生活者主権の会生活者通信2000年08月号/09頁..........作成:2000年08月05日/杉原健児


情報化時代の政治 (4)

田無市 関口博喜(sekiguchi@mskj.or.jp)

【未来社会へのパスポート「情報公開法」 】

 何はともあれ日本では、今国会での情報公開法の制定が急務である。昨年9月に野党各党の共同修正案 がまとめられたが、通常国会に続き、臨時国会でも政府、自民党案との折衝が当初、難航していた。 しかし、制定が長引くことで生じる不利益に対する懸念から、与野党間で今国会で成立させる道程は 合意されている。情報公開法の制定には、特に野党側の強い意気込みを感じる。その背景にあるのは、 官僚が関係した背任、汚職が後を絶たないのは、裁量的な行政と情報の秘匿が大きな原因だとする 考えである。実際、厚生省の薬害エイズ問題、特別養護老人ホームの認可問題、防衛庁の防衛装備品を めぐる問題など、官僚の汚職事件は枚挙にいとまがない。
 野党は、核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)、水資源開発公団、国民生活 センターなどの特殊法人もその対象にすべきだと訴えているが当然である。独立した組織である特殊法人 に対し、情報公開を強制することは法理論的には厳しいものがあるが、政府出資や補助金などの税金が 使われていることからも、国民生活の安全からも公開されてしかるべきである。
 その他、情報公開請求にあたっての手数料、訴訟の統括などの問題がある。
 しかし、最大の争点となるのは、いわゆる「知る権利」である。政府案は「憲法上の定説がない」と いう理由から明記しない方針であるが、野党側は明記すべきだと対立している。「知る権利」を明記する かどうかで何が変ってくるかといえば、情報の非開示措置の適用範囲がこれによって左右される。 知る権利を明記すれば、公開に対する適用除外の対象となる非開示措置を最小限にとどめることができる。 つまりこの文言のあるなしが、情報公開制度の適用範囲とそのレベルを決定する。98年12月時 点で、情報公開条例を制定している47都道府県のうち、「知る権利」という表現を使っているのは 北海道、大阪府、京都府、高知県、沖縄県の5団体だけという状態である。
 国会での情報公開法の制定、施行に、どれほどの時間が要されるかわからないが、この公開法が 地方自治体の条例制定、改正に与える影響は大きい。地方自治体が情報公開制度について国に先行して いるのは事実だが、都道府県、そして、市、町、村の順に制定率は低くなっている。地方分権を求める声 の高まりから、今後、基礎自治体での情報公開制度の充実が求められてくるだろうが、同法の制定は 必然的にその指針になってくるだろう。現に、公開法の制定の動きに合わせて条例を見直した自治体 もある。
 以上、情報公開法の制定にあたっての論点を列記したが、情報公開法・条例の制定を含む情報公開制度 の整備・充実が、これからの民主主義のあり方、そして新たに迎える社会のあり方を決定することは 間違いない。
《参考文献》
 右崎正博、田島泰彦、三宅弘−編『情報公開法』三省堂
 矢崎善朗『地方自治体の情報公開制度』地方自治NO.610 平成10年9月号
 岡部一明『インターネット市民革命』御茶の水書房
【プロフィール】せきぐちひろき
 1970年東京生まれ。早稲田大学卒業。
 1996年松下政経塾入塾。97〜98年にかけて韓国に滞在し、金大中大統領の新政治国民会議で研修。  「未来志向」の日韓関係について研究・実践している。その他、これから30年の政治システムを考える ために行政改革、財政改革についても研究中。 (完)

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