道州制について(4)
道州制推進連盟会長 大谷 和夫
5.道州制推進連盟の目指す道州制
5.1 道州制推進連盟の狙い
☆ここでは、地方分権型道州制の推進を目指す道州制推進連盟としての狙いについて具体的に説明する。
@ 基本理念:
☆創造的で生き生きとした安心できる社会の実現
*中央集権のもと、格差の拡大、モラルの低下、事件の増加、国と地方の財政破綻、将来の不安が鬱積している現状を一挙に打破して、未来の明るい社会の実現を道州制によって実現する。
A 基本問題:
☆わが国の内政上緊急に解決すべき基本的な問題は次の3件である。
1)少子高齢化、人口減少社会の到来に対する対応を如何に図るか?
2)社会・経済活動のグローバル化の進展、地域格差の拡大に対処するために、21世紀型システムの構築をいかに図るべきか?
3)既に破綻状況に瀕している国と地方の財政危機を如何にして突破するか?
*これらの基本問題を、明治維新以来の国の形の根本的構造改革と言える地方分権型道州制の実現で解決しようとするものである。
B 戦略的改革:
☆地域主権型行財政システム及び市場競争型経済システムへの変革をはかる。
* 1)現在の行財政システムは先進国で他に例を見ない開発途上国型の中央集権制であるが、これは先進国なみに住民主体の地域主権制に変革する。つまり住民が国にぶら下がるのではなく、住民が地方自治を実現して、国を支える形に変える。
2)現在は官主導経済の比重が高いが、極めて効率が悪く、無駄な投資も多い。このため民主導の経済に転換して、効率的な経済システムに変革する。競争をいやがる向きもあるが、これからの世界に生きて行くには、国際的な各種経済競争に勝たなければ生活水準の大幅な低下は免れないと覚悟する必要がある。
C 具体的改革案:
☆地方分権の徹底、原則民営化の貫徹、中央省庁の大幅統合、道州制の実施を行う。
* 1)国から地方への権限移譲を更に推進し、地方の事は地方で処理できるようにする。又税源体系も転換し、国税中心の税体系から地域税中心の体系に変え、国から地域へ19兆円税源移譲するよう三位一体改革を徹底する。
2)現在半分闇の中にある財政投融資を廃止し、
進行中の国立大学、郵政や各種特殊法人の民
営化を徹底し、グローバル化した21世紀シス
テムの構築を図る。
3)中央集権から地域主権に転換すれば、中央省庁は大幅に削減できる。国の機能を純化すれば、12省庁から5庁へ統廃合が可能である。
4)地方分権の結果、地方自治の受け皿を確立する必要がある。このため現在1800を超える市町村がある
が、これらを合併或いは集合して、自治経営体力のある約300の基礎自治体(便宜上「市」と呼称)とし、
これと呼応して47都道府県を廃止し、基礎自治体の広域連合体として広域行政を担当する12の道州に再
編成する。これを道州制の実施とする。
D 改革の期待すべき結果
☆Aであげられた基本問題の全ての解決をはかる。
*地方公共団体を、自ら考え、自ら問題を解決する地方自治体として、今後の趨勢に対応すると共に、国と地方の歳出を年間50兆円削減して、危殆に瀕していた財政再建を果たし、当面の最大の危機を脱出することが可能となる。
5.2 新しい行財政システムの要点
@ 中央集権から地域主権へ
☆これは明治以来の国の形の大変革である。
* 1)現在先進国の中では唯一日本が遅れて中央集権制をとっているが、国際的にみれば、地域主権がとれず中央集権制をとっているのは開発途上国以下である。
従って、日本の国民はだらしない、と外国では思われている。
2)中央集権では地域は自分の都合の良いようにはできず、すべて国の指示による。反面、こまかい所まで国が面倒を見るし、お金が足りなければ地方交付税や補助金を廻してくれる。従って地域に自立心は芽生えず、国にぶら下がる格好となる。しかしローマ帝国以来、国民がぶら下がれば国はつぶれる、という事実を無視してはいけない。
3)地域が自立して国を支えることによってはじめて国は栄える。地方自治とは、地方のことは地方で最も適切な方法で処理し、財政的にも自立することである。従って地方公共団体から地方自治体に変わるには、民間同様、高度の経営能力を必要とすることを忘れてはいけない。
A 地域主権の3つの原則
☆中央集権の時とは環境条件がまるで変わってくる。
* 1)住民と行政との距離が近くなる。生活行政を行う基礎自治体が、責任と権限のある地方自治体となるので、住民もぼやぼやしていられなくなる。
2)行政の費用は税金で賄われ、これは住民が拠出するものである。従って税金を通して住民は直接地方行政にタッチしており、選択が必要な場合もあり、更にはボランティアとして直接参加する場合もある。
3)地域行政が自己責任となるので、ただ旧来の習慣を守っているだけでは駄目で、時代に適合した経営能力が必要となり、意欲と活力が大事であり、効率の高い経営が必要になってくる。
B 行政の改革
☆生活に密着した行政は「市(基礎自治体)」で行い、それを補う広域行政を市の広域連合自治体である「州」が行い、国は国としてやるべき事のみに機能を純化する。
* 1)現在1800以上ある市町村は、およそ300程度の市(基礎自治体)に編成し、自治体として都道府県から業務の移譲をうける。
2)都道府県は廃止し、基礎自治体の広域連合体として12の道州に再編成し、国から業務の移譲を受けて、広域行政を担当する。
3)国の役割は、国際公共財、国民基盤サービス、ルールの設定・監視、調査研究の4つに純化し、内閣の省府を廃止して5庁制とする。
C 財政の改革
☆地方の自立をはかると共に国と地域をあわせて財政を健全化する。
* 1)国から地域へ、権限の移譲と共に19兆円税源を移譲する。
2)業務の重複や無駄を省き、国と地域で併せて年間50兆円歳出を削減して財政の健全化をはかる。
3)地域の「課税自主権」を確立し、地方交付税や国庫支出金は期限付きで廃止する。