廃プラ焼却とごみ発電
今年8月、
事業系を含め、一般廃棄物は、年間、約5千万トンですが、産業廃棄物は、その8倍の年間約4億トンもあります。一般廃棄物に対しては、ダイオキシン対策済みの高価な焼却炉が、税金負担により建設されました。横浜市では、産業廃物が一般焼却炉に混入されないように警察OBを雇って監視しているそうです。東京では、産業廃棄物は、横浜のような取り組みもがない他、持ち込みごみの料金が安いため、産廃として処理せずに、かなりの量が一般焼却炉に持ち込まれているのではないかと懸念されます。
一般廃棄物はだんだん減ってきて、現状の各焼却炉は、フル稼働するには、量的に、不足する状態になってきました。焼却炉05年の稼働率は03年より10%以上も下がり、68%前後に低下しております。
環境ビジネス推進派は、大阪や京都は、廃プラも可燃ごみも一緒に燃やしているので、東京も早く燃やせといわんばかりなのではないでしょうか。焼却炉の次は発電機です。熱効率は、4%、5%、10%…。環境省は、10%で交付金を出すといっています。地球温暖化対策との整合性はどう考えているのでしょうか? 仮に、発電機の熱効率が10%ということは、残りの90%は、地球温暖化防止措置に反して、無為に熱を捨てていることになります。発電するからOKという乱暴な話ではなく、もっと定量的に説明して頂きたいものです。仮に実施するにしても、発電だけでなく熱回収と結びつけ、電力と熱のコジェネレーションにするなど、もっと総合的に熱効率をあげる工夫が必要ではないでしょうか?何よりもごみが発電原料として必要不可欠なものになってしまうと、根本的に資源のムダ使いをする使い捨て製品に免罪符を与えることになります。
電力自由化の結果なのでしょうか?23区に買電売電をする新会社を作るのだそうです。新会社は、出資金2億円(東京23区清掃一部事務組合が6割、東京ガスが4割出資)の株式会社だそうです。株式会社であれば、発電機を回す原料が不足すれば、あらゆるところから燃料を供給してくることになります。産廃からでも、燃料を供給されれば構わないことになるでしょう。もしそうならば、産廃を堂々と一廃の焼却炉で燃やせるようになるのです。それが成功すると
“ごみを焼却して公立の小中学校に、市価より安い電力を供給する”ことを大義名分にしており、一般の人は、それだけ聞くだけで、もっともだと思ってしまいます。
ごみ発電すれば、発電した電力を小中学校に送るのです。量の多少は別にして、不足ならば不足分は買電で補えば済むのです。夏場の電力消費ピーク時には、小中学校は、夏休みになるので、消費電力はゼロになるからなおさら好都合なのです。
新会社について、詳細は未だ良く分からないのですが、清掃工場の余った電力を買電するだけなので、設備費は要らず、人件費(オペレーター)は、アウトソーシングになるそうです。すでに新会社の社長には区長会代表がなることに決まっております。エネルギー新法で、ごみを利用するとメリットが出てくるという法律の仕組みもあるので、それも組み込まれることになります。概略的には、売電と買電の価格の差分が、新会社の利益であり、利権・天下りの温床になるのではないでしょうか?
一般紙には、「
容器包装リサイクル法(以下容リ法という)の改正の時も、産業界、…経団連の猛反発で市民100万筆の署名も無視されてしまいました。本来生産者の費用負担分を商品価格に上乗せして販売すれば、消費者も買うかどうかを考えることにつながり本質的な発生抑制となる筈でした。ドイツでは、この発生抑制まで考えた拡大生産者責任が、法によって定められていました。日本では、「生産者に責任(費用負担)を求めるのは酷である」と容リ法制定の時には、生産者責任の直接適用を避け、“生産者は、リサイクル費用負担を、自治体は、運搬・保管費用の負担を、消費者は、分別の努力を、…3者の役割分担”ということになりました。そのことが、生産者に製品を改良する動機付けをなくさせ、自治体をリサイクル貧乏に追い込んだのです。今回の容リ法の改正の時は、再生基金の余剰金(計画と実績の差)を製造者と自治体が折半にして、製造者の得た費用を、分別を良くした企業に褒美として与えるというもので、本質とは全く関係がない結果に終わりました。むしろリサイクルの段階でその合否を厳しくすることで、リサイクルがやり難くなるのではないかと懸念されます。
廃プラは、焼却炉の煙突から本当に出て来ないかどうかは、連続サンプリングをしてダイオキシンの排出が基準値以内にあるかどうかを確認すべきでしょう。いわゆる高性能炉が出来て、少なくともダイオキシン問題は、すでに解決済みの印象を持たれる方々も多くおられると思いますが、いろいろ多くの問題は残されております。
渋谷の清掃工場の裁判で弁護士の梶山正三氏は「焼却炉は、ある種の化学反応炉です」と言われましたが、反応して出来るものはベンゼン環(俗に云う亀の甲)の化合物(ベンツピレン)もあり、1,300℃~1,400℃になっても、炭化水素がズタズタに切れてしまうということはありません。最近判明したことは、多環芳香族炭化水素(PAHs)という物質群やその窒素化合物(ニトロ多環芳香族炭化水素)が排ガス中に存在します。しかも、窒素化合物は、高温域では、温度が上がるにつれて増加すると言われています。(渋谷清掃工場の裁判)ニトロ多環芳香族炭化水素の発がん性については、量的な面を考えるとダイオキシンよりも影響は大きくなります。これらの物質は、ガス状なので、バッグフィルターを通過してしまいます。このことは、今のシステムでは、対応出来ないと言うこと、即ち“システムが破綻している”ことを示しております。
これらの化学物質については、ほとんど測定も行われていない状態なので、ダイオキシン類と合わせてこれらの化学物質や高温で気化する重金属の実態把握から取り組むべきです。実態把握の後に、私達の健康と環境を守るため規制値を定めることが必要になります。
最後にもう一度念のため、一般に思われていることに対する反論を挙げておきます。
①
他の都市では、すでに廃プラを燃やしており、なんら問題を発生していない。
どうして
(反論)現在でも小児ぜんそくの発生率は高い。さらに廃プラを燃やせば、危険度は、増加する。清掃工場の周辺は、第2のアスベストになるのではないでしょうか?
②
処分場が満杯です。次世代のバトンタッチするために少しでも寿命を延ばしたい。
(反論)これは全くのうそです。浚渫残土41.5%、建設廃材15.9%で約6割を占めています。一般廃棄物中の廃プラは、全体の10.4%(容積比)に過ぎません。
③
廃プラはかさむので運搬にコストがかかります。プラスチックは圧縮するだけでモノマーやいろいろな化学物質が発生します。
(反論)これはその通りです。定性的な実験でしたが、圧縮する中間処理の場合にも、問題があります。プラスチックは焼却しても、燃やさなくても、圧縮・切断すると化学物質が放出されます。だから、焼却した方が良いという方向にはありません。それには、容器・包装の使い捨てプラスチックを作らない、使わないという方向になります。
次の参議院議員選挙で、自民党は「ごみを燃やして世間より割安の電力を小中学校に供給して参ります」民主党は、問題の真意が分からず、口パクパクするだけで負け。世耕○○とかの作戦勝ち。こんなことにならないようにだけは、お願い致します。
廃プラ焼却、発電所建設のペテンじみた方法に対し、64名の
(作成に当たり、植田靖子さまに修正、加筆など、いろいろとご協力を頂きましたことに紙面を借りて感謝いたします。)