2次循環型社会形成推進基本計画(案)に対するパブリックコメント

埼玉県所沢市 河登 一郎

平成15年に閣議決定されたいわゆる「循環基本計画」が今回見直され、3月末に閣議決定されました。同計画は、循環型社会基本法に基いて「持続可能な循環型社会」を実現するためにとるべき政策の方向や目標を策定するものです。環境省では、閣議決定を前に同計画案に対するパブリックコメントを募集しました。本稿はそれに応募した私見です。

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環境省 大臣官房 廃棄物リサイクル対策部

                         企画課 循環型社会推進室 殿                         平成20310

内容はよく整理されていると思います。

問題は実効性です。いくつかのポイントを指摘します。個々の項目ではなく、構想全体に対する意見です。

1.環境倫理面での対応は重要ですが、効果には限界:

環境倫理・環境教育・モッタイナイ精神の啓蒙は大変重要ですが、現実問題としての実効性に大きな限界があることは残念ながら認めざるを得ません。

2.良貨が悪貨を駆逐する仕組みが不可欠:

環境問題に関心の高い(経営的にも余裕のある)一部優良企業が立派な活動をしておられますが、それだけでは不充分です。「本音ではコストを掛けたくないが、社会性を考慮して必要最小限の対応をしておこう」がベースでは、環境対策は本格化しません。環境対策を軽視する企業がコスト競争上有利になる=「悪貨が良貨を駆逐する」結果を招来し、社会全体としての普及には限界があります。「この制度を遵守する方が企業にとって有利」である制度ができれば大多数の産業・企業が本気で環境対策に取り組むことになります。社会全体として「良貨が悪貨を駆逐する」システムです。

3.精緻な仕組みは監視がネック:

本計画()のような精緻な仕組みを作ることは、一見良案のように見えますが、逆効果の心配もあります。動脈経済(商品が消費者の手許に届くまで)の場合と異なり、静脈経済(商品が消費された後、廃棄物として最終処分されるまで)では価格メカニズムが働かないことが多いため、多くの場面できめ細かい監視やチェックが不可欠になります。それを全部行政が対応することは経費的にも物理的にも不可能なため、NPOなどへの委託が必要になりますが、それにも限界があります。ここでもまた「悪貨が良貨を駆逐する」結果を招来します。

4.EPR:拡大生産者責任」の重要性:

上記諸点を考慮した決定的に重要な仕組みがEPRであることを強調しすぎることはないと思います。動脈経済に関する限り、自由な市場と公正な競争を通じた価格メカニズムが最も効率的な制度ですが、静脈経済では多くの場合価格メカニズムが働きません。放任すれば(例えば)不法投棄が激増します。この場面で最も効率的な制度がEPRです。消費後の廃棄コストをまず生産者に負担させることによって競争原理が働き社会全体として最も効率的且つ公正な廃棄物対策が可能となります。具体例はいくらでもありますが、当審議会には説明するまでもないでしょう。

5.PERの問題点と対応:

EPRにも問題はあります。以下4点について簡単に触れますが、いずれも対応可能またはEPR以外の制度と比べればはるかに害は少ないと判断します。

(1)  一部の上流企業に過大な負担が(一時的に)かかること:

もともとEPRとはそういう制度ですからこれは事実ですが、産業界が「だから反対」では視野が狭いといわざるを得ません。産業界には、目先のコスト負担だけの問題意識を超える見識を備えた人材も多いと信じています。国(世界)の制度として確立の上、一律に義務付ければ同業各社間の競争条件は同一ですから、より低いコストで環境により優しい商品とサービスを提供できる企業が生き残り、成長する;出来ない企業は淘汰される;社会全体として「最小のコストで最大の効果」が実現する制度です。

(2)  国際競争力:

これも問題です。対策としては輸出入の時点で管理するしかないでしょうが、反面、GATT/FTAなど自由化の流れに逆行する面は否定できません。だからこそ、国連やOECDなどの場を活用し、地球規模の問題として推進すべき重要課題です。

(3)  監視の必要性は残るが、簡素化可能:

静脈経済である以上、監視/チェックの必要性は残ります。しかし、EPRに徹した骨太の(あまり精緻でない)仕組みの下であれば、監視すべき分野が比較的絞られますので、経済のあらゆる場面でチェックが必要な精緻な仕組みに比べて問題点と社会的コストは大幅に簡素化可能と考えます。NPOとの協働は重要な手段として検討に値します。

(4)  経済活動にマイナスか? 価値観の転換が必要です:

EPRを徹底すると一部の上流産業にコストが集中するため、消費減につながって経済成長にマイナスになるとの根深い見方があります。この点こそ、まさに発想の転換が不可欠な分野です。大量生産・大量消費社会はもはや「持続可能ではない」のですから、GNPの内容を「物量をより多く」から「環境に より優しい商品とサービス」に価値観を切り替えることが何より大切です。

以上