生活者主権の会生活者通信2000年10月号/06頁..........作成:2000年10月25日/杉原健児


北方領土はいらない (7)

練馬区 板橋光紀

【理由その (5)-2】

ロシアが北朝鮮のみに土地を提供し、同じ朝鮮族 である韓国へ何もしないのは一見不公平に見えるが、 南北はいずれ将来統一される方向である筈だ。東西 ドイツの例もあることだし、統一された場合の韓国 側の金銭的なダメージは大きいと思われる。北朝鮮 がロシアから土地の提供を受けることによって、少 なくとも食糧問題だけでも緩和されていれば、統一 が成った時の韓国の負担は軽減されるはずで、韓国 にとってもこの提案に異存はあるまい。 ついでに北方四島からオホーツク海、カムチャッ カ半島近海に到るまでをを「漁業特区」としたらど うだろう。沖縄や南シナ海と違って北の海の魚はう まい。近隣諸国に語らって共同で資源保護に努め、 多くの養殖産業を興す。投資額や貢献度に応じて取 り分を決めたらよい。日本の養殖技術でロシア人労 働者が作業にあたればきっとおいしい魚が安く手に 入るだろう。日本も同様であろうが、ロシアや北朝 鮮など個々の国々が自国のおかれた環境や制約の中 だけで物事を考え、困難を打開しようと試みても解 決は難しい。しかし各々の国が少しづつ譲歩するだ けでブレイクスルーできる事柄は多い。 「グローバル・スーパー・プロジェクト」と呼ぶ 国際的なODA計画がある。日本でも大来佐武朗元 外務大臣を委員長として内外政策研究会を発足させ、 建設省が後押しする形で各方面の協力を得て以下の 13のプロジェクトについて調査が進められている。 (1)クラ地峡運河建設 マッカラ海峡の混雑緩和と海賊対策を目的に、 マレー半島のつけ根あたりにインド洋と南シナ   海を結ぶ運河を作る計画。 (2)ジブラルタル海峡連結橋建設   27kmしかないジブラルタル海峡に橋又はトン   ネルを建設、ヨーロッパのスペインとアフリカ   大陸のモロッコをつなぐ計画。 (3)プラマプトラ川・ガンジス川治水計画   インダス川・ ガンジス川・ プラマプトラ川を水   路網で連結、下流に水力発電所を作って洪水対   策とすると同時に水資源を確保する。 (4)砂漠地域環境改善計画   サハラ砂漠の低地部分5ヶ所に地中海から海水   を引き込んで、マングローブ等を植林して緑化   する。 (5)第2パナマ運河構想   現在のパナマ運河に平行して幅の広い第2運河   を作り超大型船の通過を可能とさせ、通過可能   船数を7倍にする。 (6)アフリカ中央湖(第二ナイル川)構想   ザイール河を提高 220mのダムで締切って、溢   れた水を 800km北のチャド湖ヘ導水し、サハ   ラ砂漠のニジェールとアルジェリアを横切って   地中海に注ぐ2800kmの水路を建設する。 (7)ヒマラヤ水力発電計画   ヒマラヤ山脈東端のブラマプトラ川上流を堰き   止めて大発電所を作ると、インドの年間全消費   電力量を上回る発電が出来る。 (8)ジャワ・ スマトラ連結   インドネシアのジャワ島とスマトラ島を結ぶ橋   又はトンネルを作る。 (9)中東地域導水計画   乾燥地帯に水路をめぐらせて水を引き込もうと   いうもの。 (10)メコン川開発計画   海へ流失している多量の水を貯えようというも   の。 (11)南米水資源開発計画   海へ流水している多量の水を貯えようというも   の。 (12)ラプラタ川架橋計画   アルゼンチンとウルグアイを橋で結ぶ。 (13)三峡ダム開発   既に着工している これら13の巨大プロジェクトの内実現しそうなの は既に工事が開始されている(13)の三峡ダムくらい なものだ。三峡ダムの場合は中国一国の問題で、し かも共産党の強権で 200万所帯の立ち退きが比較的 スムースに進んだから実現できたと思われる。しか し他の12のプロジェクトは多国間にまたがって利害 がからみ、利権誘導型政治家の暗躍、環境保護団体 等の世論誘導、ゴネる住民の抵抗等にぶつかって実 現への道程は遠い。 (6)のアフリカ中央湖の場合、 1935年に発案された計画なのに、5ヶ国にまたがる 800万所帯が立ち退かないと工事に掛かれない。 (7)のヒマラヤ水力発電は中国とインドの国境線未 確定地域での作業だから、だれが資金を出すにして も、先に両国が仲良くなってくれないと工事作業員 が安心して仕事に打ち込めない。 (9)の中東地域導 水はイスラエルとアラブ諸国がエルサレムの宗教問 題や領土問題をハッピーエンドしてもらわないこと にはまじめに取組んでやる気になれない。 私は長年タイで仕事をしてきた関係で、 (1)のク ラ地峡運河建設のタイ側推進役の一人になっている。 25年前に出されたアイデアだが、当時は現実的では ないとの理由でこの計画はボツとなる。タイでバブ ルが崩壊してから景気刺激策になるとのことで復活 し、私が行動を開始して3年になる。この間反対す るプーケットの観光業者やサムイ島の環境保護団体 への説得役をやってきた。この運河には油を積んだ タンカーと軍用船を通さない条件を付することで決 着しそうだ。残された人生をこのテーマにささげて みたい。 21世紀の終り頃には地球の人口が少なくとも 100 億人、多ければ 142億人になってしまうと云う。水 と食料が不足してくることだけは確かだ。グローバ ル化、ボーダーレス化が益々重要になって来る。こ れら13のプロジェクトは日本のバラマキ型公共事業 と違って、地球に住む全人類に必要な計画ばかりで ある。もし実現出来なかった場合、たとえそれらが 日本から遠く離れた地域のテーマであっても、やが て巡り巡ってその不都合が日本人にも降りかかって 来るに違いない。 ただの岩山でしかない「竹島」の領有をいつまで も主張して韓国人をイライラさせたり、無人の魚釣 島へ日の丸を立てに行くタワケた国会議員がいたり、 そこへ上陸を試みる外国人を阻止するために沢山の 巡視船を派遣したりしているうちは日本人もロシア 人を笑えない。 ロシアが大国主義と訣別し、日本人が島国根性を かなぐり捨てた時から両国民の真のグローバライゼ ーションが始まる。 (完)

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