生活者主権の会生活者通信2001年02月号/08頁..........作成:2001年02月03日/杉原健児


21世紀を迎えてーその潮流、問題点、課題と対策

大田区 大谷和夫

(1) 世界の新潮流                              
    情報革命というかIT主導の産業革命が急速に進
  展しつつある。その影響もあり、市場主義がカジ
  ノ化し、資本主義の変質が見られる。不条理とも
  思える金融過剰経済が米国主導で蔓延し、富と貧
  困の2極分化が進行している。                
    欧州では国境を超えた地域統合の実験と市場経
  済下の社会政策の探求を進めるユーロ社民主義の
  実験が始まっている。                        
    21世紀はサイバー・スペースとリアル・スペー
  スが併存する不確定性原理の世紀となるであろう
  と大前研一氏は予想している。サイバー社会では、
  啓発された個人のみがそのプラス面を享受でき、
  啓発された企業経営者だけが勝者となれる厳しさ
  がある。                                    
(2) 世紀末諸国の問題点(日本以外)             
    アメリカは世界最大の債務国である。世界各地
  に市場危機を演出して金を吸い寄せている。従っ
  てもしアメリカ国民のドルへの信頼が失われるよ
  うな事があれば、内部から崩壊する可能性を秘め
  ており、その影響は全世界に及ぶ可能性がある。
    中国は強権的中央集権では富の創造が出来なく
  なってきている。現実に共産党は若者に馬鹿にさ
  れており、一人っ子の甘やかしも異常であり、現
  体制の崩壊も視野に入ってきた。              
    カナダ、ユーゴ、インド、インドネシア等では
  国家のアイデンティティを喪失しつつある。    
(3) 資本主義の社会的健全化                    
    21世紀の資本主義の構想としては、次のような
  経済社会を目指すべきであろう。              
  *金融市場での資金作りだけを目的とする経済活
    動を礼賛する事は、資本主義の自殺  であり、
    このような「売り抜く資本主義」ではなく、息
    の長い「育てる資本主義」  を重視すべきであ
    る。                                      
  *「儲けるだけの資本主義」ではなく、意義ある
    事業活動を展開しながら、付加価値を企業を取
    り巻く関係者に適切に配分してゆく「節度ある
    資本主義」を目指すべきである。            
  *強い者はより強く、弱い者はより弱くなる二極
    分化の「格差資本主義」ではなく、  「中間層
    を育てる資本主義」を目指すことが大切である。
(4) 当面する日本の課題と対策                  
    90年代に入ってから国際競争力を始めとする相
  対的国力の各種指標が急速に低下しつつあり、第
  二の敗戦ともいわれ、国の財政も未曾有の借金漬
  けとなり、IT革命によるドット・コム・ショック
  により、経済面からも重大な脅威にさらされつつ
  ある。                                      

<対策>                                 
 (1)基本的には、伝統的な島国根性から脱却し、現
    実世界の常識を身につける。視野の世界への拡
    大、合理性の獲得、学習の重視、戦略の確立、
    が最重要である。                          
 (2)当面情報武装(インフラ、人材、言語ノーハウ) 
    10年の遅れを急速に挽回すると共に、徹底的な
    規制解除により市場経済のもつ本来の活力を取
    り戻す。                                  
 (3)中央集権に伴う利権政治は既に時代遅れで亡国
    の道である。先進諸国の例を見るまでもなく、
    道州制を基本とする連邦制を目指して、地方か
    ら自立権限を獲得して地方を活性化し、国政は
    外交・防衛・通貨などに絞り、米国の属国状態
    からの脱却をはかる。                      
 (4)自国悪者史観による過剰自虐症を克服し、平和
    呆けから覚醒して日本人としてのプライドを取
    り戻し、国連の平和活動にも積極的に参画して
    世界の一員としての責任を果たす。          
 (5)自由に対する責任、権利に対する義務、個と公
    のバランスを回復し、パブリックに対する責任
    意識と健全な国家意識を確立する。          
 (6)一極集中防止、首都圏移転という発想ではなく、
    空間利用による魅力ある都市の活性化を進める
    のが先決である。                          
 (7)憲法、教育基本法の改正も含めて、実世界を直
    視した自主独立の具体化と教育の抜本的自由化
    を進める。国公立学校も独立法人化して競争原
    理を導入する。                            
 (8)最後に日本国として、将来は自然や異文明に対
    し、調和と共生による人間革命を主導する。  
                                              
参考図書:                                    
「21世紀維新−栄える国と人のかたち」          
                      大前研一著  文春新書065 
「『正義の経済学』の復権」                    
            寺島実郎著  中央公論  2000年3月号
                                              
  以上で連載を終了します。ご愛読に感謝します。

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