「国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるた
めに、これまでの生産者・供給者の立場から作ら
れた法律、制度、さらには行政や政治を国民本位
のものに改めなければなりません。・・・
今年を『生活者や消費者が主役となる社会』へ
向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を
見直していきます。・・・」
今国会の福田首相の施政方針演説の一節である。
福田さんは施政方針演説で5つの基本方針を掲
げ、その第1を「国民本位の行財政への転換」と
し、このような演説を行った。
この言葉自体は、「当会は次の総選挙で福田さ
んを推薦しなければいけないね」といった冗談が
出るほど『生活者主権』を掲げる当会の年来の主
張と重なるものである。
福田さんは、年頭所感や年頭記者会見でも同様
の発言をしており、その方向に進めようとはして
ますよ、という表明ではあろう。
しかし、それが福田さんの強い意思から出たも
のとは思えない。もし、心からそのように思って
いたのであれば、昨年の12月の年金発言や薬害C
型肝炎に対する対応はまったく違っていたものに
なっていたはずである。支持率の急落に危機感を
抱き、回りからもせき立てられて、慌てて方向転
換したとしか思えない。
施政方針演説をあざ笑うかのようにその後「ね
んきん特別便」の不備が明らかになったが、もし
「生活者が主役」と常々思っていたのであれば、
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あのような不親切なものを送らせるはずがない。
ましてや「助言禁止マニュアル」なるものがまか
り通るわけがない。トップにその意識が弱いから、
部下もそれを軽視するのである。
この「ねんきん特別便」は新たな経費をかけて
再発送するのだそうだ。しかし最初からしっかり
とやっていればそのようなムダな費用は使わなく
て済んだわけで、少しでも工夫して支出を切り詰
めようとする生活者の感覚がないからこのような
ことになるのである。
そして消費者重視の目玉として、新たに消費者
行政を統一的・一元的に推進するための権限を持
たせる強い組織を発足させ、専任の大臣を置くの
だそうだ。それだけを聞けばいいことかと錯覚す
るが、他の省庁が自らの権益を手放すのであろう
か。それが本当に力を発揮するのであろうか。
当会は、「平成維新の会」の頃より「道州制」
の実現を目指しており、今期の活動方針にも2番
目に「道州制の実現を推進する」を掲げているが、
真に生活者が主役となるためには、道州制のよう
な大改革を行い、国と地方との役割分担を明確に
し、さらに必要な権限や財源をより生活者に近い
ところに移す必要がある。それを行わないままの
新組織は、単なる中央省庁の「焼け太り」に終わ
るのではないだろうか。
新年を迎え、にわかに「生活者が主役」と打ち
上げた福田首相。さてさて、具体的にはどのよう
な形でそれを見せてくれるのであろうか。
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