宮沢大蔵大臣と補正予算の必要性、国債乱発の危険性について11月21日大蔵委員会での激論(2)衆議院議員 ながつま昭○長妻昭 そして、大蔵大臣の発言、これはかなり変わりましたね。 びっくりしておりますけれども、七月七日、記者会見で、四月か ら六月期のGDPを見て判断するが、それほど大きな補正予算は 必要ないと言われているわけです。そして、九月一日の記者会見、 これは亀井静香政調会長の、事業規模十兆円、真水五兆円、こう いう補正予算を組まなきゃいかぬ、こういう発言を受けて、宮澤 さん、立派なことを言われているのですよ。「お祭りが始まる前 に、一発、花火を打ち上げておこう、ということだろう。花火の 規模としてはいいかもしれないが、思いもよらない」、はっきり 言われているのですよ。なかなか良識あることを言われているの ですよ。 ところが、今回の補正予算、きっちりこの数字じゃないですか。 事業規模が十一兆円、そして真水が五兆弱。亀井さんの言ったの と同じ数字じゃないですか。それで、それを認めて、あげくの果 てに二分の一条項もきょう削りましょうと。 これは転向なんですか。何で自説がころっと変わっちゃうので すか。端的にお願いします。 ◇宮澤国務大臣 少しも考えは変わっておりません。 前から、今年度は昨年度、一昨年度のような大きな補正をする ことはもう入り用がないんじゃないかということをずっと申して まいりました。 企業活動はもう予定のとおり民需として動いておりますけれど も、やはり雇用、殊に家計についてのあらわれが非常に鈍くござ いまして、したがって、二つの民間企業活動が二つとも動いてい るというわけに――バトンタッチが半分しかできていないという 感じでございますから、それならば、やはり来年の一月ごろの公 需の落ち込みが、ふだんあるのが通例でございますので、それだ けは見ておいた方が民間のバトンタッチがしやすいだろうという ことと、IT等々の将来に向かっての環境整備をしておいた方が いい。この両にらみで今度の予算はできておるわけでございます が、総体としても、四兆七千億というのは、半分はしかも債券以 外の方法で調達しておりますから、従来に比べれば随分小ぶりに なっております。 それに、十一兆円という事業規模はそのとおりでございますけ れども、その中で一番大きな部分を占めますのは中小企業等金融 対策の四兆五千億円でございますので、これはある意味ではこの 効果というのは、普通の意味の勘定と違っておりますから、それ だけのものがここに大きく金融に出ておりますので、十一兆円そ のものがそれだけの財政負担という意味ではございませんので、 比較的小ぶりの金額で、そういう意味での金融、これは民間活動 でございますから、そういうものへの影響を大きくしていこう、 こういう心構えでございますから。 何にもここで補正をしなくてもいいかといいますと、やはり今 のバトンタッチには少し問題がありますし、それから、新しいい わゆる社会資本の整備、IT等々のこともいたしたいということ で、もちろん、何もしなくて済めば、大蔵大臣としては二兆円の 国債も出す必要もないことでございますけれども、半分税金等々 で賄いまして半分国債ということは、ベストではございませんけ れども、この際としてはまあまあのお願いであるかな、こういう ふうに考えまして、補正予算の御審議をお願いすることになった わけでございます。 ○長妻委員 宮澤大蔵大臣、今の発言も本当に評論家なんですよ。 なぜかというと、今回の補正予算は半額しか公債で賄っておりま せんと胸を張っていましたけれども、自然増収があるのじゃない ですか。自然増収というのは大蔵省の努力で出た財源じゃないの ですよ。たまたま出ているのですよ。半分が税収で半分が公債だ からと胸を張られている。全然当事者意識がないのですよ。 それで、大蔵大臣、先ほど私が申し上げた過去の発言で、今宮 澤大蔵大臣は、いや、全然自説は曲げておりませんというふうに 御答弁されましたけれども、九月一日の記者会見は、事業規模十 兆円以上の補正予算編成、それで真水が五兆円、これは花火の規 模としてはいいかもしれないが、思いも寄らないというふうに発 言されているのですよ。だめだと発言されているのですよ。これ は自説を変えたわけでしょう。今、変えられていないと言う。変 えたのなら変えたと言っていただきたいのですよ。今、変えてい ないとおっしゃったから……(発言する者あり)そうなんですよ。 これでは質問が前に進まないのですよ。 ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、事業規模十兆 円といったようなことが報道されていて、いろいろ御議論になっ ていましたが、私としては、これはやはり金融がどうしても中心 にならざるを得ないし、今企業活動から見ましても、貸し渋りか ら見ましても、金融のところに重点を置くということは大事なこ とでございますから。 それで、実際は、十兆円と言っていらっしゃるが、四兆、五兆 ぐらいのものが金融でやれるな、こう考えて私は初めから言って おるわけです。(長妻委員「発言が変わったんじゃないですか」 と呼ぶ)変わっておりません。そう言わないだけで、十兆円と言 ったときに、私は……(長妻委員「十兆は思いも寄らないと言わ れている」と呼ぶ) □萩山委員長 不規則発言はだめです。 ◇宮澤国務大臣 いや、十兆円と言われましたときに、何か公共事 業をどんどん積み上げていってというふうに私は考えていないだ けのことであって、やはり金融で半分近いものはいかざるを得な いな、こういうことは私は自分で――それは恐らく委員のお立場 からもおわかりいただけることだと思うのですが、漠然と十兆円 というときに、どういうものかなということを私の方は考える職 責でございますから。 ○長妻委員 今の発言だけじゃないのですよ。過去、国会でもこと しずっと同じ発言をしているのですよ。大きい補正は要らない、 胸を張って言えますとか、五月二十九日もIMFの副専務理事に そんなようなことを言われているし、四月十三日も森総理に、大 きい補正予算は必要ありません。三月二十四日も、景気は回復軌 道、大型補正必要なし。三月十三日、参議院予算委員会、大きな 補正予算は組まないで済むのではないだろうか。これ以上、発言 はずっといっぱいあるんですよ。だから、私がお伺いしているの は、どの時点で判断を変えられたのか、経済指標なりなんなりの 変えられた根拠を率直にお話しをいただきたい。御答弁を。 ◇宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、秋ごろに 公需から民需へのいわゆるバトンタッチがあるであろうというこ とについて、ことしの一月ごろでございますけれども、三月にも そうでした、まだQEが十―十二のところしか出ておりませんが、 そこでもう企業設備は大丈夫そうだなという感じが私にございま した。 そこで、確かにおっしゃるように、おまえがそのとき十分考え なかったことは何だとおっしゃれば、企業設備が出れば、それは 普通、不況脱出からいえば、それが雇用になり、家計に好影響を 与えるというのが普通のパターンでございますから、それがもう 少し早く伝染していくだろうというふうに私は期待をしておりま した。しかし、四―六は、形はそう見えますけれども、今の家計 というものはやはり非常に、いわば低迷をしておると申し上げた いぐらいに動きが鈍うございますし、七―九ももしかしたらそう かもしれない。 それは、普通の景気回復のときのパターンと確かにちょっと違 うと申しますか、構造的な変化が将来に向かって我が国の経済社 会に起こっているのかもしれない。そうでないかもしれません、 後にならないとわかりませんが。その部分が、普通のパターンで 秋にバトンタッチが両方から行われるだろうと思ったところと違 っておるということは考えております。 したがって、それがあるものですから、どうも年度末の公需は 停滞しそうで、ここは手当てをしておいた方がいいというふうに 考えておるわけでございます。 (つづく) |