生活者主権の会生活者通信2000年10月号/10頁..........作成:2000年09月24日/杉原健児


21世紀への手紙 −映画の視点からー

ポリインフォ・プロダクション 秋沢秀人・宮本修伍・清郷伸人

 今から 100年前、20世紀を迎えようとしていた世界は科学技術の進歩と産業経済の発展により自信と希望に満ちていました。世紀末に世を去ったただ一人の哲学者ニーチェを除いて。かれはニヒリズムの到来を予言し、人間と世界の危機を予告しました。だれもが無視した警告でしたが、20世紀はかつてない戦争と難民をもたらし、機械文明の全盛と引き換えに人間精神の狂気が世界を覆いました。情曹サれはまさにニヒリズムによる世界の溶解だったといえるでしょう。

 そして21世紀を迎えようとしている世界は 100年前と異なり、20世紀のもたらした結果の重大さを目の当たりにしてとても楽観的にはなれません。世界は今にも難題に押し潰されそうに見えます。この危機の本質は何なのか。どうすれば克服できるのか。ーー困難な問題ですが、20世紀を担ってきたわれわれの発する問いそのものに解決への第一歩があると信じたいものです。

 18世紀にイギリスで起こった産業革命は 100年余りで欧米社会を一変させました。世界はいまだその延長線上にあるといえます。科学と技術の融合による文明の進歩、需要と供給の大量化による産業経済の発展は、20世紀になって世界戦争という極め付けの大消費を通して急上昇しました。われわれは繁栄と幸福を求めて本能的に克苦精励してきましたが、一方で発展の影を見てはきませんでした。繁栄と幸福の裏側にあるものを見ようとはしなかったのです。発展の影は例えば環境汚染では胎児に、精神の領域では青少年という最も鋭敏な場所に現れてきています。にもかかわらず世界はいまだ資源を蕩尽し、消費で溢れんばかりですし、科学は生殖という神の領域に踏み込んでしまいました。リーダーであるべき政治家も官僚も学者も産業人もいまだ経済への隷属からは脱していません。

 ポリインフォ・プロダクション(多情報加工房)は20世紀のもたらした影の部分を凝視し、ひとつひとつの問題を掘り下げ、21世紀への展望としてこれらを考えていきます。情曹アれから皆さんがご覧になるのは、ほとんど素人であるわれわれによる映画の原案とでもいうべきもので、面白くまたシンボリックに表現する方法としてこういう形に落ち着いたものです。われわれはこれらを哲学論文や評論、エッセーという形で展開するよりも、映画を通して様々なテーマを考えていただきたいと思ったのです。

 ーー以上、『生活者主権』の誌面をお借りするに当たってのポリインフォ・プロダクションの紹介といたします。

生活者主権の会生活者通信2000年10月号/10頁