生活者主権の会生活者通信2009年02月号/01頁




生活者通信【2月号】

第162号・2009年02月01日発行   ホームページ・アドレス http://www.seikatsusha.org/
年会費:1口 1,000円(1口以上)
郵便口座番号:00180-2-117354・郵便口座名称 生活者主権の会

発行人・編集委員長:小俣一郎
編集委員:岡部俊雄・治田桂四郎・松井孝司・吉井正信
事務局:〒187-0011 東京都小平市鈴木町1−498−6 小俣一郎
TEL&FAX:042-326-7229  E-MAIL:i.omata@nifty.com


国民による政権選択

生活者主権の会代表 小俣一郎

 麻生総理が唐突に選挙制度の見直しを提起した。
また、自民党内では「一院制」や「大選挙区制」
を次の選挙公約に掲げるべし、との声も上がって
いるという。
 もちろん、選挙制度には一長一短があり、国民
の声をより反映する、より良い選挙制度を模索す
ることを否定するわけではない。しかし、いわゆ
る「ねじれ国会」で、国会がうまく運営できない
から制度を変える、という発想はいかがなものか。
この「ねじれ」は国民の選択であることを忘れて
はならない。
 そもそもなぜねじれたのか。
 2005年の総選挙では国民は政府与党に3分の2
という絶対的な権限を付与したのである。それを
背景に公約を強力に進めることができる体制が整
ったわけで、自民党は絶好の機会を得たのである。
 にもかかわらずそれを生かせなかった。国民の
期待からはほど遠いものであったということであ
る。もし国民の意に沿うものであったならば2007
年の参院選にも勝っていたはずであり、少なくと
もわずか2年後にあのような大敗はしなかったは
ずである。
 ねじれ国会はいわば、政府与党に反省を求める
国民からの合図である。しかし、政府与党は方向
転換をしたのであろうか。定額給付金への対応な
どをみても、なまじっか3分の2を持っているば
かりに、妥協を忘れ、民意とはかけ離れた強引な
運営を続けているのではないか。
 いま民主党が強気に出ているのは「直近の民意」
が民主党にあるからで、それは歴然と示された国
民の意思なのである。     
 総選挙を行って、政府与党が過半数を維持した
のであれば、それが新しい民意であり、もしそれ
に逆らう形で参議院が暴走することになったとし
たら、それは確かに大問題である。制度の変革も
必要かもしれない。しかしいまはそのような状況
ではない。それよりも、衆議院で絶対多数を持っ
た政府与党の暴走を止めるという参議院に期待さ
れる抑制の役割が機能しているといえるのではな
いか。 
 小選挙区制が問題だという議論もたびたび起こ
る。しかし、1994年に今の小選挙区比例代表並立
制に変えた大きな理由の一つである、二大政党に
よる政権選択選挙の実現、つまり「国民による政
権選択」は、紆余曲折を経て、またマニフェスト
の進化という要素も加わって、いまやっと現実の
ものになってきているのである。その可否を問う
のはまだ早い。
 1993年の中選挙区制度での最後の総選挙を思い
出せば、第1党は自民党だったにもかかわらず、
過半数に届かなかったため、細川総理という離れ
業が飛び出して非自民の政権ができた。しかしそ
れは長続きせず、約1年後には総選挙なしで、な
んと自社さ政権ができたのである。
 長年対立してきた自民党と社会党があのような
形で連立し、それこそ国民の多くが想像もし得な
かった村山内閣が誕生した。しかし、あのような
後出しの政権の決め方がいいのだろうか。
 2005年、多くの国民は「郵政民営化」を選択し
た。参議院で否決されたものを総選挙で、国民の
力でひっくり返えしたのである。「国民が決めた」
という意味では、これは日本の政治において大き
な出来事であった。
 国民は、反対する大物政治家を党から追い出す
という荒療治さえ断行した小泉さんに期待し、
「改革を止めるな」とのスローガンに酔い、郵政
民営化を端緒に、日本の政治を大きく変えてくれ
るものと信じ、選択したのである。
 ところがそうはならなかった。
 事前に表明していたとはいえ、最高責任者であ
った小泉さんは、高支持率にもかかわらず改革を
途中で投げ出してしまい、懐刀だった竹中さんは
議員さえ辞めてしまった。
 次の安倍さんは代わった途端に復党を認め、ま
た、分権が進むはずが地方は疲弊し、100年安
心だったはずの年金には大穴が空いていた・・・。
 期待が大きかったからこそ失望も大きく、だか
ら次の参院選で惨敗したのである。
 それにしても公務員改革や道路財源の一般財源
化、年金等々、自民党の政策幅は広すぎ、また分
かりにくい。おそらく郵政選挙のときも、いろい
ろな思惑を持った党内を固めることはできていな
かったのだろう。今回の消費税問題の決着をみて
も、相変わらずの玉虫色である。
 しかし、そのような後出しの手法をいつまでも
続けることはできないであろう。マニフェストで
選択肢を事前に、より明確に示すことが求められ
てきているからだ。
 選択を誤れば、それは自らに返ってくる。小泉
劇場を経験した国民は、その選択がもたらした結
果を実感し、次の政権選択の準備をしているはず
である。
 「国民による政権選択」システムは、まだまだ
進化を続けている。


生活者主権の会生活者通信2009年02月号/01頁