生活者主権の会生活者通信2000年12月号/06頁..........作成:2000年11月26日/杉原健児


日本国憲法に関する神話の誤謬

大田区 大谷和夫

 日本国憲法はマッカーサー・ノートを軸に GHQで
1週間位で立案したものが原案となっている。従っ
て1907年のハーグ陸戦法規違反の疑いがあるが、国
民主権、平和主義、基本的人権の尊重を謳った面は
評価できる。しかし今日では種々の問題を内包して
おり、特に次の四つの神話は正されなければならな
い。                                          
(1) 世界的に新しい憲法である。                
    現在 178ヶ国に憲法があるが、その中では15番
  目に古い憲法であり、とても新しい憲法とはいえ
  ない。しかも日本より古くできた憲法も種々改訂
  されているが、日本は成立以来50年以上無改正で
  あり、それを勘案すると世界で最も古い憲法の一
  つである。                                  
(2) 世界唯一の平和憲法である。                
    これも外国の憲法を調べればすぐ分かることで
  あるが、各国で平和主義条項が組み入れられてお
  り、その数は 124ヶ国に及んでいる。とても唯一
  などと言えるものではい。しかしあいまいな第9
  条で非武装ととれる表現になっているが、非武装
  を標榜している国は日本の他に一国もない。    
(3) 基本的人権を完備している。                
    具体的内容まではチェックしていないが、日本
  国憲法ができた後で、1948年には世界人権宣言が
  出され、1966年には国際人権規約が出来ているが、
  それらの内容が充分反映されているとは言えない
  状態である。                                
(4) 非常に整った憲法である。                  
    これは GHQで速成し、国会で一部修正したりし
  て論理的、修辞的に各所におかしな所がある。具
  体的に指摘すれば次のようになる。            
  *前文:「平和を愛する諸国民の公正と信義に信
      頼して、われらの安全と生存を保持しようと
      決意した」と非実際的な建前をいいながら、
      本音では日米安保で米軍の核に守られている
      現実とは余りにも距離があるように感じる。
                                              
  *第1条:「天皇の地位は、主権の存する日本国
      民の総意に基づく」となっているが、日本共
      産党は天皇制に反対しており、論理的には現
      日本国民の総意ではない。                
  *第7条:国事行為の四、「国会議員の総選挙の
      施行を公示すること」とあるが、総選挙があ
      るのは衆議院議員のみで、後から追加した参
      議院を含めての国会議員の総選挙はない。従
      って訂正が必要である。                  
      国事行為の五「法律の定めるその他の官吏の
      任免」とあるが、「官吏」という表現は第73
      条にもあるが、第15条にならい「公務員」に
      統一すべきである。                      
  *第9条:「前項の目的を達するため、陸海空軍
      その他の戦力は、これを保持しない。国の交
      戦権は、これを認めない」というのが問題の
      条文であるが、「前項の目的を達するため」
      という文言を追加して自衛権は別だという解
      釈をしている。しかし国連憲章を認めながら
      それに反して海外派兵はできないし、又当時
      の吉田首相が日本が貧乏な間は待ってくれと
      アメリカに嘆願して残されたものであるが、
      今は当時のような貧乏国ではなく、これを改
      訂しないのは公約違反である。更に自衛隊を
      正式の軍隊と認めず、日陰の身において実戦
      能力の乏しいままにしておくのは国家的に膨
      大な浪費である。                        
  *第15条:「公務員を選定し、及びこれを罷免す
      ることは、国民固有の権利である」となって
      いるが、地方公共団体の首長などごく一部の
      公務員に限定されているのが現状であり、全
      ての公務員に適用されるような表現は適当で
      はない。                                
  *第20条:「いかなる宗教団体も、国から特権を
      受け、又は政治上の権力を行使してはならな
      い」とあるが、公明党と建前上は分離してい
      るが、実質的には創価学会の応援を受け、そ
      の支配下にあるのではないかと疑われている。
  *第41条:「国会は国権の最高機関であって、国
      の唯一の立法機関である」とあるが、日本で
      は立法、行政、司法と三権分立を建前として
      いるので、表現上誤りである。            
  *第89条:公金を私学に支出してはいけないこと
      になっているが、私学助成は行われている。
      第9条と同様憲法の建前と実態が遊離してい
      る。                                    
  次回には話題を一変して「日本の古代」について
述べる。                                      
                                              
参考図書:                                    
「日本国憲法を考える」  西修著  文芸春秋      
「解説  世界憲法集  第3版」                  
                樋口陽一、吉田善明編  三省堂  
「世界の憲法、日本の憲法」                    
                  中島一麿監修  オーエス出版  

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