひとつの票に記載されている上位から、すでに第n位までの名簿搭載者に決まっている者を除いた最初の者が第k位に記載されているとすると、その票を、その者に対するk分の1票として読み、集計して、最多得票者を第n+1位の名簿搭載者とする。
 この方式は、もし連合内各個別政党がすべて完全に党議拘束して、自己の政党メンバーだけに統一順位をつけて投票した場合、結果として当選者の各個別政党への議席配分は、名簿搭載資格者数に応じたドント式比例代表方式と同じになる。ただし、単純に名簿搭載資格者数に応じたドント式をとると、無所属やミニ政党の名簿搭載資格者は、搭載順位が必ず最下位近辺になってしまうのに対して、この方式の場合は、傾向が似た政党のメンバーに比較的高い順位をつけて投票してもらえる可能性があるので、無所属やミニ政党の者でも搭載順位が必ずしも不利にならない。
 なお、当人どうしが合意すれば順位をいれかえてもよい。また、その名簿の名簿搭載資格者全員が合意した順位が作れたならば、投票は省略してその順位を適用する。現実にはほとんどの場合そうなるだろう。おそらく名簿の上位には閣僚候補が具体的な閣僚名まで公表して並ぶだろう。(しかし合意が成立しない場合に備える必要があるから、一応投票で決まるシステムを定めておく必要があるのである。)

(3-a')「上項への補足」
 上項の投票の際、各自の持ち票数を、自分が選出された時の得票数ないし得票率に比例させるのもよい。

【修正】
 以上のシステムはこのままでは現実には重大な欠陥がある。現実には、自由党や公明党は自民党にも民主党にもつくことができるのに、共産党はそれができないし、社民党もかなり困難である。したがって、両タイプの間には同じ規模の党でも交渉力に大きな違いがでてきてしまう。世論の動向とは無関係なそのような要因で政治の枠組みが大きく左右されることは望ましくない。
 それゆえ、(3)の条件を緩和し、必ずしも議員定数の過半数の名簿搭載資格者をそろえなくても、名簿が認められるような場合も考えなければならない。しかし、現実に冷戦後の世界中でよく見られるような、政策とは無関係な、特定の地域的、アイデンティティー的問題に特化した政党が分立する事態は、避けなければならない。そこで次のような条件をつけたらどうか。

(3-b) 名簿搭載者が次のすべての条件を満たしている名簿は、搭載者が議員定数の過半数に満たなくても、立候補を認められる。
1. 47都道府県すべて(すべての選挙区)から選出された者をそろえること。
2. 両性の比が2倍を超えないこと。
3. 選挙に際して被差別部落出身者であることを公表した者を含むこと。
4. 選挙に際して日本民族以外のエスニシティーを公表した者を含むこと。
 「議員定数の過半数」という条件はやめて、この条件だけにしてもいいかもしれない。

【検討課題】
 選挙後の名簿連合からの除名・脱退をどう扱うか。さしあたり、次の二案が考えられる。

(A) 当選が確定した以上は、議員の身分は保証される。鞍替えした個人や政党は、次の選挙で審判を受ければ良い。これが筋論であろう。ただしこの場合、除名や鞍替えによって政権の枠組みが変わった時には、早急に解散することが道徳的義務となろう。

(B) 名簿連合から除名・脱退したら、該当議員は失格し、名簿から当選者が繰り上がる。この場合誰が除名を決定するのかが重要になる。さしあたり名簿筆頭者が判断するという方法が考えられる。この場合選挙民の意思と無関係な鞍替えは防げ、政治の枠組みは安定するが、名簿筆頭者の権限が強くなりすぎる懸念がある。

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