道州制実現推進のために

道州制実現推進委員会 委員長 平岡 昭三

 当道州制実現推進特別委員会では、47都道府県知事に対して、9月15日に下記の提言書を送り、改めて道州制の推進を訴えました。

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全国知事会                                      H.18.9.15.

 道州制特別委員会  各位         生活者主権の会 道州制実現推進委員会 委員長 平岡昭三

    (写)民主党 幹部 各位  

       民主党広報委員会、朝日新聞社 毎日新聞社、読売新聞社 産経新聞社、日本経済新聞社

道州制実現推進のために

(一)新聞報道によれば、貴会の道州制に関する6月の報告書では、道州制を導入する必要性があると推進の姿勢を示したものの、7月の会議では、意見集約は前途多難であり、更に討論を継続する事になったとの事であります。そして、国が本格的地方分権に消極的な現状では、中央に権限が残ったまま単なる都道府県連合に終わる懸念も強い、との事であります。

 そこで私共長年、道州制実現推進運動を続けている者と致しまして、一言皆様に事態打開の方策を、提言させて頂きたいと存じ上げます。

 

(二)皆様のご議論の停滞を解消するためには、そもそも何故道州制が必要であるかという原点に、今一度立ち帰らなければならないと思います。それは今の世の中に、以下の如き諸悪が充満しており、どうしても之を早急に解消しなければならない状態であります。その解消の為には、諸悪発生の原因を究明する必要があります。その原因は、殆ど全て、長年の、過度の、強固な中央集権制により発生しているものである事に、思い至るのであります。

 税金ムダ使い、補助金バラ蒔き、ムダな公共投資、贈収賄、談合、天下り、ヤミ献金、族議員横行、

1千兆円大借金、金権選挙、規制不緩和、官僚統制、集権死守、地方分権不進、政官業癒着、福祉・年金破産、保険料値上げ、増税激増、環境汚染、老後不安、所得格差・地域格差拡大、教育荒廃、詰め込み・虐め・不登校・少年犯罪・没個性教育、産業不活性化、政府系法人民営化不進、情報不開示、将来展望不在、これ等諸悪発生責任の不履行

等等、枚挙に暇がありません。それでは、これ等諸悪の解消はどうすれば可能でありましょうか。自明の理であります。当然この中央集権制を解消し、本格的地方分権である道州制に移行する以外に、方法はないのであります。

 従いまして、道州制と中央集権制とは夫々その対極にあり、全く相反する制度であり、両立しないのであります。又そのように位置づけしなければ、諸悪は絶対に解消しないのであります。皆様はこの本質を充分理解し、「中央集権制を廃止し、道州制に進むのだ」という大前提、大決意でご議論を進めなければならないと思います。

(三)この基本に立って考えた場合、今の与党自民党は本質的に中央集権制に依拠して存立しておりますから、本格的地方分権や道州制に消極的なのは当然であり、簡単には改革できないのであります。従いまして、現政府に真の道州制の実現を要望するというやり方では、到底実現不可能であります。

 与党政府の顔色を見ながら、及び腰で道州制を論じていたのでは、百年河清であり徒に日時を経過するのみであります。その間、国状は刻一刻ジリ貧の一途を辿るばかりであります。一方、政権交代を狙う民主党も、道州制を検討しているようでありますが、本年3月末の同党HPによれば、現在の府県を前提とした中途半端な道州制案であります。こんな事では、中央集権制を覆すような、真の道州制にはなり得ないのであります。与野党がこんな状態では、全く諸悪の解消には遠く、別のやり方を考えねば、検討の意味がないのであります。

 知事の皆様の中には、与野党系の支持基盤をお持ちの方も多いかも知れませんが、目先の任期中の事に拘らず、将来の百年の大計をお考え頂くとすれば、ここにおいてとるべき道は只一つだと思います。

1.各政党の思惑に左右される事なく、都道府県民、生活者、国民全般の立場に立って、自らの地方行政の体験に基づき、最も理想的、現実的且つ具体的道州制案を、自ら立案・作成し世に問うべきであります。そのためには、全都道府県から有能なスタッフ47名を選出し、一定期間一箇所に集め、原案作成に当たらせるべきであります。

2.成案を得ましたならば、之を国民、マスコミ、各政党に開示し、各界の意見を徴すべきであります。そして、関西経済同友会の道州制案の如く、逆マニフェスト(各党に案の採用を要求するもの)として提示すべきであります。与党を含め、各政党が之を採用するか否かは彼等に任せればよいと思います。そして、全ては次ぎの総選挙において、国民の審判に任せればよいでしょう。その為、貴道州制案は、それに間に合うように作成して頂く事が肝要と存じます。

(四)少し立ち入って恐縮ですが、貴案に盛り込まれるべき骨子は、次ぎの如き事かと存じ上げます。

 真の道州制を実現しようとすれば、問題は地方分権問題に止まらず、国政全般に大きな影響が出てまいります。従って、道州制案作成に当たっても、国政全般についての幅広い基本的な考え方を織り込まなければなりません。それは次の通りであります。

1.基礎自治体の整備・強化;基礎自治体のベースである市町村は、3,232から1,821に整備されました。しかしまだまだ不十分であり、更に300程度に整備・強化されるべきでしょう。そして、地域の事はそこで全て処理できるように、税金の収支その他全ての権限を、中央から地域に移譲しなければなりません。

2.道州制;基礎自治体だけでは広域の政治は成り立ちません。全国を十個程に分けた道州には、行政・司法・立法の三権の全てについて、道州に関する限り、そこに相当の権限を与えなければ、中央集権の解消にはなりません。そして、一番大事な事は、確りした道州制の確立によって、それが一種の地域国家となり、経済の活性化、社会の安定、ひいては国民の共生に著しく寄与するものでなければなりません。道州制は又地域格差・所得格差の是正の為にも裨益する事が可能でありましょう。道州と基礎自治体との権限の分け方は弾力的に考え、地域の事は極力自治体に任せ広域の事だけを道州で処理すべきでありましょう。

3.大きな政府の解消;基礎自治体の強化だけでは中央の巨大な官僚機構はなくなりません。外交・防衛以外の中央省庁は殆ど整理・統合・解消し、全国家的業務のみを残し、小さな政府にする事とし、後は道州に移譲しなければ、諸悪や大赤字の解消にはなりません。

4.国会の再編;中央政府組織の改変と同時に重要な事は、国会の再編であります。地域の事は道州に任せ、国会は天下・国家の事のみを議決する事になりますから、当然縮小・再編すべきであります。衆議院は各道州から十名宛、合計百名程度の議員数にすべきでしょう。参議院は道州間の格差是正のための組織に改変する事も考えられます。

5.以上の大改革は当面、現憲法の範囲内で大半実現可能と思われます。不可能なものは、改憲後に回してもよいでしょう。何れにせよ大事な事は、地方分権問題以外の、政治的大テーマである憲法、安保、外交、防衛、経済、環境、福祉、財政、教育、等等の諸問題につきましても、全ての新しい「国会、中央省庁、道州、基礎自治体」に関する大改革を前提に、検討し、結論を得る事が肝要と考えます。

 以上の基本認識は、総括すると、「格差是正と共生」「小さな政府と道州制」「規制緩和と経済活性化による豊かな生活」の三点だと存じます。

(五)結び

 以上の真の道州制の実現の他には、諸悪を解消し、この国をよくする方策はあり得ません。私共は、重ねて申上げます。全国の事を一番熟知し、本格的分権運動の旗手であり、且つ、国会の利害に捉われず、白紙の立場でご検討頂ける知事の皆様におかれましては、是非目先の事に捉われず、国家百年の大計を立てて頂きたいと存じます。皆様の他には、正しい真の道州制を立案できる人はおりません。