官僚と闘う政治の注目情報詳細20101月)

 

1.事務次官「廃止」 霞が関改革へ位置付けよ

20091213日 西日本新聞社説)

 もし、実現すれば、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)で宣言していた「霞が関の解体・再編」を象徴する改革の目玉となるかもしれない。

 仙谷由人行政刷新担当相が、中央省庁の官僚トップである事務次官ポストの廃止を検討する意向を表明した。来年の通常国会への提出を目指す国家公務員制度改革関連法案に盛り込みたいという。

 仙谷氏は、取締役と社員で構成される民間企業を引き合いに出して、その理由をこう語った。「どこの会社でも、社長や労務担当重役(など取締役)のほかに事務(社員)のトップがいるという組織形態は見たことがない」

 民間の企業と官僚の組織を同列に論じるのはやや乱暴かもしれないが、この例えは確かに分かりやすい。

 国家行政組織法によると、事務次官の職務は「その機関の長たる大臣を助け、省務を整理し、各部局および機関の事務を監督する」と規定されている。

 論じるまでもなく各省庁の最高責任者は大臣である。だが、官僚組織の頂点に立つ事務次官が省内の政策決定や幹部人事などを実質的に取り仕切ってきた。

 この仕組みを根本的に改めようとしているのが、「脱官僚依存」の「政治主導」を看板とする鳩山由紀夫政権である。

 鳩山内閣は、閣議に諮る案件を事前調整していた事務次官会議を廃止した。事務次官の定例記者会見も取りやめた。いずれも「官僚主導政治の象徴」という理由だった。

 その代わりに、省庁へ送り込まれた政治家の大臣・副大臣・政務官の「政務三役」が政策決定を主導する態勢を整えた。省庁横断的な政策テーマについては、その案件ごとに関係する大臣が直談判する閣僚委員会をつくった。

 まだ試行錯誤の段階ではあるが、こうした「霞が関改革」の延長線上で考えれば、事務次官ポストの廃止論は、それほど唐突な考え方ではあるまい。

 しかし、鳩山内閣の閣僚には慎重な意見が目立つ。平野博文官房長官は「事務の統括責任者という役割は必要だ」と異を唱えた。首相は「いま(廃止か存続かの)どちらかに軍配を上げるつもりはない。大いに議論すればいい」と、例によって論議の行方を見守る姿勢のようだ。

 仙谷氏の発言は、停滞気味の公務員制度改革を再起動させるための問題提起と受け止めたい。もちろん、事務次官ポストを廃止すれば事が済むわけではないし、この論議を「高級官僚たたき」に矮小(わいしょう)化させてもならない。

 省庁幹部人事の内閣一元化や国家公務員への労働基本権付与、天下りの根絶など、公務員制度改革の全体像の中で事務次官の役割や機能も見直して結論を出すべきである。

 鳩山政権は霞が関とどう向き合うか。その基本姿勢があらためて問われる重いテーマであることは言うまでもない。

 

 

2.<公務員改革>天下り監視に新組織…人材センター廃止

20091220日 毎日新聞)

 政府が来年の通常国会で提出を目指す公務員制度改革関連法案の概要が19日、判明した。民主党が「天下りバンク」と批判していた「官民人材交流センター」と、「再就職等監視委員会」を廃止し、「公務員人事適正化センター」(仮称)を来年4月、内閣府に設置する。独立行政法人などへの現役国家公務員の出向の管理や、「隠れ天下り」の監視にあたり、民主党政権が掲げる天下りの根絶を目指す。

 鳩山由紀夫首相が提出を指示している「政治主導確立法案」の一部として提出し、幹部職員の人事を一元管理する「内閣人事局」の設置も盛り込む。

官民人材交流センターは自公政権が設置。各省が行っていた天下りあっせんをやめさせ、「再就職」と位置づけて一元管理していた。再就職等監視委員会は、同センターのあっせんを監視し、公務員OBによる各省への働きかけなどを監視する役割があった。

 首相は天下りあっせんの禁止を9月末に各閣僚に指示しており、不要になった両組織は廃止する。ただ、早期勧奨退職の対象となる職員を、退職させずに現役のまま独法に出向させたり、役員以外の嘱託職員として再就職させるなど「隠れ天下り」が行われているケースもあり、監視のための「公務員人事適正化センター」の設置が必要と判断した。

 監視委の委員人事は国会の同意が必要だったが、自公政権下の「ねじれ国会」の中、一度も同意されないまま廃止されることになる。【小山由宇】

 

 

3.社保庁職員525人「解雇」 厚労相発表195人が再就職希望

20091229日 日本経済新聞)

 長妻昭厚生労働相は28日、今月末で社会保険庁が廃止されることに伴い、後継組織の日本年金機構などに移れずに民間の解雇に当たる「分限免職」処分となる社保庁職員が525人となったと正式発表した。そのうち195人が再就職を希望しており、厚労省は引き続き再就職のあっせんなどの支援を続ける。

 再就職先を確保できる見込みがないのは195人のなかで少なくとも112人。厚労相は同日の記者会見で「ぎりぎりのなかで分限免職回避の努力をしてきた。引き続き可能な限り再就職支援を続ける」と強調した。

525人のうち、社保庁で年金記録のぞき見などで懲戒処分を受けた職員は251人。厚労相は懲戒処分を受けた職員は日本年金機構で採用しない方針を堅持してきた。国家公務員の分限免職は1964年以来。憲法や法律などで身分保障された公務員の大量解雇は終戦直後を除き過去に例がない。分限免職処分となった職員の一部には国を相手に取り消し請求訴訟を起こす動きもある。

 厚労相は分限免職を回避するため、厚労省や日本年金機構で最大420人の雇用枠を確保。公募の結果、懲戒処分を受けた職員ら152人を厚労省の非常勤職員として、処分歴のない職員60人を日本年金機構の有期雇用職員として受け入れた。

 

 

4.政治主導強化へ法整備=戦略局設置、副大臣ら増員−政府

201012日 時事通信)

 政府は今月召集の通常国会に、国家戦略室の「局」への格上げや、副大臣、政務官らを増員するための法案を提出する方針だ。鳩山由紀夫首相はこれらの年度内成立を目指しており、政治主導の政策決定の体制を可能な限り早く強化したい考えだ。

 現在の戦略室の職務は設置規定で「税財政の骨格、経済運営の基本方針」の策定のほか、「首相が命じたもの」と定められており、首相の指示で、雇用や地球温暖化対策、成長戦略策定などに取り組んでいる。内閣官房に国家戦略局を設置する内閣法などの改正案で、設置規定の内容をそのまま条文化し、法的根拠を明確にする。菅直人副総理兼国家戦略担当相は、東アジア共同体構想の具体化など外交分野の特定テーマに取り組むことにも意欲を示している。

 また、組織体制も充実させる。局長に加え、国会議員5人程度の「国家戦略官(仮称)」を新設。現在20人の国家戦略室スタッフについても、40人規模に増やすことを想定している。

 一方、国家行政組織法などの改正案では、現在、計47人いる副大臣、政務官を大幅に増員するほか、各省に大臣補佐官を新設する。政府内には「計110人程度」とする案も浮上しており、天皇の認証が必要な副大臣より、認証官ではない政務官を大量に増やす方向だ。

 

 

5.政治主導の人事加速、主要官僚の退任相次ぐ

201019日 読売新聞)

 鳩山内閣で最近、主要官僚の急な退任が相次いでいる。

 「脱・官僚依存」を掲げる政権の意向に沿う形だが、異例の人事に霞が関では戸惑いが広がっている。

 総務省の鈴木康雄次官は通常国会召集を控え、原口総務相に勇退を申し出た。総務相も了承し、後任に岡本保総務審議官を起用することにした。15日に発令する見通しだ。鈴木氏は昨年7月に就任したばかりで、省庁の官僚トップの次官が1年足らずで交代するのは極めて異例だ。

 総務相は「地域主権改革」に意欲を示し、地方行政に精通する人材を求めていた。こうした総務相の意向が、旧郵政省出身の鈴木氏から旧自治省出身の岡本氏への交代を促す圧力となったという見方がある。

 また、鳩山政権になって政策決定は閣僚、副大臣、政務官の「政務三役」が主導している。鈴木氏についても、「課長から結果を知らされるような状態に嫌気がさした」(総務省関係者)という声が出ている。

 閣僚が直接、更迭した例もある。

 公務員制度改革担当の仙谷行政刷新相は昨年12月17日、立花宏・国家公務員制度改革推進本部事務局長を退任させた。後任には大島敦内閣府副大臣が就く。仙谷氏は退任の理由を「前政権下の体制は、私どもが考える基本理念と同じかどうか分からない」と説明した。12月25日には、前原国土交通相が旧運輸省出身の本保芳明観光庁長官を退任させ、旧自治省出身でJリーグのサッカーチーム運営会社元社長の溝畑宏氏を新長官に充てる人事を発表した。民間の力による観光振興のてこ入れが狙いだという。

 自民党政権では、各省庁の幹部人事は、官僚側の意見を閣僚が受け入れる形で行われることが多かった。これに対し、鳩山首相は一時、政権交代後に局長以上の幹部に辞表を出させる意向を示すなど、政権の方針に従わせるために政治主導の人事を積極的に行う構えを見せていた。霞が関では「最初は様子を見ていたが、そろそろ本格的に人事に手を突っ込み始めた」と警戒する向きがある。

 

 

6.特別会計も事業仕分け、仙谷行政刷新相が方針

201019日 読売新聞)

 仙谷行政刷新相は9日、徳島市で講演し、2010年度予算成立後の4月以降、独立行政法人や政府関連の公益法人に加え、特別会計の事業も対象に「事業仕分け」を実施する方針を明らかにした。

 仙谷氏は「『公益法人や独立行政法人に怪しげなものがまだ残っているのではないか』という世論の声がある。特別会計にも怪しげな雰囲気がある。新年度は4月からでも、仕分け手法で、ここにメスを入れていくことになる」と述べた。

 さらに、幼稚園と保育所の一元化について、「女性の良質な労働力を活用し、成長のもとになる生産性の高い労働力をどう増やしていくか。幼保一元化こそ一つの戦略だ」と述べ、推進していく考えを示した。

 また、公務員制度改革に関連し、「(労働基本権を回復した場合)内閣人事局の担当政治家が団体交渉の責任者として矢面に立つべきだ。(各府省の)副大臣に労務担当を任せるとすれば、事務次官ポストをなくしても十二分に成り立つ」と語り、事務次官ポストの廃止に改めて意欲を示した。

 

 

7.菅新大臣を後押しする強力法案の威力

2010111日 日刊ゲンダイ)

●やりたい放題はもう通用しなくなる

 辞任した藤井裕久財務相の後任人事は、菅直人副総理(63)の兼務――。このニュースが報じられた瞬間、霞が関は騒然となったという。

「菅大臣は、かつて官僚が選ぶ『嫌いな政治家』ナンバーワンに選ばれたことがあるくらいで、閣僚の中でも際立って“脱官僚”を鮮明にしてきた。藤井前大臣とは全くタイプが違うので、正直、やりづらいですね」(財務省関係者)

 別の経済系省庁の幹部も、「菅氏の財務相就任によって、財務省の力が弱まるかもしれない」と言う。

 菅大臣は7日、財務省内で就任会見して抱負を語ったが、財務官僚に対する“宣戦布告”と取れる発言もあった。

「十数年前、厚生大臣になった時も申し上げたが、大臣というのはその役所の代表ではなくて、国民が役所に送り込んだ国民の代表。国民のために働く役所であるようにということで就任した」

「民主党のマニフェストで207兆円の総予算、つまり一般会計、特別会計を含む総予算について、全面的に見直すとなっているが、この3カ月半では着手という段階にとどまっている。ありとあらゆる特別会計や独立行政法人、公益法人について、財務省の立場でも、この問題にしっかりと取り組んでいきたい」

 官僚組織と対峙する菅大臣を後押しする強力な“武器”も、近く整備される見通しだ。

 鳩山首相は今年の年頭記者会見で、18日に召集される通常国会に「政治主導確立法案(仮称)」を提出する方針を明らかにした。この法案は、国家戦略室を「局」に格上げして権限を強化することや、副大臣や政務官の増員とともに「大臣補佐官」を新設して政府に国会議員約100人を送り込むことなどを骨子としている。いわゆる「政治主導」を徹底させるための法案なのだ。

 同時に、官僚の幹部人事を一元管理するために「国家公務員法」などの改正案も提出。4月からの実施を目指す。もう官僚の好き勝手にはさせないという強烈な意思表示だ。

「これらの法案が成立すれば、明治以来100年以上続いてきた官僚主導を打破する第一歩になります。政官関係の再編は、国の形を根底から変えることになる。まさに維新と呼べるような大改革です。予算編成に関しても、これまでの『財務省VS.他の官省庁』という構図から、『政府(官邸)VS.財務省を含むすべての官省庁』に変えていく仕組みが出来上がる。政治主導で中長期的な国家ビジョンを示し、大胆な予算の組み替えが可能になります」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)

 ようやく「政治主導」「脱官僚」が本格的に実現する体制が整う。霞が関の嫌われ者、菅大臣が思い切り暴れれば、この国は大きく変わることになる。