新内閣に道州制の推進を期待する

東京都渋谷区 岡部 俊雄


安倍新首相が誕生し、新内閣が発足した。安倍首相は首相就任前から道州制の推進を主要な政策の一つに掲げていたが、新内閣では道州制担当大臣を初めて設置し、中央省庁の再々編ともからめた本格的な推進体制を整えた。

 自民党総裁選挙当日(9月19日)の日本経済新聞は「道州制の導入含め、地方分権に本腰を」という社説を掲載した。全国紙が道州制推進を社説で旗幟鮮明にしたのは初めてではないだろうか。

 同社説では、安倍、谷垣、麻生の三氏が共に道州制に前向きな発言をしていること、特に安倍氏は総裁の任期である3年をめどに「大体の骨格を決める」と意欲的であることを評価している。

 

 同社説の核心部分の記述は次の通りである。

(原文のまま)

 「道州制は中央省庁の再々編とも関連し、わが国の統治形態を変える大改革となる。今年二月に政府の地方制度調査会が道州制の導入を求める答申を小泉純一郎首相に提出したが、その後は検討が進んでいない。新政権の誕生を契機に、より具体的な制度設計に向けて議論が深まることを強く期待したい。

 都市と地方の格差がしばしば話題になるが、全国をブロック単位でみるとそれぞれ欧州一国並みの人口と経済規模がある。東北六県を合わせればベルギーを上回り、九州七県ならばオランダにほぼ匹敵する。各地域の潜在力はもともと高いが、中央省庁による画一的で縦割りの経済振興策が壁となり、その力を十分に発揮できていないのが現状だ。

 都道府県を十程度に再編した道州に国の出先機関の機能も統合すれば、経済振興策のほか、内政全般について道州が担えるようになる。一方、国は外交や防衛、金融政策、社会保障など、本来の国の役割に専念することが可能になり、国益に直結する分野に人材を集中できる。

 補助金を通じた国と地方の二重行政はわが国の政府・自治体の肥大化を招いた大きな要因である。道州制導入に併せて、国、道州、市町村の役割と責任を明確にしたうえで権限と財源を地方に移せば、重複投資を避けられ、公務員の大幅な削減を進めやすくなる。東京一極集中の是正にも道州制は役立つであろう。」

 

 そして首相に就任した安倍氏は9月29日の所信表明演説で次のように述べた。

 「さらに、21世紀にふさわしい行政機構の抜本的な改革、再編や、道州制の本格的な導入に向けた「道州制ビジョン」の策定など、行政全体の新たなグランドデザインを描いてまいります。」

 安倍首相の姿勢は明快であり、是非この方向で政府、与党を引っ張って行ってもらいたい。

 

 しかし、先般政府がまとめた「新地方分権改革推進法案」には当初盛り込まれる予定であった「道州制の検討」は明記されないことになった。

 また、道州制担当大臣に就任した佐田氏は兼務が多いこともあるせいか、北海道道州制特区のことのみに触れており、道州制全体の彼のビジョンや姿勢が今のところ全く見えてこない。

 ただ、「道州制ビジョン」は3年以内に取りまとめることにはなっているようなので、しっかり進めてもらいたい。

 幸いなことは、各都道府県が道州制担当大臣の新設で一様に緊張感を持ち始めたことである。

 

 新内閣のなすべきことは多岐に亘るが、道州制の推進は地方を活性化させ、その活力で国を再生させようとする壮大な政策である。このことを強く認識し、中央官僚の強烈な抵抗にくじけることのないよう着実に進めてもらいたい。

 これが実現すれば、安倍晋三の名は確実に日本の歴史に残るでありましょう。