この1ヶ月で年金問題が一気に表面化し、安倍首
相が仕掛けた憲法改正問題の争点化は完全に弾き飛
ばされてしまった。劇的な変化である。
今回の「消えた年金」問題は、平成維新の会の頃
からの我々の仲間である民主党の長妻昭衆議院議員
が1年も前から取り組んできた問題で、あきらめず
に追求を続け、ついに政府・社会保険庁の厚い壁に
穴をあけ、それを明らかにした。
5月末になって、内閣支持率の低下に焦った政府
与党は慌てて対策を打ち出したが、場当たり的で国
民の支持を得るには至らず、支持率は上がってこな
い。そこで安倍首相は年金関連法案等を通すためと
して国会の会期を延期し、参議院選挙の日程を1週
間遅らせるという異例の決断をした。
しかし、この問題は昨日今日わかった問題ではな
い。新聞報道によると安倍首相も昨年12月の段階で
はこの問題を認識していたという。ならばなぜその
ときに対処しなかったのか。もしそのときに適切に
対処していれば、今回のように慌てて対策案を出し、
衆議院で強行採決をするような愚かなことはしなく
ても済んだわけである。しかも安倍首相はかつて自
民党の社会部会長も務めた厚労族の重鎮である。
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今回の年金問題で改めてわかったことは、やはり
政権の交代が必要だ、ということである。
先の総選挙で自民党は変わったと当時の小泉自民
党総裁は大見得を切った。しかし自民党が本質的に
は変わっていないということを今回の件は象徴的に
示している。もし小泉改革で自民党が本当に変わっ
ていたのであれば、長妻さんが追求する前に自らそ
の問題点を明らかにできたのではないか。少なくと
も、半年前に認識した段階では対策を講じる方向に
動くことができたはずである。
もし、長妻さんや民主党にパワーがなく、政府・
官僚の厚い壁に穴をあけることができていなかった
ら、多くの国民は年金のいい加減さをいまだに知ら
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なかったわけで、この問題は先延ばしにされていた
わけである。考えるだけでぞっとする話である。
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今回自民党は、当初、基礎年金番号設計時に厚生
大臣であった菅直人民主党代表代行に責任を転嫁し
ようとした。しかし批判を受けて、今では前面には
出してはいない。
ところで、この菅厚生大臣という言葉を聞いて年
金を思い出す人がどのくらいいるだろうか。菅厚相
といえば、年金ではなく、やはり「薬害エイズ問題」
である。
菅さんは厚生大臣就任早々、厚生省に強力な指導
力を発揮し、資料を公開させた。そして国の責任を
認め、被害者・遺族に謝罪をし、和解を成立させた。
これによりその名は一躍有名になったわけである。
ではなぜ菅さんにそれが可能であったか。もちろ
ん個人的な資質もあっただろうが、自民党員でなく、
過去のしがらみがなかったこともその大きな理由で
あろう。それゆえにそれまでの厚生行政を覆すこと
ができたのである。
もしいま、柳沢厚労相ではなく、菅厚労相であっ
たならば、この問題に対する対処はどのようになっ
ていたであろうか。政府はいまだに正確な資料を公
表していないが、菅厚労相であれば、半年前の段階
で厚労省、社会保険庁に資料を出させ、膿みを出す
方向に舵を切ったのではないだろうか。
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戦後ほぼ一貫して与党であった自民党は、与党で
あるがゆえに、過去のしがらみに囚われる。自民党
には、自ら作り上げてきたシステムのひずみを自ら
の力で積極的に解明し、改善することはやはり無理
のようである。
戦後の「自民党政治」の負の遺産を一掃するため
にも、日本の政治が新しい段階に進むためにも、や
はり早期の政権交代が不可欠である。
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