生活者主権の会生活者通信2007年03月号/01頁




生活者通信【3月号】

第139号・2007年03月01日発行   ホームページ・アドレス http://www.seikatsusha.org/
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都知事選をマニフェスト選挙に!

生活者主権の会代表 小俣一郎

 民主党の都知事候補選びが難航している。浅野前
宮城県知事にも断られ、2月20日現在見通しが立っ
ていない、とのことである。
 私は今回の都知事選挙では、ぜひしっかりとした
マニフェスト選挙を行って欲しいと思っている。そ
の意味でも、浅野さんであればきっちりとしたマニ
フェストを作るだろうし、対抗上、石原さんも必ず
用意するだろうと思ったので、不出馬は非常に残念
である。
 このような有力対抗馬不在の状況で、果して石原
さんはマニフェストを作るだろうか。

 1月に行われた宮崎県知事選挙では、3人の有力
候補者のうち、当選した東国原知事のみが作成し、
「たけし軍団を連れて来るのかと思ったら、来たの
はマニフェストがだった」と話題になり、それは当
選の大きな要因となった。いまや首長選挙にマニフ
ェストは欠かせない存在となりつつある。
 しかし、日本の地方自治体選挙の中で、本来の意
味でのマニフェストを作ることができるのは、今は
東京都知事選挙のみである。なぜなら、他の都道府
県は多かれ少なかれ財政的に国に依存しているので、
厳密に言えば、財源を決めた約束をすることができ
ないからだ。
 『マニフェスト』とは、「数値目標、期限、財源、 
工程表などを具体的に示す、事後検証の可能な公約」
のことである。国から地方交付税を受けていない、
財政的に自立している東京都の、その知事選挙の候
補者にしか、真の意味でのローカルマニフェストは
作れないのである。

 東京都は昨年の12月に、「10年後の東京〜東京が
変わる」を策定した。石原さんはこれを基に公約を
作成するのであろうが、それは「10年後」とあるよ
うに、10年という非常に大きなくくりではある程度
数値目標も示されているが、より具体的な期限とか、
それをどのような工程で行うかといったことは書か
れてはいない。
 例えば環境問題については、世界に先んじた「カ
ーボンマイナス東京10年プロジェクト」を推進する、
とある。2020年までに2000年比25%のCO2 排出
削減を目標にするとあるが、そこには「これまでの
歩み」として、東京都は現在2010年までにCO2 等
の温室効果ガス排出量を1990年比6%削減すること
を目標に取り組んでいるが、十分に進んでおらず、
根本的な対応を迫られている、とも書かれている。
つまり現状は遅々として進んでいないのである。
 であれば、その目標を実現させるためにはかなり
の努力が当然必要となる。それを10数年先といった
漠然とした数値目標で達成できるとは思えない。自
らの意思を貫くためにも、また職員や都民をその方
向に引っ張っていくためにも、2年後にはどのくら
い、4年後にはどのくらいと削減目標を数値で示し、
そのためには具体的に何をいつの段階で行うのかを
明らかにし、選挙でそれを都民に選択させる必要が
ある。
 元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の映画「不都合
な真実」が話題を呼んでいるが、温暖化による海面
の上昇は東京湾を埋め立てて広げられてきた東京を
直撃する。その対策は東京自身のためでもある。国
の対策が遅々として進んでいない現状において、東
京が率先することは、まさしく「東京から日本を変
える」ことになる。しかし、それを絵に描いた餅に
しないためには、10年先を見据えた上で、任期4年
の間に具体的に何を行うのか、選挙戦において数値
目標を含めて明確にすることが必要である。
 また、近々の大問題となるのが、インフラの老朽
化である。1月19日に北見市でガス漏れで3人の方
が犠牲になる事故があった。その後NHKで「しの
び寄る老朽化の危機〜多発するインフラ事故〜」と
いう番組が放送されたが、東京都内で昨年、下水道
の老朽化のために道路の陥落が約1000件も発生して
いるとのことであった。また首都高速道路には一万
箇所のひびが見つかり、懸命に補修しているという。
2016年のオリンピック開催を単に否定するわけでは
ないが、老朽化してしまった「1964年の東京オリン
ピックの遺産」対策の方が先だろう。

 2月21日、公職選挙法改正案が成立した。ついに
地方の首長選挙でも選挙期間中にマニフェストが配
布できるようになった(ただし、A4版のビラでは
あるが)。その意味でも、今度の都知事選挙では、
真のマニフェスト選挙が行われなければならない。
 完全に出遅れた民主党は、党内から候補を擁立す
るらしいが、噂された人々のなかでは菅代表代行以
外の方の知名度は、石原さんとは雲泥の差である。
その菅さんが出ない以上、その差を乗り越えるため
には、石原候補よりも完成度の高い、説得力のある
マニフェストを作りあげ、それを宣伝しまくるしか
ない。
 幸い、2年前の東京都議会議員選挙では民主党は
「東京マニフェスト2005」を作成して善戦して
いる。また、同じく2年前の小平市長選挙、西東京
市長選挙では、民主党の元都議会議員だった候補者
が、共にマニフェストを掲げて現職の市長と戦い、
勝利している。
 民主党の東京都所属の議員は一丸となって、勝利
できるマニフェストを作成しなければならない。そ
して石原候補にもその勝負に真っ向から立ち向かっ
て欲しい。
 数値目標、期限、財源、工程表などが具体的に示
された、事後検証の可能な公約、つまり、真のマニ
フェストが両陣営で作成され、東京でマニフェスト
選挙ができたとき、『公約は選挙民との契約』とい
う新しい文化が、さらに確固たる一歩を踏み出すこ
とになる。








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