映画『17才』原案 (2)
ポリインフォ・プロダクション 秋沢秀人・宮本修伍・清郷伸人
【3.登場人物プロフィール】
○吉岡 誠
日本経済大学卒で総合商社丸和商事勤務のサラ
リーマン。47才。内気で目立たない性格。趣
味は読書とパソコン。
○吉岡 冴子(旧姓西野)
港短大家政科卒の栄養士。45才。行動的な女
傑タイプ。
○吉岡 秀一
有名私立高校2年生。17才。成績普通。学校
にも家庭にも不満はあるが抑えている。
○水本 憲明
秀一の担任の教師。38才。秀一とソリが合わ
ず対立的になる。妻と高校1年の息子。
○浅田 弘子
開業医の夫と有名私立高2年生の息子を持つ専
業主婦。43才。気難しい才女タイプ。
【4.シノプシス】
<丸和商事営業部>
吉岡誠が顔色悪く座っている。昼休み、皆食堂
へ行くので元気なく最後にひとりで行く。
<丸和商事食堂>
吉岡誠が食事の大半を残している。そこへ西野
冴子が通りかかり、誠に「貴方には食べやすい
特別食を用意します」という。
< 〃 >
別な日。食堂の特別席、冴子の用意した特別食
を食べる誠。元気になり、やってきた冴子に「
元気になったのでお礼がしたい」といってデー
トの約束をする。
<1年後→ホテルの結婚式場>
誠と冴子の結婚式。
<賃貸マンション>
秀一の誕生。冴子は丸和商事を退社する。半年
後マイホーム取得のため秀一を保育所に預けて
食堂会社にパートで勤める。
<郊外の一戸建て>
新築のマイホーム。引っ越しの挨拶にブランド
もののバスタオルを配る冴子。
開けてみてびっくりし、やがて暗い嫉妬の目付
きで家族と話す浅田弘子。幼稚園の入園式 保
母と仲良くしている秀一、母親たちと如才なく
話す冴子。それを睨んでいる弘子。
<弘子の家の前>
秀一を連れた冴子が弘子の息子や園児2、3人
のいる弘子の家の前を通り、皆に「秀一と仲良
く遊んでくださいね」といって買い物に行く。
弘子が出てきて「吉岡冴子は大嫌い」といって
秀一を残して皆を家の中に招き入れる。
<公園>
涙の乾いた顔をして秀一がしょんぼりしている
ところへ冴子が通りかかる。訳をきき、悔し涙
で秀一の手を引いて帰る。
<町内会>
役員の弘子が町内会費と祭りの寄付金を集めに
冴子宅に。寄付金を仕方なく1000円出す冴
子に、どこも最低3000円だと迫る弘子。払
わされる。誠にいうと有力者だから逆らうなと。
<有名小入試前>
冴子は食堂会社から給料のいい料理栄養学校に
勤めている。誠はいつも10時過ぎの帰宅。冴子
と出来合いの惣菜の夕食をすますと秀一の入試
の特訓。ふたりとも誠とはほとんど顔を合わさ
ないし、口もきかない。
<小学校入学式>
有名校入試に失敗した秀一はあまり祝ってもら
えない。弘子の息子は合格したからなおさらで
ある。誠は公立でもいいというが、冴子に無視
される。もう有名中学を目指すという話しが出
るくらい。
<小学校5年生>
学校と塾と自室でのゲームの毎日。それらは冴
子にきちんと管理されている。子供らしい外遊
びやケンカとは無縁の生活。ゲームは大好きで、
とくにファンタジーとバイオレンスはお気に入
り。また勉強は好きではないが、絵や漫画、デ
ッサンは好きで本格的に教室に通いたいが、母
親は受験のため許可しないし、伸び伸び描かし
てはくれない。一方、教室は3、4人の悪童に
荒らされている。先生は体罰もできず、逃げ腰。
注意した子が袋叩きにされる。冴子にいうと、
決してその子たちに逆らってはいけない。知ら
ん顔をしてなさいといわれる。PTAでは悪童
の親より学校の責任ばかりが追及される。
<街で>
家族そろって久し振りの外出。路上でホームレ
スを見て、少し恐怖を感じ、冴子に何故あの人
たちがいるのと尋ねると、あの人たちは人間の
クズ、ああならないよう勉強していい学校に行
きなさいといわれる。夕刻の駅ホーム。老人男
性が柄の悪い若い男2人にカラまれている。な
んでも所定場所以外の喫煙を老人が注意しての
トラブルらしい。手は出さないが言葉の暴力が
すさまじい。しかし周りのだれも困惑と恐怖に
おののく老人を助けようとはしない。知らん顔
でやりすごす。秀一たちも同じ。ただ秀一はこ
の光景に強い印象を抱く。
<有名中学合格>
猛勉強の甲斐あって合格。お祝いに家族でアメ
リカ旅行。帰路の飛行機、誠と秀一は帽子から
靴までお揃いのジーンズ・ルック。冴子のアイ
デアでみんなご機嫌である。
成田空港からの特急指定席。3人の席に老人が
座る。その途端、秀一の表情が一変する。老人
を殺人的な目付きで睨む。両親はしばらくして
気付いたはずだが、黙っている。老人はいたた
まれずとうとう席を移る。
<友人の叔父の居酒屋>
開店前、友人と店でしゃべっているとチンピラ
が親父を呼べと。友人の叔父に金を要求。威張
って受け取る。訳をきくと暴利の借金の取り立
て屋だと。やつらは半分の報酬を取ると。また
居酒屋の家主が購入したビルの占有屋も法外な
立ち退き料を要求していると。警察も腐ってい
て何もせず、まじめに働く者が馬鹿を見ると。
そんな所から借りなければという友人に自分た
ちのような者に銀行は貸してくれない、どうし
てもとなったら分かっていても貸してくれる所
に行ってしまうと。
<中学校生活>
勉強があまり面白くない。絵は好きだが、家で
は高校受験のことばかり。当然、塾にも通わさ
れる。母親の管理は依然つづく。にもかかわら
ず成績は少しずつ落ちていく。パソコン通信と
バイオレンスのゲームにますますのめりこむ。
有名中なので表面は荒れていないが、要領のい
い生徒は適当にうまく遊んでいる。秀一はそう
ではないので喫煙がバレたり、エロ写真が見つ
かったりして学校と親から強く叱られる。だが
普段はまじめなおとなしい生徒である。
<中学3年生>
学校から成績も内申点もこのままでは進学に問
題ありと連絡が来る。家庭教師をつけ、内申対
策ではボランティアをやることになる。家庭で
はつねに成績と内申書のことが話題になる。
<高校入学・高校1年生>
なんとか一貫で高校に進むことができた。成績
は中の下くらいまで回復。絵画部に入る。母親
はいい顔をしなかったが、無視。とてもウマの
合う美術の先生がいた。いろんなことを話し合
う。絵がますます好きになる。一方、歴史の教
師はなにかにつけて秀一に注意する。ヌレギヌ
も多い。秀一はニヒルな眼で教師を睨む。
< 〃 >
パソコンに開いた秀一のホームページを見た女
性からEメールでデートの誘い。ガールフレン
ドもいないのでついOK。友達に話したらヤバ
イといわれ、結局スッポかす。翌日、自分の携
帯に男から「慰謝料5万持ってこい」と。仕方
なく親に嘘をいって持っていく。そんなことが
2回つづき、携帯を手放す。しかもその話が教
室に広まり、女生徒から馬鹿にされる。
<父の帰宅>
父が顔にひどい怪我をして帰ってきた。会社の
株主総会を控え、配属先の総務部に数人の総会
屋がきてトラブルとなり、父が若い男に殴られ
たという。しかし会社は総会屋に金を払ってい
た過去もあり、警察沙汰にせず泣き寝入りさせ
られたという。総会屋にはただ来るだけで毎年
父の会社だけでも数百万円支払っていたという。
<高校1年末>
美術教師退職。母親は絵では出世しないから辞
めろという。サバイバルナイフ購入。一つの心
の拠り所。
<高校2年生>
歴史の教師が担任になる。当番とか係りとかで
なにかと不利になるように策していると秀一に
は思えることがつづく。実はそれほどではない
のだが、思い込んでいる秀一はすべてを悪くと
らえる。このことは1、2の友人を除いてだれ
にも話してない。
<教室>
ある日、黒板を歴史の教師が引き上げると“侮
留多巣毒刃事件2000年X月Y日”と書いた
半紙大の紙が貼ってある。「だれがこれを貼っ
たか」と3回聞くが返事はない。教師は全員へ
の罰としてノート1ページに年表を作り今日中
に提出するよう命じる。
(この四角面の教師に似た子が1年生にいる)
<教室>
別の日の1時限目。歴史の教師が黒板を引き上
げると教師の机の下の奥から1年生の子の生首
が転がり落ちる。黒板と釣糸で結び付けてあっ
た。秀一は驚倒する教師をニヒルな眼で眺める。
<家庭裁判所>
秀一は心身耗弱と判定され、医療少年院に収容
される。そこでカウンセラーによるカウンセリ
ングを受ける。自分をみつめ、いままでの人生
はすべて母親が描いたもので、自分を無理に合
わせていたことを知る。そしてそのことにだれ
一人気付かず破局に至ったことを知る。日本社
会が陥っている競争と暴力への麻痺をカウンセ
ラーは痛感する。…これらはノートや日記に記
されて表現される。
<秀一の家庭>
誠も冴子も会社を辞め、自宅も売り払い、医療
少年院に近い町に引っ越す。人づきあいを避け、
秀一の償いに生きる。誠がそれらを決め、実行
していく。ふたりは初めて本当の親、本当の夫
婦になった気がする。
<教師の家庭>
教師夫婦は立ち直れない。とくに母親は心身を
害し、入院。中学1年の妹もショックが大きい。
将来にわたって強いトラウマになりそう。教師
は仕事をつづけるが、担任は解かれる。眼はう
つろである。 (完)
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