「第15回全国オンブズマン千葉大会」に参加して
神奈川県川崎市 江口 武正
8月30日から31日にかけて千葉市の「ホテルグリーンタワー千葉」で開催されたオンブズマン大会に参加した。大会概要と私が個人的に興味深かった内容に絞り報告する。
1.大会概要
大会テーマは「オンブズがチェンジさせっぺ地方議会」と銘打ち、「議会改革って何だ」をテーマに全国議会アンケート調査が報告され、新藤宗幸千葉大教授の記念講演が「住民自治に応える地方議会とは」と題して行なわれたように議会改革が大会の中心テーマであった。
全体会は上記に加え、恒例の包括外部監査の通信簿結果による「オンブズマン大賞」の表彰が行なわれた。
その後の分科会は「談合・入札改革」「公共事業」「議会改革」「監査制度」「初めての市民オンブズマン」のテーマ別に5会場で行なわれた。
18時より懇親会が行なわれ1日目が終了した。
第2日目は全体会として行なわれ、分科会の報告、各地からの報告があり、大会宣言が承認された。
次回大会は岡山県で開催されるとの報告があり、大会が終了した。
400名強の参加者があり内容も充実したものであり成功裡に開催されたと考える。
2.新藤教授記念講演
議会事務局の強化(議長権限に係わらず、実質、首長が事務局人事を行なっているのが現状であり嘆かわしい)、通年の議会開催、政務調査費を申請主義に変更すべき、議場デザイン(円形テーブル、平場での対等性確保)等示唆にとんだ講演であった。
一般に議員活動において議員の立法活動の有無に関心が高いが、議員スタッフが少なく又それほど優秀ではない議員に立法を期待するのはそもそも酷であり、 行政側から出される議案につき充分に内容を把握・検討し問題点を指摘し、対案を提案する等の改善に結びつける努力が地方議会議員にはまずは必要だとの指摘は現状の議員のレベルを考えてみると 同意できる考え方だと思われる。
特に、講演の直前に発表された「議会改革って何だ」の市民オンブズマンのアンケート調査において議員に自治体から支払われる費用と議員が提出する議員立法の数で評価していただけに問題点が明快にクローズアップされてしまった。(但し、数字的に把握できるアンケート項目が限定されており、オンブズマン側に同情すべき点はある)
3.分科会(議会改革)
川崎市議会議員、神奈川県会議員に対し政務調査費の返還を求め、監査請求・住民訴訟を行なっている関係もあり分科会は議会改革に出席した。情報公開、費用弁償、政務調査費、傍聴・陳情、と多岐に渡る内容を網羅した為、ここの問題を深める議論には達しなかった。
政務調査費については政務調査費の返還に結びついた事例より、監査請求でも裁判においても行政側のガードが高く、又司法側の無理解によりはかばかしい成果に結びついていないという報告が多い様に感じた。
川崎市、神奈川県は返還が既に行なわれており、他自治体に比較し優位にあり今後の裁判でよい結果を出し、他自治体の参考になる判例を作らねばと決意を新たにした分科会であった。
4.包括外部監査「オンブズマン大賞」
知事や市長が任命している内部監査委員が行なう内部監査だけでは不足だとして「外部監査制度」が平成11年度の地方自治法改正により導入され、中核市以上の自治体に公認会計士等の外部監査人による「包括外部監査」が義務付けられた。
この制度で自治体の行政の改善に役立つ監査が実施されているかを市民の目で監査する活動を市民オンブズマンが行っている。
平成19年度包括外部監査を実施した113自治体(47都道府県、17政令市、35中核市、14条例制定自治体)で行なわれた153テーマの全てを全国市民オンブズマン連絡会議の包括外部監査班が評価し「包括外部監査の通信簿」として纏めた労作が大会で発表された。
7自治体が優秀賞に選ばれ、その中から青森県(青森県教育委員会の税務に関する事務の執行について)と岡山県(指定管理者制度の事務の執行及び対象施設の管理運営について)が「オンブズマン大賞」に選ばれた。
大会初日に監査を担当された監査人である青森県の倉成麿公認会計士、岡山県の河村英紀弁護士が表彰された。
外部監査制度の効果的推進にオンブズマンの通信簿は大いに貢献している。
東京都は3、528万円の費用(外部監査人に支払う費用)をかけ「住宅政策に関する事業の管理及び財務事務の執行について」他3件のテーマで監査を行なったが市民オンズマンの評価は可もなく不可もなしであった。本年は「主税局の徴収事務について」のテーマのもとに包括外部監査が行なわれている。
神奈川県は「廃棄物対策事業の財務に関する事務の執行について」他3件のテーマで実施されたが4テーマとも「改善要望」の評価であり、監査が物足りないと厳しく指摘されている。
各自治体は監査で指摘された内容の改善進捗状況を報告する義務があり、報告を行なっている。
市民オンブズマンとしては、今後、その報告内容を調査し折角の有効な指摘が自治体行政で実際に改革に結びついているかを調査することが重要であり今後の通信簿ではその点を加味するとの説明があった。
この外部監査結果の改善勧告内容が確実に実施されているかの確認につき、各自治体の市民の協力を要請された。
以上