南山開発

東京都稲城市 井上 和代


このたびは、私の住む稲城市で起きている問題を皆様にお知らせします。 

以前、会の皆様宛てにメーリングリストにて呼びかけをさせて頂きましたので既に読まれた方もいらっしゃるかと思いますが、よりたくさんの方に南山問題を知って頂きたく、その後の経過も含め加筆修正して生活者通信に投稿致しました。

皆様ご存知かどうか、新宿から京王線で西に約30分のところに京王よみうりランド駅と稲城駅という二つの駅があります。このすぐ南には、ふた駅にまたがる南山という素晴らしい里山があり、これはアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台となった山としても知られています。

実は現在、この南山が大規模開発の危機にさらされていて、87ha(東京ドーム19個分)もの土地を宅地化し幹線道路などが出来るという計画があり、まさにその工事が始まろうとしているのです(一部は既に始まりました)。

そしてこの事業に対して、稲城市から20億円、東京都からは48億円もの多額の税金が投入されるということです。

私は3年ほど前に稲城市に引っ越してきたいわば新市民ですが、南山はしょっちゅう散策しているにも関わらず、この開発問題をつい最近まで知らずに過ごしてきました。ある日、マンションの自宅ポストに開発反対を呼び掛けるビラが入り、はじめは半信半疑でしたが、何か自分も出来ることをやらなければと次第に思うようになり、去年末ぐらいからこの問題を考える市民グループの会合に参加してみたり、いろいろなところで署名を集めたりしています。

この南山は、タヌキや野うさぎといったお馴染みの野生動物の生活の場というだけではなく、オオタカやトウキョウサンショウウオ、タマノカンアオイといった絶滅危惧種が多数生息している地域でもあります。この開発によって、確実に彼らは棲み処を失い、絶滅の危機へと追いやられてしまうでしょう。

この南山問題は、つい最近3月3日(火)にテレビ朝日のスーパーモーニングで取り上げられ、非常に大きな反響がありました。

お時間の都合等でご覧になれなかった方もたくさんいらっしゃると思いますが、この番組がYou Tubeに載っておりましたので、会の皆様にも是非ご覧になって頂きたいのです(時間は約20分ほどで、2部制になっています)。

http://www.youtube.com/watch?v=D-QpI8S2Pk0

http://www.youtube.com/watch?v=Y3xDcRDXYa4

なお、さらに南山の現状を詳しくお知りになりたい方は、南山をフィールドに活動しているマウンテンバイカーの方のブログに写真入りで詳しく載っていますので、是非アクセスしてみてください。http://mtbgaga.blog117.fc2.com/

話は変わりますが、皆様は来年名古屋で開催される「COP10(第10回、生物多様性条約締結国会議)」をご存知でしょうか。経済サミットにも匹敵する壮大な国際会議で、約2週間にわたり、191ヶ国もの各国政府、NGO、研究者、メディアなど何千人もの代表団が集まります。

日本自然保護協会発行の機関紙によると、環境省自然環境局長の黒田大三郎氏は、「COP10」に向けて「SATOYAMAイニシアティブ」を提唱するとおっしゃっています。

日本はまさに議長国として世界をリードしていく立場にあり(議長は環境大臣だそうです)、世界最大規模の国際会議で日本が大恥をかくことだけは避けなければなりません。

世界が注目するこの「COP10」に向けて、私は東京の稲城市から世界に向けて、この南山問題を訴えていきたいと思っています。

一方、国会では去年「生物多様性基本法」が成立しました。この成立に向けては、民主党の議員様方が多大な貢献とご尽力をされたと伺っています。

 この開発には、先述のスーパーモーニングの番組が伝えているように、様々な利権や行政(市長や議員等)の思惑が絡んでいるようです。

私は地権者ではありません。でも、この南山のすぐ近くに住む一市民として、なぜこれほど声高に自然保護が叫ばれる現代にこのような時代逆行の開発が行われるのか、また市民や都民のたくさんの税金が使われてしまうのか、納得のいかない思いをずっと抱いてきました。生物多様性の保全が世界中で大きなうねりとなっている現在、南山の開発で多額の税金が、生物の多様性を維持する方向ではなく、棲息地を完全に根絶させることに使われるのは本当に理解できません。

今回市民グループが集めた南山開発の見直しを求める請願署名は、最終的に合計26,163筆となり、稲城市議会へ提出されました。

先日3月16日に稲城市役所で行われた建設環境委員会の審議には約140名もの市民が早朝から傍聴に詰め掛け、こんなことは市議会始まって以来だそうです。傍聴には学校の合間を縫って高校生らも参加しており、議会が始まる前の早朝には横断幕を掲げて市民や市にアピールする場面もありました。私も足を運んだのですが、行政の答弁は全て「ここまで始まってしまったものは止めることはできない」といったあくまで開発推進側に立つものばかりで、なぜこの環境保全の時代にこのような開発が必要かといった部分には触れられず、正直言って全く共感できませんでした。

そして審議の結果はというと、長時間に及ぶ質疑に次ぐ質疑で紛糾の末「継続審査」となり、この南山の件は次回議会まで持ち越されることになったのです。

ただ純粋に大好きな南山の自然を守りたい、私にとってその気持ちが出発点でした。何か動かなければ開発は進んでいく、だから何でもいいから自分にできることを行動に移していこう、その思いで、考え付くままにいろいろな場でこの南山問題を訴えています。そんな中で自分なりに辿り着いた結論は、非力な一市民がどんなに頑張っても行政が動かない限りこの問題は解決せず、行政が動くためには広く世論に訴えていくこと、そしてもう一つは都知事や議員さん方に直接訴えて行政に働きかけてもらうこと、 その二つを同時進行でやっていくしかない、ということでした。

もしこの南山問題について皆様が何かを感じ、ご意見または解決のための提言やアドバイス等ありましたら、下記の連絡先まで是非お知らせ頂きたく思います。

なお、署名に協力していただける方がいらっしゃいましたら、「署名TV」というインターネットの署名サイト(http://www.shomei.tv/)に、カテゴリー「環境」、企画者名「稲城里山元気塾」で載っていますので、どうぞご協力を宜しくお願い致します。その際、よろしければ署名と一緒に是非コメントなどもお寄せ下さい。「継続審査」となりましたので、紙の署名の方も引き続き集めるつもりです。

  私は、この南山の現状を一人でも多くの方々に知っていただくことで、皆が知恵を出し合い協力し合って、なんとか良い解決方法を探ることができるのではと考えています。

グーグル・アースで見ると分かるとおり、都内近郊にはいくつかまとまった緑地が点在していますが、いずれも代々木公園や多磨霊園のように人工的な緑がほとんどで、この南山のように新宿30分圏内でこれほどの規模の自然の緑が残っているケースは他にはありません。

今までの開発の時代を逃れて奇跡的に残ったこの里山がどれほど貴重なものであるか、そして一度失われた自然を取り戻すということがどれほど困難なことであるか、会の皆様に考えて頂けたら幸いです。

住所:206-0812東京都稲城市矢野口1390-1-607

E-MAILkazuyokbrjp@gmail.com