「公開討論会シンポジウム」を終えて地球市民会議リンカーン・フォーラム事務局長 内田 豊(uchiday@ann.hi-ho.ne.jp)おかげさまでシンポジウムは立ち見が出る ほどの入場者が訪れ、大盛況のうちに幕を引くことができました。「筑紫哲也News23」の拡大版多事争論 でも特集され、入場できなかった方にもその片鱗をお知らせする機械を持てました。今回はこの シンポジウムの反省点を市民運動の観点から振りかえってみます。 ■立ち見が出るほどの盛況 会場が立ち見が出るほどの満席になったことに大変感謝しています。政治における公開討論会に期待 している方が平日の夕方にこれほど多く集まったという事実は、主賓のパネリストにも、取材した マスコミ関係者にも大きなインパクトを与えたことでしょう。次の衆議院選で 300の全選挙区で 公開討論会開催をめざしている私たちリンカーン・フォーラム・ネットワークにとって、これは非常に 良い結果であったと言えます。 ■多数の著名人が賛同者に 今回のシンポジウムには各界の著名人に気持ち良く賛同していただきました。幅広い立場の方から 賛同いただくことは市民運動が広がりを見せる過程において、大切なステップだと思います。 ■満足度も上々 閉会後に寄せられた数多くの声やお手紙を拝見すると、全体的に大変満足していただけたようです。 講演者、パネラー、コーディネーター、司会、それらを支える裏舞台スタッフのすべての努力が調和した からだと言えましょう。 ■各党代表者も公開討論会参加に積極的 これまでの公開討論会には、なかなか現職に出席していただけないという関門がありました。 ここ数年、現職と新人の差があまり大きくない場合は、欠席回答した現職に対してマスコミが大々的に 批判記事を書き、そのせいか現職が落選するという例も多いです。しかし当選絶対確実と見られている 現職が欠席の場合は、通例マスコミの扱いは小さくなり、入場者も極端に少なくなります。 「現職欠席では出席しても意味がない」と新人候補までが相次いで欠席し、公開討論会そのものが開催 できなかったケースも数多くありました。リンカーン・フォーラム方式の公開討論会は決して現職が 不利になることのないように中立公平な運営を行う(事実、今回のシン ポジウムでも公平な発言機会の中で最も発言したのは与党の深谷自民党総務会長ではなかったでしょうか) ことを再三ご説明しても、色々な理由をつけて欠席されてしまうのが現状でした。 しかし今回のシンポジウムでは自民党総務会長、民主党代表、共産党書記局長という政党代表者が 一様に公開討論会に前向きな姿勢を示し、「積極的に公開討論会に参加するように(党内に)要請する」 という約束をしていただけました。これは今後公開討論会を開催しようとしている全国の仲間にとって 大変な励みになったと思います。 ■公開討論会のスクリーニング 深谷自民党総務会長から、「現職の”大物”政治家は、選挙期間中は他人の応援ばかりで自分の選挙区 にはほとんどいられない。数少ない時間を割いて公開討論会に出席するのは困難な場合が多い」 という説明がありました。これは国政選挙での公開討 論会経験が少ない私たちにとって見落としがちな点であり、私たちも候補者のスケジュールにおおいに 配慮しなければならないと思います。それと同時に「(数多くの公開討論会のなかから)地球市民会議 (リンカーン・フォーラム)の公開討論会なら出席しても良い」という深谷氏の発言に恥じぬよう、 私たち主催者側にも候補者に選んでいただける公開討論会を提供しなければならないと、 身が引き締まる思いです。 ■動員の難しさ 今回は幸いにも、 600席の会場が満席になりました。傍目には実に動員がうまくいったように映りますが、 実態はそんなに生易しいものではありませんでした。 シンポジウム当日が週末で、月末でもあり、チケット代金も高額ではないので、前売券を購入しても 当日欠席する方が多いのではないかと、私たちは予想しました。実は私たちは「前売券購入者のうち、 当日来場するのは7割」という経験則を持ってい ます。つまり会場が 600席だからといって 600枚しか前売しなければ、そのうちの 400人程度しか来場 せず、約1000枚の前売券を販売してなんとか満席になるという計算です。無謀な計算と思われる方が多い かもしれませんが、 "7割の法則" は、身近な点では、同窓会の幹事をする場合の鉄則であるとも言 われています。事実、今回のシンポジウムでは実行委員各位の創意工夫と大変な努力で1400枚もの前売券 を出しました。うち半分は「当日払い」だったので、実際に前売金として入金されたのは 700人分程度 でしたが、それだけでも十分に会場定員を上回っています。しかし、「当日払い」券や「当日券」 の方も多数いたことを考慮すると、 "7割の法則" は健在であり、いかに動員が難しいかを私は噛みしめ ました。 ■ボランティアのコントロール 市民運動はボランティアによって成り立っています。ボランティアによる活動は強さと脆さの両面を 兼ね備えています。かつて選挙管理委員会が実施した「立会演説会」が失敗したのに、市民主催の 「公開討論会」がうまくいっているのは、ボランティアの強い面が発揮されているのが一因でしょう。 しかし、ボランティアは組織としての脆さがあり、指示命令系統に関しては相当配慮してコントロール しないと組織が維持できなくなってしまうことがあります。今回のシンポジウムでも多くのボランティア に参加していただきましたが、彼らの目的意識や参加動機は多種多様です。ボランティアを命令で動かす ことはできません。ボランティアは高い目的意識で動くのです。 一方、市民主催の公開討論会は公共的で、かつイベント性も高い必要があるため、ボランティアの 運営でも高い品質が求められます。実際は「手作り」が多いのに、プロが運営しているように見せる、 ここが難しいところです。 私は今回のシンポジウムを通じて、目的意識の共有、モチベーションの維持、人間関係の重視などの 大切なことを数多く学びました。 ■まとめ 公開討論会は、全国に大きな広がりを見せてきたとはいえ、300 の全小選挙区で一斉開催すると いうことは、リンカーン・フォーラムのこれまで全ての公開討論会開催回数の2倍以上にあたるという、 膨大な計画です。シンポジウムを成功裡に終えるこ とができたのは、公開討論会に期待する多くの方の思いが結実したものであり、 全選挙区公開討論会実現に向けての大きな飛躍点になったと思います。選挙のときにはいつでも 公開討論会が開かれることが当たり前になる日もそう遠くはないでしょう。その日が一日も早く来ること を願って止みません。あなたも、あなたの街で公開討論会を開催してみませんか! ■追記 リンカーン・フォーラムではシンポジウムの内容を完全収録したビデオを発売予定です。 公開討論会開催を目指す方にとって貴重なメッセージが数多く含まれている本ビデオにどうぞ ご期待ください。 |