道州制について(5)

道州制推進連盟会長 大谷 和夫

6.地方と国の役割分担と小さな政府

 

6.1 補完性の原則と役割分担

 下図に示すように、住民の生活に密着した行政は、現在の都道府県からも業務の移譲を受けて基礎自治体としての「」が主権をもって取り扱う。更に広域的に連携を要するものは、国からの業務の移譲を受けて市の広域連合体としての「」で扱い、「」の分担は国家としてどうしても必要な四つの機能に純化する。

 これにより明治以来続いてきた、先進国中で一番遅れた中央集権制から、先進国並の地域主権制に転換する。即ち国→都道府県→市町村と縦型に上下関係があった国の形が、市・州・国と横並びに国の形が変わる。そのかわり地方のことは地方で、権限と責任をもって且つ自己負担で行政を遂行してゆく形となり、地方が国を支える形になる。

 

       

         

        

@ 福祉関連

  社会福祉

  自動福祉

  老人福祉(健診、保健)

  保育所

  介護

@ 警察

@ 国際公共財

  国防

  外交(経済協力・通

     商政策を含む)

A 公共事業

  河川(治水、ダム)

  道路、橋

  通信基盤

  空港整備・維持

  港湾整備・維持

  農業・農村整備

  下水道

A 国民基盤サービス

  年金

  医療保険

  雇用保険

  生活保護

  文化財保護

A 消防(含む救急)

B 保健衛生

  伝染病予防、結核対策

  生活廃棄物収集・処理

  医療(病院・救急医療)

  保健所

B 環境保全

  産業廃棄物収集・処理

  旧国有林野事業

  公害対策

B ルール設定・監視

  外国人労働者、出入

   国管理

  検察、刑務所

  全国統一基準・規格

  司法(裁判所)

  ○ 治安維持(日本版FBI)

  ○ 金融システム(含通貨発行)

C 教育文化

  小学校

  中学校

  高等学校

  幼稚園

  図書館

C 災害復旧・危機管理

D 労働・雇用対策

  能力開発、職業安定

  雇用・労働組合対策

 

D まちづくり

  公園

  都市計画

  街路

  住宅

C 調査研究

  高等基礎研究

  全国統計調査

 

E 公害対策

F 戸籍・住民基本台帳

 

 

 

6.2 小さな政府の具体的構想

 地方分権が進み、上述のように基礎自治体である市やその広域連合体である州ができて役割分担が明確になり、地方分権型道州制がスタートすれば、国の政府は思い切り小さくすることができる。

 そこで内閣を構成する基本方針は次の4項目となる。

@ 民営化を進め、地方のことは地方へ任せ、国としては市場主導・行政監視スタイルへ転換する。

A 業務の重複や無駄を省き、効率的な行政を行う。

B 市や州との役割分担から中央政府の機能を4つに純化する。

C 国として総合的かつ迅速な対応のため官邸機能を強化する。

 

 これに基づく国の「5庁制」構想を以下に図示する。

 

○内閣官房

・予算局    ◎法務庁  (全国検察、刑務所、出入国管理)

・政策局    

対外関係庁(通商・外交交渉、経済協力、文化交流など)

 

          ◎歳入庁(主税局・関税局・理財局が母体、国税とファンドの管理)

 

生活環境庁(年金、医療、生活の最低保障、薬品規制、PLなど)

   

◎総合行政庁 a.防衛庁

                                      b.公正取引委員会 (独占排除、談合摘発)

 閣                                  c.金融監視委員会(金融システムの安定維持)

        d.エネルギー管理委員会(石油、石炭、原子力行政)

○内閣法制局                        e.国民教育委員会(義務教育ガイドラインの策定)

f.放送・通信委員会(放送・通信の管理)

○国家安全保障会議                 g.経済諮問委員会(経済状況分析、経済白書、)

h.科学技術基金(科学技術庁が母体)

○州際調整会議                     i.統計調査局(国全体の統計調査・整理と公開)

州間の経済政策・                 j.公安捜査局(日本版FBI)

財政調整の検討機関

 

                                    

                        △行政監視機構

                             行政に関する調査、勧告(第三者機関)

 

 

 

 

7.道州制への再編成案

 

7.1 再編成の基本方針

7.1.1 「市」(基礎自治体)再編の基本方針


 地方分権型道州制で最も重要なのは、地方自治のベースとなる基礎自治体である市の形成を如何に行うかである。全国でおよそ300程度の基礎自治体をつくるために、次の四点を基本方針とする。

 

@ より効率的な行政運営につながる「人口規模」の追求

 現行の市町村の人口規模と1人当たり歳出額の関係を調べると、人口15万人程度になる迄は人口規模が増えるに従って行政経費は低下している。そこで現在の市町村の合併を進めて、人口1535万人程度、都市部では一部4050万人程度の規模とし、その中の中心都市は人口が最低でも1015万人とする。これにより、それぞれの基礎自治体が得意分野に特化して能力を発揮し、競争が活発化して相互の質が高まるというメカニズムが働くことが期待される。

A 「経済的・財政的に自立した」単位

 第二に、基礎自治体を経済的・財政的に自立可能な自治体とすることである。住民生活の核として、自前で生活関連サービスを供給してゆく為には、ある程度の経済力と財政力を有した単位で、国の保護・指導を当てにせず、自主的に地域の運営を行い、独自に税率を決め、必要な政策の意思決定を自由に行うことができなければならない。

B 地域相互の「交流と連携」

 第三に、道路、橋、鉄道などの発達による地域相互の「交流と連携」を重視する。即ち、旧来の狭い行政区画が交流可能圏域の拡大に追いつけず、行政単位と実際の生活単位とのミスマッチが発生しているので、現行の行政単位を超えて地域的な広がりを重視する。但し政令指定都市などの大型都市は現在の行政区域を踏襲してゆくのが妥当と思われる。

C「小選挙区および地域の歴史的つながり」の尊重

 小選挙区については、全国で300区が設定され、国会議員選出の基盤となっているので、基本的には一致することが望ましい。又、本来の地域間の土着的な結び付きや歴史的なつながりも考慮し、新しくつくる基礎自治体が地域性から全くかけ離れたものにならないような工夫が必要である。

 

7.1.2 州編成の基本方針

 市町村を合併して基礎自治体を形成すると、都道府県は中途半端になるので廃止し、基礎自治体の広域連合体として全国で12 程度の州に編成する。北海道は道とし、その他は州とする。

@ 州は2030の市で構成され、人口規模は5002000万人程度とする。

A 州の中心となる州都は、県都とは性格が全く違うが、人口規模は100万人、周辺人口を含めると150200万人となる。

州の端から州都までは、高速道路で1〜1.5時間、州の端から端までは3時間程度の距離となり、新幹線なら1時間程度で移動が可能である。

B 州内には、州都から車で30分〜1時間、高速鉄道で1時間以内の距離に、州と海外を直接結ぶ空港があり、又大型貨物船が寄港できる港も整備されている。

これらが、ヒト、モノ、カネ、情報の交流拠点として機能する。更にこれらと利便性の高い州内交通ネットワークが形成されると、企業誘致が有利になる。

又当然、規制が少なく、税金も安く、効率的な行政運営が行われている所には企業や人が集まり、善政競争が活発化すると考えられる。

 

7.2 再編成の具体例

7.2.1 「市」(基礎自治体)の再編成案 

 全国の市町村を基礎自治体に再編成するには、基本方針に基づいて全国に亘って具体的に区分し、新しい自治体の名称、中心都市、総人口、人口密度、転入−転出/総人口%、1人当たり所得、老年人口率、人件費/総人口、などを把握する必要がある。

 これを具体化するには可成りの調査能力を必要とするので、現在までに結果を公表しているのは、少し古いが下記文献のみと思われる。

       日本再編計画−無税国家への道

       PHP研究所 「無税国家」研究プロジェクト

       斉藤精一郎 責任監修 1996年5月発刊

 これは道州制ではなく、州府制と称しているが、12257府の具体像を示しており、基礎自治体を「市」ではなく、「府」と称している点が違うだけで、考え方は地方分権型道州制と全く同じである。

 基礎自治体の形成について、部分的にはいろいろな意見があるが、大切なことは全国的な形成であり、従って日本再編計画をベースにして、変更する場合には、その理由、範囲、データを附して提案し、大方の賛成を得る必要があると思われる。

 

 

7.2.2 「州」の編成案


 州の編成について、最近では平成18年2月に地方制度調査会が種々の案を出したが、今まで発表されている案の中では、やはり日本再編計画の案が一番妥当であると思う。これに対して、大阪を特別区とするのはやめて関西に編入し、歴史的特異性を考慮して沖縄を九州から外して特別州とするのが道州制推進連盟の案である。以下に州毎の範囲、人口、総生産、歳出額を示す。


 

 

      現都道府県名

人口(万人)

総生産(億円)

歳出額(億円)

 北海道

    562.7

 19,5043

 2,6144

東  北

 青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島

     963.2

 32,4196

   4,4356

北陸信越

 新潟、富山、石川、福井、長野

    773.2

 29,2598

   3,9605

 茨城、栃木、群馬、埼玉

   1,406.8

  46,6922

   4,0795

 千葉、神奈川、山梨、東京都下

   1,981.7

  53,0534*

   7,1491

東京特別

 東京23

     848.3

  83,6303**

   2,6546

東  海

 岐阜、静岡、愛知、三重

   1,502.0

  63,7069

   4,6746

関  西

 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山

   2,089.1

  78,9118

   7,0571

中  国

 鳥取、島根、岡山、広島、山口

     767.3

  28,1375

   3,5030

四  国

 徳島、香川、愛媛、高知

    408.4

  13,3925

  2,1070

九  州

 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島

  1,334.9

  43,4859

  5,3762

沖縄特別

 沖縄

    136.0

    3,5755

     5798

全  国

 

12,756.8

495,7722

  48,1934

 

註)@人口は2005年、総生産は2003年、歳出額は2004年の統計データより。

A総生産で東京都の特別区と都下を区分したデータが見つからぬ為

       *は東京都下を含まず、**は東京都下を含む

 

 

7.3 再編成に関連する問題点

 

7.3.1「市」(基礎自治体)の形成における問題点

 地方分権型道州制で一番住民に近い自治体の形成でいくつかの問題点がある。

@ 府県の境界に跨る基礎自治体の形成

 連盟でも推奨する日本再編計画の案では、現在の都道府県別に基礎自治体を形成しているが、府県の境界を跨いで交流のある地域と基礎自治体を形成したいという希望もあり、そのようなケースも有り得ると思う。しかし基礎自治体としては府県からの業務移譲もあるので、当該府県の了解を得ることは必要である。又そこだけに注目するのではなく、関係府県全般の基礎自治体の形成に支障があってはならない。

A 市町村合併で済むか、府制を考慮すべきか

 市町村合併もかなり進んで全国で1800余になってきた。しかしまだ自立の難しい小規模市町村がかなり残っており、できれば全国で300程度に集約したい。これを現在の市町村合併で実現するのはかなり困難と予想され、日本再編計画にあるように、いくつかの小規模市町村をまとめて「府」とする考え方もある。地方分権化に耐えられる基礎自治体を形成するのに、どちらをとるべきかが問題であるが、早急に決断を要すると思う。


 

7.3.2 「州」の区割りに関する問題点 

 道州制に関して、地方分権とか地方自治の実現というような基本的な概念の理解が無く、素人が口を出しやすいのが区割り問題である。更に中央集権制と混同して州都を狙う動きも見られる。

 

@ 北陸信越地域

 現在衆議院の小選挙区のブロックとなっているが、北陸と信越とそれぞれ独立するには規模が小さく、他方一緒になるには親近感が無く、問題の地域である。更に福井の嶺南地区は関西に編入を希望しており、又長野の南部は南信として三河・遠江地区と一緒になることを希望している。又北陸3県も東海への編入を希望している向きがあるが、地方自治の基本についてどこまで理解しているかが問題である。又新潟市が政令指定都市になるが、北陸信越州の州都を狙う動きがあり、中心から離れているので北陸方面から反発されている。州都は県都とは性格が異なり、ある程度地理的にも州の中心部に近い所が望ましい。

A 中国・四国地域

 かなり前から岡山県を中心に中国と四国と一緒になろうという運動が展開されており、これに対して中国地方と四国地方はそれぞれ別々に州になろうという勢力が強まっているように見える。全国的に見て、沖縄は別にして、四国が人口500万人以下で規模が小さいが、欧州北部の独立小国を見れば、充分自立してやっていける規模だと思われる。

 又中国の山口県が九州と経済的に密接であり、四国の徳島県も関西と密接であるが、州としては、やはり中国州、四国州にまとまるのが望ましいと思われる。

B 関西地域

 日本再編計画では大阪府を関西から抜き出して特別州としているが、連盟案では大阪府も関西に留めている。その結果関西州は唯一人口2000万人を超過してしまった。ただし最近大阪府はあまり元気がなさそうなので関西州に含めたが、東京の向こうを張って大阪特別州を作ることも考えられる。その場合は全国13州となる。

C 東北・九州地域

 東北も九州も南北に長いので、南北に分断する案が地方制度調査会でも提案されている。しかし、現段階では両者ともに南北一体となって州を形成する方向で動いているようにみえる。東北では州都は仙台が適当と思われるが、九州では福岡はやや北に位置しているため、熊本やその他の都市が州都を狙う動きも見られる。しかし最終的には基礎自治体の協議によって州都は決まってくると思われる。

D 関東地域

 関東は人口も多く、総生産も大きいので、一応北関東、南関東、東京特別区に分けたが、北関東の埼玉県は東京とのつながりが多く、南関東は真ん中の東京23区が特別州になると、千葉県と東京都下や神奈川県とのつながりが悪いという問題がある。しかしこの辺は割り切って考えないと、絶対的な区割りはあり得ないと思われる。

 

 

 

8.道州制の政治・財政と期待効果

平成18年秋に出現した安倍新内閣は、道州制担当相も置き、まず地方分権を更に進めると共に、北海道に道州制特区を実現し、3年以内に道州制のビジョンを固めるとしている。又中央集権下の東京一極集中を是正するためにも道州制の導入が必要と言明している。しかしここでは道州制推進連盟として考えている、道州制における政治システム、財政面の検討と財政再建、道州制実現の期待効果について述べることとする。


 

8.1 道州制における政治システム

 6.1で述べた補完性の原則と役割分担を明確にして、「市(基礎自治体)」「州」「国」の機能を明確にする。

 

「市」の機能

1.基礎自治体である各市の長は市長とし、任期6年で公選し、但し連続3選は禁止し、リコール制を設ける。

2.議会は予算、決算の審議、必要条例の制定を行い、議員数は20名、公選、任期4年とする。

3.会計は複式簿記とし、損益と共に資産・負債を明確にし、情報公開で無駄使いをなくす。

4.コミュニティを復活し、住民の意思を尊重すると共に住民の積極的協力を求める。

5.地方公務員のサービス能率向上のため、給与制度、退職金制度、評価制度などを調査し、各市の経営比較を行い、競争によるサービス向上をはかる。

6.現在の3割自治から10割自治に移行するために、初めに全国的な行政研究所を作り、全国標準的な組織、設備、ITシステム、人員配置、歳入、歳出、予算配分など、予め検討して公表し、各市の参考に供すると共に、地方公務員の特別研修制度を設ける。

7.諸外国の自治体の参考とすべき点は随時検討して取り入れる。

 

「州」の機能

1.基礎自治体の広域連合体である各州の長は知事とし、任期6年で公選し、但し連続3選禁止とし、リコール制を設ける。

2.議会は予算、決算、必要条例の制定を行い、議員数は各市(基礎自治体)各1名、公選、任期4年とし、各市の広域連合体として機能させる。

3.会計は市と同様複式簿記とし、情報公開で無駄遣いをなくすと共に、必要に応じ、市相互の財政調整制度を創設する。

4.道州制実現と共に現都道府県は廃止し、現中央省庁の地方部局は役割分担に応じて州に編入する。

5.地方への権限委譲に伴い、公務員、議員の不正行為に対する刑罰は現在より重くし防止を徹底する。

6.地域の自主性を重視した司法制度の在り方は別途検討を行う。

 

「国」の機能

1.国は大学・郵政・特殊法人などの原則民営化を貫徹し、役割分担は4機能に純化する。

2.内閣は、現在の省を全廃し、5庁制とする。

3.州間の財政調整は期間を定めた過渡的なものとし、将来は全廃する。

4.国会は、衆議院は市を中心とする小選挙区300名、参議院は各州から4名の48名とし、半数は3年毎に改選する。但しボランティア精神で待遇は奉仕に近く、但し勝手に辞めることはできないよう罰則を設ける。

5.司法面で憲法裁判所を設ける。基本的法律は全国一律であるが、地裁、高裁は州に移管。

6.議員内閣制から首相公選制への変更、首都機能の移転、巡都制などは道州制と直接関係なく、別途必要に応じて検討する。又連邦制にするには憲法改正を要する。


 

 

8.2 財政面の検討と財政再建

 1996年のPHP研究所「無税国家」研究プロジェクトによる「日本再編計画」は、道州制の骨組みについては尚妥当性を有しているが、財政面では時間的要素から、同じPHP総合研究所「実効ある地域主権」研究プロジェクトの「日本再編計画2010」の方が実効的と思われ、その数字を採用することとしている。しかし道州制の実現が遅れているので、実現の目途が立った時点で、専門家による再検討が必要と考えている。

 

1.税源体系の転換

 地域主権を実現するには国から地方へ権限と共に税源の移譲が必要であり、その額は日本再編計画2010によれば19兆円が妥当と思われる。

 更に各地域の課税自主権と税率決定権を認め、住民に税率と政策メニューを提示し、住民の選択で各地域が歳入・歳出を独自に決定できる構造へと転換を要する。

 

2.現行の地方交付税の廃止と時限的な水平的財政調整制度の実施

地方の自助努力を阻害し、放漫な支出を促す現行の地方交付税は廃止し、最初の5年間は客観的指標に基づいた新財政調整制度を設け、後半5年間は自立した地方政府への円滑な移行に向け、州間の協議に基づく水平的財政調整制度を創設する。

 

3.経済の活性化、歳出の大幅削減による財政再建

 現在の日本は長期債務残高のGDP比が140%を超えて、先進国中最悪で財政破綻状況とも言われているが、これを安易な増税によるのではなく、大幅な民営化と規制改革で民間経済の活性化を促進し、他方地方分権化による行政改革と道州制への再編成で、大幅な国と地方の歳出削減が可能となり、それにより財政再建は可能である。

 即ち合併効果で14.6兆円、役割再編効果で35.9兆円(国:16.3兆円、地方:19.6兆円)合計すると国と地方を併せて50.5兆円毎年削減できる。

 従って、道州制を断行すれば、50年後には長期債務残高のGDP比が100%を切り、借金まみれの財政破綻状況からの脱却が可能となり、増税せずに財政破綻の悪夢から逃れられることとなる。

 

4.21世紀型財政の展望

財政とは本来政治システムと経済システム及び社会システムを結ぶものである。今から約100年前の産業革命で、現在の現金給付による社会的セーフティ・ネット及び全国規模の物的インフラストラクチュアの整備が財政の主目標となった。

 しかし、今や21世紀の知識社会の出現を前にして、現物による社会テクセーフティ・ネットだけではなく、教育主体の人的インフラストラクチュアが必要になってきた。

 それに合わせて行政面での対社会施策の質的内容転換が必要になってきたと思われる。

 つまり、財政の経済的危機だけでなく、社会的危機に対しても適切に対処することにより、安全で、安心できる社会を作らなければならなくなってきたと考える。

 

 

8.3 道州制実現の期待効果


 明治以来の中央集権制を廃し、民主主義国家の主権者である国民の力で、地方分権型道州制を実現すれば、次のような明るい未来を開くことが可能となる。

 

1.中央官庁の解体で、政官業の癒着がなくなり、汚職や談合もなくなる。

官僚主導から民間主導となり、諸々の規制が緩和・撤廃され、各方面の既得権が解消されるからである。但し州や市の自治体に於いては住民の監視を強め、汚職や談合に対しては厳罰を課して絶滅をはかる必要もある。

 

2.小さな政府の実現で無駄をなくし、増税しないでも国の借金を急激に減らすことが可能となる。

民間で出来ることは民間へ、地方で出来ることは地方へ任せると、国で行う仕事が少なくなるので、無駄な支出を大幅に減らすことができるからである。

 

3.地方が自立し、特色を生かして競争することにより、新しい産業が生まれ、経済も元気になって行く。

 各市、各州の地場産業や地域経済が活性化してくると、個人レベルでも、雇用が増大し、仕事量や収入も増え、個人消費も活発になる好循環が始まる。

現在、世界で1人当たり国民総生産の上位は、欧州北部の独立小国が占めているが、いずれも人口や面積は日本の市又は州の規模で、どこからの援助もなく、必死の努力で独立を達成すると共に、新しい産業の導入・育成に成功し、今日の栄華を獲得している。これらは「やる気があればできる」好例であり、他山の石として大いに参考となる。

 

4.特色あるきめ細かな地域行政の追求で、住み易い、暮らし易い地域が生まれる。

コミュニティを再生し、コミュニティを介して、地域独特の、住民と一体となった行政で、税制、教育、住宅、医療、高齢化などで成果があがると、住み易さ、暮らし易さを狙って、大都市からも人口の移動が予想される。又自治体の公務員や議員の税金の無駄遣いも住民の力でなくすことは出来るし、しなければならない。

 

5.主権者である国民がこぞって立ち上がり、道州制・地方主権を実現すれば、本来の目的  である、創造的で生き生きとした安心できる社会、を実現することができる。

破局・破産寸前の日本を再生できるばかりでなく、現在は欧州の極小国にしか存在しないが、税金「0」の無税国家の実現も、将来必ずしも夢とは言えなくなると思われる。


                                                      以  上