「地域主権型道州制」を読んで

道州制実現推進委員会 委員長 平岡 昭三


(一)本書(「地域主権型道州制」江口克彦PHP研究所代表取締役著、07.11.29.PHP研究所発行、700円)は、之までの道州制論の中では、最もよくできていると思います。それが何故必要なのか、それは具体的にどんな形になるのか、それによって起こる問題点をどう解決するのか、等々を色んな立場から、簡明かつ詳細に論じており、大変納得させられるものであります。

 それは、国のあり方を根本的に変えようという、極めて重要な提言であります。よって、本書は国民に遍く読んで貰いたいと思うのであります。因みに同氏は「地域主権論」や「脱中央集権国家論」等多数の著書があり、本書はその集大成と思はれます。又、「内閣官房道州制ビジョン懇談会座長」他多数の政府関係機関の各委員も歴任しており、本論のエキスパートでもあります。尚、同氏は、本道州制実現推進委員会の会議にも出席し、講義をしてくれた事もあります。

 

(二)只、本書について欲を言えば、次の二点の説明があれば、更に説得力が増した事と思うのであります。

1.本提言は、国の根本的変革でありますから、当然憲法との関係はどうなるかという点があります。現行憲法の儘で実現出来るというのか、又は改憲しなければ、実現出来ない点があるとすれば、それはどの点なのか、或いはそれらは今後の議論に任すというのか、等であります。

2.国民の多くは、マスコミから諸悪の事例を、数多く聞かされているにも拘らず、それが中央集権制の故なのか、余りピンと来ていないか、或いは中央集権制による政官業の癒着に基づく既得権のメリットを、自らも亦享受していると錯覚し ているか、のどちらかであろうかと思うのであります。それ故に、中央集権制を急いで変革しようとは考えないのであります。そしてそれ故に、道州制論に本気に耳を傾けなのであります。

之にはマスコミにも責任があります。マスコミも亦、中央集権制と東京一極集中制による既得権に胡坐をかいており、本気で道州制改革実現の推進を図ろうとは、していないのであります。

そこで、その辺をもっと噛み砕いて説明すれば、説得力がいや増すのではないかと言う点であります。この説明こそ、本提案が効果を挙げうるかどうかの最重要点であります。その点、筆者は政府の各種委員をしておられるので、遠慮してか、政官業の癒着による諸悪の例示が、若干少ないように思います。

政治・経済・社会・文化・教育、等全ての面に渉り、癒着・天下り・談合・血税濫費・大借金、等をもっと突っ込んで抉るとか、諸悪の悪例を百例位挙げ、それが全て中央集権制に起因する事及び、中央集権制を打破し、変わりに道州制を樹立すれば、それらの百例は夫々かくのごとく解決するという説明を、もっと強調すべきであります。又、既得権と生活者自体との利害得失も、解明し説明すべきでありましょう。例えば、サラリーマンの属する会社が、政財界依りの立場だから、自分も既得権を得ていると思い、中央集権制維持に組する、と言ったナンセンスな考えを正す事も大切であります。

要するに、そこまで踏み込んで説明しなければ、平穏無事を望む、旧態依然たる国民の頭を、切り替えさせるのは難しいと思うのであります。

 

(三)何れにせよ、本書は少なくとも、本会会員には全員、必読の書であると存じ、一論を提示する次第であります。