映画『クローン』原案  （２）
ポリインフォ・プロダクション  秋沢秀人・宮本修伍・清郷伸人
【３．シノプシス】
(1) プロローグ
１９９６年
  北半球  大規模農業−機械化，化学肥料，農薬の
          大量使用。
          工業化−大気汚染，海洋汚染，温暖化，
          環境ホルモン，廃棄物。
          文明生活−少子化，肥満，原子力，麻薬，
          犯罪。                              
  南半球  独立，近代化，民族・宗教対立，内戦，
          人口爆発，貧困，疫病とくにエイズ。
          南で乳幼児が疫病，栄養不良，戦争で簡
          単に死ぬ一方で，北では体外受精，遺伝
          子診断など医学による生殖操作。
          体細胞クローン羊・ドリー誕生。
(2) クローン人間登場
２０１０年
 ｱｼﾞｱ某国  野心と功名心に燃えた欧米の医学者，科
          学者が白熱の議論−クローン人間の有用
          性を主張，経済人もその戦略性に魅かれ
          ，巨額を投資する。
          最初のクローン人間誕生（オリジナルは
          両親が再現を切望している犯罪で殺され
          た男児）。
  各国    クローン人間誕生のニュースが流れ，轟
          々たる反響−非難する欧米の指導者，科
          学者．熱いまなざしを送る北の一部の人
          々．我関せずの南の指導者．等々。
 ｱｼﾞｱ某国  世界中からクローン人間を求める人々が
          続々と入国．ただ限定条件による認可制
          のためほとんどが子を求める不妊の夫婦．
          こうしてクローン人間は増えていく。
(3) クローン人間の利用とその影響
２０２５年
  欧米    人工子宮完成によりクローン人間の要件
          拡大，産業化進む．
          優れた遺伝子を持つクローン人間の解除
          や役割クローンが登場，頭脳優秀，体力
          抜群，美貌のクローン人間−特殊労働，
          単純労働，軍隊．医学の世界ではクロー
          ン臓器やクローン動物の人間への臓器移
          植が短期間しか効果がないためクローン
          人間を医学用に転用−人体実験，臓器移
          植。
  各国    人間世界の現状を描写−農業は気候を遮
          断しコンピュータでコントロール，漁業
          も深海養殖型，北半球は少子高齢型社会，
          怠惰，享楽，犯罪，肥満，とくに子供た
          ちに．南半球は開発と経済発展に奔走．
          世界は完全コンピュータ社会に。      

(4) 劇の展開とカタストロフ
２０４０年
  欧米    道徳破壊現象頻発，とくに子供たちに顕
          著−生命軽視，怠惰，暴力肯定，恋愛不
          能，ギャング化。
  ｱﾌﾘｶ    ９月大規模地震発生．主人公たち登場．
          25歳の女性黒人教師と21歳（2019年誕生）
          の白人クローンの軍人．彼はアメリカか
          らボランティアに選抜されて来た．ふた
          りは救援活動を通じて知り合い，魅かれ
          る．姉弟の感じから女性のリードで恋に
          なる．やがて共同生活。
          災害復旧は遅々として進まない．資源・
          エネルギー巨大消費型の完全コンピュー
          タ社会はあまりにも脆い．北の援助も少
          ない。
２０４１年
  ｱﾒﾘｶ    １月少年テロリスト集団，基盤コンピュ
          ータシステムを一斉に攻撃，壊滅−全世
          界大パニックに．アメリカは暴徒と群衆
          の無法社会に。
  ｱﾌﾘｶ    空港からやっと飛行機で脱出．ふたりは
          女性の故国に着く．しかし故国は災害の
          窮状と国際的なコンピュータシステムの
          壊滅から暴動が発生し，混乱に乗じて人
          間の軍隊がクーデターを起こしていた．
          女性は前政権側と見られ，反乱軍から追
          われる身に．女性は仲の良かった同僚女
          性教師の手助けで男性とともに車で逃走，
          軍の飛行場に侵入し，軍用機で脱出する．
          追跡を受け，燃料の関係でオーストラリ
          ア北部に着陸する。
  豪州    ふたりは軍用機の衛星テレビで，北半球
          の各国でゲーム化した戦闘，コンピュー
          タ過剰依存社会の崩れ去った秩序，怠惰
          とクローン利用で壊れた道徳のもたらす
          地獄を見る．南半球は開発と経済至上主
          義のもたらす物質欲と環境破壊から資源
          やエネルギーをめぐる紛争，戦争が絶え
          ない．高度な兵器により大量虐殺も起こ
          っている。
          ふたりは着陸地で生きることを決意し，
          奥地に向かう．そこで先住民族ブッシュ
          マンに出会う．そここそ古代から人間が
          人間らしく生きてきた楽園であった。
          ブッシュマンは芋を栽培し，主食とする．
          果物や魚を狩る．着る物も家も自然を利
          用してすべて手作り．伝統的な価値観−
          宗教，教育，家庭，統治…その中の真に
          普遍的な力を知っている．人々は穏やか
          で優しい．村長は洞察力に満ち，村民は
          愚かではない．極端な文明のもたらす害
          を見抜き，それを拒否する．
          ふたりは哀しみの人としてかれらに受け
          入れられ，生きて行く。
(5) 登場人物プロフィール
○黒人女性教師    パトリシア，“パティ”
     170cm．55kg．髪は栗色．肌は褐色．25歳．独
    身．中学校の英語教師．中距離走が得意のスポ
    ーツウーマン．中学校を休んで災害救助に．メ
    リハリのきいた積極的で明るい性格．クローン
    を差別せずむしろ同情的。
○クローン男性軍人    ロバート，“ボブ”
     180cm．85kg．白人．髪はブロンド．21歳．独
    身．米海軍軍人，パイロットの資格持つ．母親
    は不妊のシングルマザーで2034年（45歳）死亡．
    兄弟姉妹なし．2035年（16歳）で軍人クローン
    に志願．性格は沈着にして従順．知的肉体的能
    力は極めて高い．砲丸投げで全米５位。
○パティの同僚女性    マリア
     165cm．55kg．髪は赤毛．肌は褐色．27歳．既
    婚，夫と５歳の女の子．中学校の音楽教師．パ
    ティの大学の先輩で職場の親友．独り暮らしの
    パティと家族ぐるみのつきあい．ピアノと歌が
    好き．家族があり対外活動できないがパティに
    敬意。
○クーデタの指導者
     170cm．75kg．髪は黒色．肌は褐色．45５歳．
    熱烈なナショナリストで典型的な煽動家．国民
    の窮状を救うというよりは権力志向が強く支配
    者を目指す。
○少年テロリストのリーダー
     175cm．70kg．白人．髪はブロンド．17歳．ニ
    ューヨーク在住．知的能力極めて高く，冷徹な
    性格．同情心は薄く，現実をバーチャルゲーム
    化思考で見る傾向．完全コンピュータ社会に飽
    き飽きしている．全米の少年テロリストをネッ
    トで組織，その数 100人，全員知的能力高く，
    コンピュータはプロ級。
○ブッシュマンの村長
    年齢不詳（おそらく60歳くらい）．白髪．肌は
    褐色．20年間村長を務める．およそ50世帯，  
     300人を率いている．遠くの村出身の妻と息子
    ２人と娘１人．息子は一人は幼児期に死亡，一
    人は結婚し，子供２人．娘は隣の村に嫁いでい
    る．性格は温厚，沈着だが，若い頃は向こう見
    ずで情熱的だったらしい．（人食いサメと戦っ
    たり，ひとりで１カ月も遠洋航海したり）白人
    とコミュニケートしたこと，白豪社会を見たこ
    とがあり文明の限界を洞察している。  （完）