人工林の間伐を急げ
「雨が降ってもいないのに、山が突然崩れていく」それは衝撃的な映像だった。
昨年12月2日のサンデープロジェクトの「限界集落@〜国土崩壊を止められるか〜」という特集の中での映像で、見られた方も多かったのではないかと思う。森林の荒廃が進んでいるとは聞いていたが、ここまで進んでいるのかと、驚きを超えて、危機感を抱かせる映像だった。
原因は、人工林の間伐を行っていなかったため下草が生えず、土が極度に乾燥し、保水力が低下したためではないか、とのことであった。
場所は2006年3月の
さらに、それとは別に、2004年奈良県旧
日本は国土の67%が森林で、世界有数の森林大国である。その約4割が人工林だが、木材価格下落のため林業が廃れてしまい、その内の約8割が放置状態にあるという。計算すればその面積は何と国土の約2割である。もし、いたるところで山の崩壊が始まったらそれこそ手がつけられなくなるのではないか。
近年、地球温暖化の影響で、上陸する台風の数が増え、しかも大型化している。それだけでなく巨大低気圧による大雨等の被害も増えている。この傾向は今後強まることはあっても弱くなることはないだろう。台風がくれば、まともな森林であっても崩れることがある。もし地盤が弱くなっている山を直撃すれば・・・。山が崩れれば、川が、田畑が、そして海までも汚れていく。早急の手当てが必要である。
地盤が脆弱になったのは、間伐等の手入れを行わないことが大きな原因である。ということは、それを行えばその危険性は間違いなく減るということでもある。ならば、まずそこに集中して予算をつけるべきである。日本の土壌は豊かである。間伐を行えば下草が生え、木もより根が張ってその森林の保水力は各段に高くなるはずである。
災害が発生した場合、国も地方もそれを放置することはできない。後追いで災害の復旧を繰り返すだけでは支出は雪だるま式に膨らんでしまう。しかし、間伐を急げば、後は自然の力で間違いなく改善していくのである。もちろん、それなりの時間が必要にはなるが。
いまガソリン税の暫定税率が議論になっているが、政府・与党はここにきて、暫定税率延長を正当化するために、「環境のため」という論陣を張り出した。ならば、「暫定」などといういい加減なことはやめ、『環境税』に全面的に切替えるべきではないのか。それを財源に間伐などの森林整備を行い、さらには荒れた農地の復興をも進めるのである。
価格が高ければ確かにガソリンの消費は控えめになるだろうし、自動車によって排出されるCO2をより整備された森林でより多く吸収することで、間接的にCO2の排出量削減にもつながる。わが国は、京都議定書への取り組みが大幅に遅れており、それを取り戻すためにも、環境税のような大胆な対策が必要である。
地方には道路がまだ必要だという声もあるが、現存する道路がガタガタになってしまっては元も子もない。もちろん予算があれば間伐も新しい道路の整備もどちらも行えばよい。しかしいまはAもBもという時代ではなく、AかBかを選択しなければならない時代である。いや、A・B・Cの内、1つしか選べないといった時代になりつつある。当然、優先順位の高いものから、重要度の高いものから選択していかなければならない。
番組では、比較して同じ高知県の旧
道路を作るという仕事でなくても、間伐作業、森林整備という形でも仕事は発生する。環境保全に関わる仕事は当然地方がその担い手になるのである。林業を復活させ、農林業を中心にその関連事業を成長させる方向に舵を切替えた方が地方経済はより発展するのではないか。
もちろん、間伐を優先しながら、並行的に必要な新しい道路を作ることも否定はしない。しかし、間伐を怠り、いたるところで山が崩れだしたら、その被害は地方に発生するのである。それこそ地方の生活基盤自体が崩壊してしまうだろう。
この森林の疲弊は国の失政から起こったことであり、国はその責任を取る必要がある。よって国はその予算を地方に回さなければならない。しかし、間伐事業の主体には、あくまでもその土地土地をよく知っている各市町村等がなるべきである。つまり金は出せ、口は出すなということである。
間伐の方法にも、ただ木を切るだけではなく、木を枯らすことによって行う方法等もあるという。その地方が主体的に、その土地にあった方法で間伐を行うべきである。そしてそれは、地方政治の活性化にもつながっていくはずである。