江口克彦著「地域主権型道州制」の要旨(4)

道州制実現推進委員会副委員長 岡部 俊雄

生活者通信2008年2月号でPHP研究所江口克彦氏著の「地域主権型道州制」について、道州制実現推進委員会の平岡委員長が感想を述べました。道州制実現の推進は当会の二大目標の一つであり、また、この本の内容は我々が持っている問題意識や、考えていることとほぼ同じです。皆様にはこの本を是非ご一読頂きたいと思いますが、お忙しい方のためにその要旨を10回くらいの予定で連載しています。

 

(4)なぜ東京だけが繁栄するのか

世界の花の都・東京

 「地域主権型道州制」の議論を進めていくまえに、日本がいまいったいどのような国になっているのか、少し振り返ってみたい。

 東京には世界中のモノが集まっている。東京にいれば、世界中のトップブランド商品がいつでも手に入るし、世界各国の料理も堪能できる。美術や芸術の世界もまた同じである。

 

集中するヒト・モノ・カネ・情報

 このように世界のトップブランドやレストラン、文化芸術が東京に集まる理由は東京が非常に大きなマーケットだからだろう。

 東京には日本全人口の10%に当たる1,260万人が住んでいる。その人口はギリシャ、ポルトガル、ベルギーをしのいでいる。日本総面積のわずか0.5%の東京に日本人の10人に1人が住んでいることになる。

 そして、全人口の27%が東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)に集中し、さらに首都圏(東京圏、茨城、栃木、群馬、山梨)では、全人口の3分の1に当たる約4,240万人が居住している。4,240万人といえばカナダ、アルゼンチン、スペインの人口より多く、韓国の人口に届きそうな数字である。

 日本は現在、少子高齢化が進み、人口はすでにピークを通り越して減少の方向に向かっており、ほとんどの道府県では人口が減少している。にもかかわらず、東京圏・首都圏の人口だけ、とくに東京の人口は毎年確実に増え続けている。

 東京に人口が集まる理由の一つは、東京に多くの企業が、そして大会社の本社が集中していることである。

 情報発信の役割を持つテレビ・ラジオ・新聞・出版などのマスメディアも然りである。

 大学の数も東京やその隣接県が他の地域を圧倒的に凌駕している。

 これほどまでに諸機能が一極集中している国は他に例を見ない。

 

東京タワーから見える高層ビルの森

 なぜ東京に世界のブランドやレストラン、文化芸術などが集まってくるのかといえば、このように日本の基幹ビジネスや高等教育の場が東京に集中し、さらにそこから日本各地に向けて情報発信がなされるとすれば、必然的に人が集まり、またそれが新たなチャンスを生み、人が集まってくる。あらゆるものが雪だるま式に東京に集中し、さらにそれを求めて世界からまたさまざまなものが東京に集まってくるのである。

 バブルが崩壊し、日本が長い不況のトンネルに入っていたときでも、東京への一極集中は続き、景気が回復基調になってからは東京はビルの建設ラッシュを迎え、高層ビルの森が増え続けている。東京タワーに上ってみるとその景色がよくわかる。

 東京を中心とする地域は今日もっとも元気で活気のある、景気のいい地域になっている。しかし、東京にヒト・モノ・カネ・情報が極端に集まる分、日本各地は衰退し、低迷している。つまり、「東京栄えて、地方は貧す」という、いわゆる地域格差が生じているのである。

 

地方はどこも寂れるばかり

 東京にビジネスや人、そしてお金や情報が集中することによって、地方は逆にビジネスも人も、お金も東京に吸い取られてしまっている。地方はまさに東京とは逆の悪循環現象が起きているのである。

 このまま中央集権体制を続けていけば、地域格差は確実に拡大し、あと20年もすれば人口の50%が東京に集中し、それ以外の地域は、たとえ現在は政令指定都市といえども超過疎・超高齢化都市になってしまうだろう。