盛り上がりに欠けるふるさと納税について

東京都渋谷区 吉田 佳代子


平成20年よりふるさと納税が始まりました。

各自治体は、様々な工夫をして寄付を募り始めましたが、自治体間ではホームページなどの準備のスピードの速さや寄付の用途のメニューの工夫、お礼の品などに差が出ています。

そもそも、ふるさと納税は、地方格差で過疎などによる税収減に悩む自治体の格差是正を推進するためにできた制度です。

地方では、せっかく地方自治体の予算で子どもたちを育て上げても、いざ、就職になると仕事が集中する都会に出て行ってしまい、都会で納税をするケースが多いのが現状です。ふるさとで育ち、ふるさとで就職できれば良いのですが、今の日本は一極集中でふるさとで就職したくてもなかなかできないのが現実です。そんな都会に出て行ってしまった方々にふるさとを思い出してもらい、ふるさとを愛してもらい、ふるさとに恩返しをしてもらおうと、このふるさと納税は始まりました。

このふるさと納税は、地方税法の趣旨から考えますと疑問のある制度です。そもそも住民税は、各人の住む自治体から提供を受けるサービスに対する対価の意味があります。しかし、ふるさと納税は、所得税及び住民税の計算上、寄付金税額控除を適用できる制度で、本質的にはふるさとへの寄付ではなく、単なる税の移譲でもあるにもかかわらず、ふるさと納税と言う美しい言葉にまぎらわされて住民税をふるさとに移譲させています。

しかし、その反面、確かに地方で育った子どもたちは、仕事を求め都会で就職し、都会で納税をすることも事実です。

又、各自治体が、寄付の用途のメニューを用意し、国民一人一人が税金の使途に関心を持つことも意義のあることです。

私は、どの程度の方が、納税意識を持ち、ふるさとを思い出し、ふるさと納税を行うのか非常に関心がありましたが、予想通り、この制度の活用については、盛り上がりにかけています。

ふるさと納税情報センターのホームページの2012月現在の寄付状況を参考に申し上げますと、47都道府県中30府県が寄付金額と件数を公表しており、件数が一番多いのは、鹿児島県の765件、金額では、約6000万円です。2位が福井県の454件で3250万円です。

この2県については、県で市の窓口もかねているということで、他の県と比較すると件数が多くなるのですが、それだけが理由ではないと考えます。

鹿児島県は、非常に県人会が活発に活動をされており、県職員が県人会に顔を出し、ふるさと納税をお願いしていると伺っています。鹿児島県の熱意の結果ではないでしょうか。

他県については、件数も金額もばらばらです。

なぜ、この制度が盛り上がりに欠けるのかを考えてみますと、まずは、周知がうまくされていないと思います。自分のふるさとが、どのようなメニューを準備して寄付をつのっているか知らない方が大半です。鹿児島県人会のように自治体から積極的に寄付をお願いしない限り、国民が自ら積極的に動くことは考えにくいのではないでしょうか。

そこに、日本人の国民性が見えることに、ちょっぴり淋しさを感じずにはいられません。


(渋谷区議会議員)