一票の格差問題勉強会の報告と補足
一票格差問題特別委員会委員長 河登一郎
・題記に関する勉強会が2月25日に開催された。講
師は本件について過去4回も違憲訴訟を提起され
た弁護士グループの一人森徹弁護士にお願いした。
・この問題は結論は単純だが、選挙区割りとの関係
で意外に複雑な面がある。以下は講師のお話を中
心に問題点を整理・補足したものである。
1.現状:
(1)衆議院小選挙区(480名のうち 300名/ 180名は
全国11ブロックの比例区)。
a)最大格差2.31倍(神奈川14区57万人対島根3区
25万人:H7国勢調査。H12調査では2.57倍)。
b)格差が2倍を超える選挙区が60もある(H12国
勢調査では95に増加)。
c)人口比例と比較して定員不足の県は・東京/神
奈川3名;埼玉/千葉/大阪2名;愛知/北海
道/兵庫/福岡1名と首都圏、大都市圏に集中。
(2)参議院選挙区(252名のうち 152名: 100名は全
国比例区) 。
a)最大格差 4.8倍(東京都 147万人対鳥取31万人) 。
b)格差が2倍を超える県25(47のうち)人口比例
と比較して定員不足は東京6名;大阪/神奈川
4名:愛知/埼玉/千葉/北海道/兵庫/福岡
2名と衆院と同様、首都圏・大都市圏に集中。
2.法律上の問題点:
(1)憲法:
a)14条 "法の下の平等" /15条 "普通選挙" 。
b)43条、44条、47条:定数・詳細は法律で定める。
(2)公職選挙法:選挙区、比例区別定数等詳細規定。
(3)衆院議員選挙区画定審議会設置法:
a)人口比格差最大2までを基本とする。
b)都道府県にまず1名配分し残りを人口比例配分。
3.裁判所判決:
(1)戦後多数の違憲訴訟が提起され、1970年代から
90年初めにかけて衆院で4倍参院で6倍を超え
た時期があり複数の高裁で違憲、最高裁でも違
憲状態(但し選挙は有効)との判決も数回ある。
(2)最近の最高裁判決:
・1992参院選訴訟:1996判決(合憲8:違憲7)。
・1998参院選訴訟:2000判決(合憲10:違憲5)。
4.外国の例:
・詳細は省略するが、アメリカの上院を除いて殆
どの先進国では人口比例方式をかなり厳格に規
定している。アメリカ上院は州が独立国家的色
彩を残している例外。
5.その他の問題:
(1)最高裁の違憲立法審査は抽象的判断をせず、具
体的事件性を必要とする。従い、具体的選挙に
ついて、自分の選挙区の選挙管理委員会を被告
として訴える形。
(2)投票権の平等は最大と最小の格差だけでなく、
中間の不平等の解消も求める。現実には人口と
定数が逆転しているケースさえある。
(3)格差の是正は器の適正化で、内容はその後の問
題だが地域不公平は是正されよう。
6.今後の運動:
(1)違憲訴訟:
・時期:H13年7月参院選の後が最初の機会。
・費用:自分で提訴する場合、印紙代¥9800+諸
実費。弁護士に依頼する場合はケースによる。
・原告:自分の選挙区で管轄選管委を被告として
敗訴覚悟で訴えるか否かの判断が必要。
(2)法律改正提言:
・公職選挙法:議員定数以外にも問題点多い。
・衆院選挙区画定審議会設置法:一人配分の廃止。
審議会から首相に出す勧告に対する提言。
・議員提案が有効。会員議員との協力通じ提言。
(3)最高裁判事の国民審査に関する情報公開:・衆
議院総選挙時点での国民審査。
・本件以外の判決情報を含めた情報公開。他団体
との協力。PC/IT/HPの役割に期待。
以上の如く、いずれも単純ではないが、HPの活用、
他団体との協力を含め引き続き具体策を検討したい。
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