生活者主権の会生活者通信2000年05月号/05頁..........作成:2000年05月18日/杉原健児

台湾の総統選挙の結果について

豊島区 吉井正信

 2000年3月18日中華民国(台湾)で第2回目の直接選挙による総統選挙が行われ、最大野党の 民主進歩党の陳水扁候補が39.3%の得票率で新総統に選ばれました。与党国民党の連戦候補は無所属 の宋楚瑜候補にも大差をつけられ、290万票の最下位に終わりました。宋候補はわずか30万票差の 460万票の次点でした。この結果を私なりに分析して見ました。
 現在台湾の総人口は約2200万人で、有権者数は約1600万人です。人口構成は、原住民 (阿美族等のいわゆるインディアン)は数十万人の少数民族と絶対多数の漢民族にて構成されています。 また、漢民族は大きくみて二つに分かれています。
 9割の人達は約200年前の清朝の時代に福建省を中心に大陸から渡ってきた漢人を祖先に持つ本省人 (台湾省人)と1945年日本敗戦により台湾統治のため蒋介石の国民党により派遣された軍人及び 1949年国民党と毛沢東の共産党の内戦に敗れた蒋介石本体の軍人とその家族の外省人で構成されていま す。 しかし、この外省人も51年を経て2世3世の台湾人化が進む一方、蒋介石をはじめ多数の一世が 死亡等により大幅に減少しています。現在この2世3世を含めた外省人は約一割の200万人です。
 今回総統選に出馬した3候補を、これに当てはめると、陳、連両氏は本省人で宋氏は外省人となります。 では何故外省人の宋氏が460万票も獲得できたのか?
 一つには彼は李登輝総統の与党国民党の幹部で、台湾省長(台湾省知事)時代の行政手腕に本省人や 外省人を問わず多くの支持者を得ていたためでしょう。しかし私は最大の要因は経済問題だと思います。 蒋介石政権時代のように裕福ではなく、また軍事政権の圧迫の直後にこのような自由選挙が行われたら 宋候補の得票は200万票を上回ることは絶対になかったでしょう。だが現在の台湾は世界第3位の 外貨保有高を有し、非常に裕福でバブルではじけた株価も最高値の80%以上までに回復しています。
 こうなると人間は保守的になります。まして現在の台湾の製造業(コンピューター関係も含めて)は 中国大陸の労働力に大きく依存しています。そして選挙前の江沢民中国国家主席の脅迫とも云える陳候補 への非難発言を聞けば、台湾独立を党綱領にもつ民進党よりも現状維持で中国との会話を重視する宋候補 へ多数の票が流れたものと推測します。
 少数与党となりました陳次期総統は国民党の唐現国防部長(国防大臣)を行政院長(首相)に任命 しました。李登輝総統の協力も約束されているので、政権交代による大きな混乱はないでしょう。 台湾人の政党のもと台湾人の総統による台湾統治がはじめて行われます。期待とともに中国の干渉が ないことを祈ってやみません。

情報化時代の政治 (2)

田無市(松下政経塾フェロー第17期生)関口博喜

【市民意識覚醒のための「情報公開」】

 日本で一番最初に情報公開条例が制定されたのは、1982年(昭和57年)3月、山形県金山町において である。同年10月には神奈川県でも制定され、以後、地方自治体の情報公開制度制定率は年々向上し、 増加している。1998年4月1日時点で、全国の都道府県と市町村の17.6%にあたる 580団体が、 情報公開条例等(要綱等を含む)を制定している。地方自治体がこのように情報公開制度を導入して いった背景には、60年代、70年代に顕在化した公害・環境問題、消費者問題がある。
 しかし、時代の移り変わりとともに「情報公開」という言葉の意味も変わってきた。もともと自治体は、 今日のように「情報公開」とうるさく言われ始める前から、広報誌や行政資料を発行し、窓口での応対 などで情報提供を行ってきた。しかし、最近言われている「情報公開」という言葉には、自治体レベルの 食料費の不正支出、カラ出張、官官接待といった事件に端を発した、住民が行政を監視すること、 そして自分の意見を行政に反映させることを目的とした、住民意識の覚醒といった意味が大きくなって きている。
 行政側が提供する情報は、ややもすると住民側が求める情報とは異なる。情報公開制度は、そうした 住民と行政の齟齬をなくすために、住民が行政へ情報開示を要求する権利を認めると同時に、行政に対し 情報開示することを義務づける制度である。より公正な行政を実施していくこと、そして、住民参加に よる行政を実現していくこと、住民と行政の信頼関係を強化していくことがその目的とされている。 しかし、そうは言っても何でも公開すればいいのかというと、そんなことはない。個人のプライバシー が侵害されたり、法人や個人事業者が不当に不利益を被ったりすることのないように十分配慮しなければ ならない。
 また、どういった情報が公開されるべきかといった問題同様、どの機関の情報を公開すればいいのか という議論も忘れてはならない。つまり、行政の情報だけでなく、議会の情報はどうするのかということ である。議会を対象実施機関としているのは、三重県のほか、山形県、神奈川県、福岡県がある。しかし、 地方自治体、議会は、情報公開法の制定が見込まれている国会、政府レベルと権力構造が違うので、 行政機関が定める情報公開制度の対象として議会まで含めることに問題がないわけではない。 この点についても十分な検討が必要だが、宮城、秋田、奈良の三県は、議会自ら情報公開制度を採用して いる。 (つづく)

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