官僚と闘う政治の注目情報詳細(20101月)

―官僚と馴れ合いのマスコミ特集版―

 

1.日本のメディアと政治:出ずる日の光を取り込め

2009926日 英エコノミスト誌)

政権交代がメディアと官僚の馴れ合いを脅かす。

毎晩、東京にある読売新聞の本社ビルは揺れ始める。8階に入居している本誌(英エコノミスト)のオフィスでも一瞬、地震のような揺れを感じる。だがそれは単に、世界最大の発行部数を誇る読売新聞で、翌日の朝刊の印刷のために建物の奥にある輪転機が回り始める振動にすぎない。

 この1週間余りは、違う類の揺れが読売新聞を襲った。鳩山由紀夫氏率いる新内閣が916日に発足し、先の総選挙で敗れたライバル政党の自民党に、半世紀もの間、実権を握らせてきた日本の権力構造に改革のメスを入れると明言したからだ。

 主たる標的となるのは、シェルターのような東京の庁舎から大きな権力を振るってきた官僚である。だが、官僚が握る制御レバーの1つがマスコミであり、マスコミは官僚とのもたれ合いをあまりに享受しすぎてきたと批判されている。

 それゆえ、鳩山氏が首相の座に就くや否や、官僚の力を弱めるために報道機関と事務次官の定例記者会見を禁ずると脅しをかけると、ついに戦端が開かれることになった。

 読売新聞はほんの1日で、すかさず反撃に出た。社説の中で同紙は、鳩山氏に官僚から実権を奪い返す権利があることは肯定しつつ、それがメディアの情報アクセスの犠牲の上に成り立ってはならない、とクギを刺した。

 そして「官僚の口を封じるという決断の再考を求めたい」と述べた。

 この小競り合いは一見、取るに足らないもののように思えるかもしれないが、実はこのことが重大な影響を及ぼしかねない。フリージャーナリストの上杉隆氏が表現するように、日本で米国の「軍産複合体」に相当するものと言えば「官僚メディア複合体」だからだ。

 しかし、官僚とメディアの両方を同時に敵に回せば、新政権は2つの前線に立たされかねない

 官僚が大きな力を有するようになった経緯は、戦(いくさ)より政(まつりごと)に精を出すよう発破をかけられたサムライのエリートたちがその中心となっていた、何百年も前の時代にさかのぼる。過去50年間、官僚は戦後の衰退した日本を世界第2位の経済国へと生まれ変わらせるため、産業政策の構築に尽力してきた。

 その功績も、この20年間の経済的苦境の中で色褪せてしまった。政治学者の猪口孝氏はそれでも、サムライ精神は今も息づいていると確信する。同氏は官僚社会を、自分たちの身を守るために「亀のような隊列」を組む古代ローマ軍になぞらえる。

 「官僚社会の精神構造はまさに、サムライ当時のままだ。それは強い意思を持ち、忍耐強く、組織的にも非常に強いものだ」

 一方のメディアは、官僚に対して、外部の世界と直接コミュニケーションを取る珍しい手段を提供する。日本の新聞発行部数は16800万部と、先進国で最も多く、新聞各社は各省庁内にある「記者クラブ」――19世紀から続く制度で、主要メディアと官僚たちに親密な関係を築くよう促す――という制度の一部に組み込まれている。

 これまで記者クラブ――参加するためには既存メンバーの同意が必要――は、内閣記者会見から外国人記者やインターネットニュースのリポーター、フリーランスの記者(多くの場合ゴシップ屋と蔑まれる)を締め出している、と批判されてきた。

 この仕組みは、情報の共有を促し、スクープの妨げにもなる。自民党政権下で行われてきた日本の排他的政治の後だからこそ大いに求められている調査報道が、記者クラブの存在によって阻まれるのだと批判者は言う。

 一部のマスコミの有力者でさえ、変革の機はとうに熟していることを認める。朝日新聞の主筆で、日本で最も高い評価を受けるジャーナリストの1人である船橋洋一氏は、首相就任記者会見に雑誌やインターネットニュースの記者の出席を認めた鳩山氏の異例の決断を歓迎し、「今やダムは決壊した」と述べた。

 だが、それほど理解のないメディア関係者が、鳩山氏に刃を向けないとも限らない。1000万部の発行部数を誇る読売新聞などは、長い間、自民党と親密な関係にあった。読売新聞グループ本社会長兼主筆の渡辺恒雄氏は、自民党のキングメーカーと目されてきた1人でもある。

 メディアは鳩山氏のスキャンダル――同氏の資金管理団体が献金者リストに死亡者を含む、架空の献金者を記載し、本人もそれを認めている――にも目をつけている。この一件はこの先、鳩山氏を煩わすことになるかもしれない。

 それでも鳩山氏は、記者クラブを放置したりしたら、愚かだ。民主党が8月の総選挙で圧勝した一因は、開かれた政権を約束したからだ。日本の国民は、選挙の当選議員が政権の座に就きながら官僚が実権を握る、不透明な密室政治に終止符が打たれることを待ち望んでいる。

 もしメディアがその制度と共謀し続けるのであれば、日本の現状を打破するという鳩山氏の約束は、全くもって実現が難しくなるだろう。

 

 

2.普天間移転をこじれさせた歴代自民党政権と役人の大罪

20091221日 日刊ゲンダイ)

 普天間基地の移転問題で揺れる鳩山政権。大マスコミは「このままでは日米関係に亀裂」と大騒ぎだが、コトをここまでこじれさせた元凶は歴代自民党政権と役人にある。とくに怪しいのが2006年9月の動きだ。日本では小泉政権が安倍政権に代わり、防衛庁長官は額賀福志郎から久間章生に交代した。このとき、何が起こったのか。鳩山政権は全情報を公開させるべきである。

 今月11日、国会で超党派の議員が集まる「沖縄基地問題議員懇談会」(事務局長・川内博史衆院議員)が開かれた。

 講師に招かれたのは伊波洋一・宜野湾市長。防衛省や外務省の担当者も顔を揃えた。

 この会議で伊波氏は、米軍が普天間基地の海兵隊ヘリ部隊を、ほぼそっくりグアムに移転させる計画を持っていたことを示す証拠を出した。米海軍省グアム統合計画室が作った「グアムと北マリアナ諸島の軍移転」に関する環境影響評価書だ。文書は沖縄のジュゴンを守るために米国で起こされた裁判で出てきた資料で、全9巻8100ページに及ぶ膨大なもの。この中の第2巻と第3巻に沖縄の海兵隊移転の詳細が記述されていて、海兵隊の司令部だけでなく地上ヘリ部隊や迫撃砲隊、補給部隊に至るまで、大半をグアムに移転させる計画が出てくるのだ。

 沖縄の海兵隊のほとんどがグアムに行くのであれば、日本国内に普天間基地の代替施設を造る必要はない。基地問題は解決だ。

 しかも、海兵隊の“丸ごとグアム移転計画”は06年7月、米太平洋軍司令部が作成した「グアム統合軍事開発計画」の中にも出てくる。

「海兵隊航空部隊とともに(グアムに)移転してくる最大67機の回転翼機と9機の特別作戦機CV―22航空機用の格納庫や、離着陸用パッドなどを建設する」ことが明記されているのである。普天間に駐留する海兵隊の回転翼機は56機。全部移動させても、まだ、格納庫は余る。辺野古に滑走路なんて要らないのである。

 

●米国の“丸ごと”グアム移転計画をひた隠し

 ところが、この「開発計画」は2カ月後に国防総省のホームページにアップされたものの、たった1週間で削除されてしまう。

 そして、自民党政権はその後、「グアムに移転するのは司令部だけ」と言い出し、沖縄に残る実動部隊のために代替基地を造ることが“既成事実”であるかのような国会答弁を繰り返してきたのだ。

「その食い違いが今回、伊波市長が公開した資料でも明らかになったわけですが、問題はなぜ、国防総省がHPを削除したのか。この時期、日米で何らかの談合、合意があり、グアム移転の詳細を曖昧にする必要に迫られたからだと思います。日本政府はグアム移転の費用のうち、61億ドルを負担する。しかし、米軍はもっと基地を強化したい。日本の税金4000億円で代替基地を造り、思いやり予算までくれると言うのを断る必要もない。日本側は日本側で海上を埋め立て、新基地を造れば、利権になる。そのために移転の核心情報をひた隠しにし、辺野古移転をゴリ押ししてきたとしか思えません」(ジャーナリスト・横田一氏)

 国会で開かれた懇談会では民主党議員らが役人の説明と米国公開資料の食い違いを厳しく指摘。「どちらかがウソをついている。米国に再確認して回答を文書で出せ」と迫った。役人たちは「政務三役と相談して……」などと逃げようとし、「国会軽視だ」と激論になった。

 問題がここまでこじれた以上、洗いざらい情報を公開させて議論をしなければダメだ。

(日刊ゲンダイ20091218日掲載)

 

 

3.独断でやった芝居なのか裏に誰かいるのか岡田外相はなぜ…

20091228日 日刊ゲンダイ)

●大新聞はなぜ報道しない

 藤崎駐米大使の“呼び出しデッチ上げ事件”が奇々怪々の展開になってきた。普天間移設を巡り、クリントン国務長官に呼びつけられた、異例のことだ、と藤崎が騒いだ一件である。本当ならば、米側の怒りも相当なのだろうが、この話が報道されると、米側は「大使の方から会いに来たのだ」と“呼び出し報道”を全否定。当然、今度は藤崎の“自作自演”が問題になると思いきや……岡田外相は何も言わないし、大新聞も沈黙なのだ。裏に何があるのか。

 クリントン国務長官と藤崎駐米大使が会ったのは今月21日。藤崎は「長官側から連絡があった」「めったにないこと」「重く受け止める」と騒いだ。

「クリントン国務長官は17日にコペンハーゲンで行われたCOP15の晩餐会で鳩山首相と隣り合わせになった。このとき、鳩山首相が普天間移設問題の解決には時間がかかることを説明したところ、長官が『よくわかった』と答えたと報じられた。長官は非公式会談の話がメディアに漏れたことに怒っていて、釘を刺す目的で大使と話したかったのは明らかです」(国際ジャーナリスト・歳川隆雄氏)

 ま、こういうことは外交上よくある。しかし、脱官僚依存の鳩山政権を面白く思っていない外務省は、ここぞとばかりに「呼び出し事件」を騒いだ。そうすることで、暗に鳩山軽率外交をなじり、普天間も現行案に戻させる。そんな狙いがあったのはミエミエだ。

 しかし、米側のスポークスマンは22日、「藤崎大使は長官から呼ばれたのではない。彼の方から会いに来たのだ」と明言。藤崎の大騒ぎは、思いっきり冷や水を浴びせられたのである。

「もし、藤崎大使がウソまでついて米側の怒りを過剰演出したのだとしたら、大問題。更迭されてもおかしくない」(外交事情通)という話だが、奇っ怪なことに、岡田外相は沈黙している。大新聞も全然、書かない。どう考えてもおかしいのだ。

 元AP通信の記者でビデオジャーナリストの神保哲生氏は「米スポークスマンは、藤崎大使がクリントンのところにstop by(立ち寄った)という言い方をした。つまり、米側は呼んだわけでなく、たまたま来たのだという言い方なんですね。これも常識ではあり得ない話で、米側にしてみれば、居丈高に呼んだのではないと言いたかったのでしょう」と言う。

 この辺が真相かもしれないが、それにしたって、藤崎の言い方は米が驚いて否定するほど“大げさ”だったことになる。それが現政権の外交政策を後押しするためであるならいざ知らず、足を引っ張る言動だったことが大問題なのである。

 大新聞が真相を報じないのは、こちらも普天間問題では完全に反鳩山、親米だからだ。亀井金融大臣は会見でこう言ったことがある。

「日刊紙は国益を損なうことばかり書いている。1周遅れなんだよ。アメリカの機嫌を損ねたら大変だと。何か事が起こると。そんなことがあるはずがない。一体、君たちはどこにおるのかと言いたい」

 この言葉を藤崎にも贈りたい。

(日刊ゲンダイ20091225日掲載)

 

 

4−1.大手マスコミはなぜ記者会見開放に反対するのか 記者クラブ問題座談会(上)

20091229日 J-CASTニュース)

2009年夏の政権交代で永田町や霞が関は大きく変わった。その一例が「記者会見のオープン化」だ。閣僚や党首の会見が記者クラブ以外のメディアにも開放されていくなか、記者クラブという日本独特のシステムの弊害が露わになった。なにが問題で、今後どう展開していくのか、J-CASTニュースの記者が話し合った。

 

A   この1年マスコミ界の最大の話題といえば記者会見のオープン化だったね。注目が集まるようになったのは、いつごろからだろう?

 

B   「政権交代」が実現した総選挙の少し前からだ。095月に民主党の小沢一郎前代表が西松建設問題で辞任して、代わりに鳩山由紀夫代表が就任したころだ。そのときの会見で鳩山代表は、フリージャーナリストの上杉隆さんに「政権を取ったら記者会見を開放するのか」と質問され、「私が官邸に入った場合、上杉さんにもオープンですのでどうぞお入りいただきたい」と答えた。

 

C   それまで首相会見は、内閣記者会という記者クラブに所属している記者しか参加できない決まりだった。しかし鳩山政権になれば、クラブ以外のフリーやネットの記者も会見に参加できるようになる。鳩山首相はそう公言したわけだ。

 

A   ところが鳩山政権が誕生しても「公約」は実行されなかった。

 

B   大きな節目は916日。鳩山首相の就任会見だった。記者クラブ以外では、一部の外国特派員と雑誌・専門紙誌の記者の出席が認められたものの、フリーやネットメディアは入ることができなかった。

 

C   鳩山政権の最初の「公約違反」だ。上杉さんがコラムで非難するなど、ネットでは大きな批判が巻き起こった。だが記者クラブの中にいる新聞やテレビはこの問題を報道しなかった。

 

A   既存メディアが伝えないのは、自分たちの既得権益にかかわる問題だから世間に知られたくない、ということかな?

 

C   そういう側面もあるだろうが、そもそも首相会見は政府ではなく、記者クラブが主催しているというのが大きい。つまり、会見のオープン化を拒んでいるのは記者クラブ自身だ。そういう自らの閉鎖性を暴露する記事は書きにくいということだろう。

 

B   ただ、記者クラブの幹事社に取材したら、「民主党側からネットメディアにも会見を開放してほしいという要望はなかった」という返事だった。

 

オープン化を阻んだ「犯人」はだれか?

 

B   どうやら民主党のほうも記者クラブに気を使って、首相会見の開放を強く要求しなかったようだね。特に、政権のスポークスマンである平野博文官房長官は、開放を阻止するために動いたと言われている。

 

A   なぜ、平野官房長官は記者クラブに配慮したのか。

 

C   既存のマスコミの力はまだまだ大きく、政権交代はマスコミが作り出した世論で実現したという部分もある。平野官房長官としては「新聞やテレビを敵に回したくない」という思いがあったのではないか。

 

A   鳩山首相自身はどう考えていたんだろう? この問題でも揺れていた?

 

C   民主党の代表や幹事長の会見は以前からオープン化されているが、開放を進めてきたのは元代表の岡田現外相で、鳩山首相の手で実現したわけではない。実はそんなに積極的ではなかったのではないか。

 

A   でも鳩山首相自身は「オープン化したい」と思っていた節もある。元秘書が起訴された1224日の釈明会見で「来年からもっと記者会見を開放するようにする。このことに関して決意は変わっていない」と発言したんだよね。

 

B   この釈明会見は官邸ではなくホテルで開かれたので、我々のような外部のメディアも参加できたが、あの発言にはびっくりした。近くにいたフリーやネットの記者たちはみな喜んでいた。「首相は意外と本気なのかもしれない」と感じたよ。

 

A   そうなると、首相自身は記者会見をもっとオープンにしたいと望んでいたが、記者クラブの抵抗で開放されなかったということになる。なぜ記者クラブは会見オープン化に反対するのだろうか。

 

記者クラブがオープン化に反対する理由

 

B   記者クラブの幹事社に聞くと「外部の記者が入ってくると、記者会見の運営に支障が生じる恐れがある」というあいまいな答えが返ってくる。

 

C   それは「トンチンカンな質問が出ると困る」ということかもしれないが、そのような問題は会見時間を長めに確保したり、進行役がきちんと仕切ったりすることで解決できるはずだ。

 

B   実際、鳩山首相の釈明会見では、記者クラブの記者に混じってフリーやネットの記者が何人か質問していたが、特に混乱は生じていなかった。

 

A   ほかに記者クラブが反対する理由としてよくあがるのが、セキュリティの問題。ニューヨークタイムズの記事によると、毎日新聞の記者が「もし記者会見で焼身自殺をする人が出たら、だれが責任をとるのか」と言ったというが、過剰反応ではないか。

 

C   さすがに焼身自殺というのは、言いすぎだろう。ただ、かつて新聞社で働いた経験からすると、セキュリティの問題というのは確かにあると思う。これは冗談で言われていた話だが、某大手新聞には「宮内庁の記者クラブにはエキセントリックな記者は入れない」というルールがあると聞いたこともある。一種の身元調査をやっているということだね。

 

A   会見場のキャパシティの問題もあるから、「誰でも記者会見に入れろ」というのは現実には難しい。問題はどこで線を引くかだ。

 

B   メディアの数が限られていた昔は、記者クラブに所属している記者にだけ会見参加を認めるというルールも合理性があったのかもしれない。しかしメディア環境が大きく変わった今では、時代遅れの感が強い。

 

A   「記者会見をもっとオープンにしろ」という要望はだいぶ前からあるが、記者クラブはオープン化に消極的だ。そこには、セキュリティやキャパシティ以外の理由があるのではないか。

 

記者クラブの「既得権益」とはなにか

 

C   本音でいえば、既存メディアが持っている「既得権益」を侵されたくないということだろう。たとえば、ニコニコ動画などが記者会見をネット中継してしまうと、新聞やテレビよりも早く、会見の情報が外部に流れることになる。そうなると速報性を売りにしている通信社などは困ってしまうというわけだ。

 

A   新聞社にとっても外部の記者が入るのは迷惑なようだ。

 

B   元産経新聞の記者だった福島香織さんはツイッターで「(記者クラブの)秩序を乱されては、新聞社的にはとっても困るよ。はっきりいって既得権益だから」と書いている。彼女は「権力側に対して直接、公の場で質問する、これはメディアにとって最大の権利だから人にはゆずりたくないだろうなあ」とも記している。実際、いまも多くの大臣会見では、記者クラブ以外の記者は「質問権」を認められていないが、それはまさしく既得権益だからだ。

 

C   内部にいる者からみれば、記者クラブというのは「取材拠点」としても非常に便利なシステムだ。記者クラブにはいろんな情報が集まってくるし、役所の各部署へのアクセスも容易なので、効率的に取材をこなすことができる。

 

A   役所には記者クラブ用の部屋が確保されていて、所属の記者はそこで取材したり記事を書いたりしているが、部屋の家賃を払っていないと聞く。これは記者クラブへの便宜供与といえるだろう。

 

B   その点については、外務省の記者会見で質問が出たことがある。0910月の会見で岡田外相は記者クラブの部屋について聞かれ、「賃貸契約はなく、無償で部屋を提供している」と答えている。他のクラブの現状を詳しく調べたわけではないが、おそらく同じような状況だろう。

 

C   特に霞が関の場合は、都心の一等地に無料のレンタルオフィスがあるようなもの。このメリットは大きいが、その原資は国民の税金から支出されている。今後は「無償提供」の正当性や公平性が問われる可能性もあるね。

 

4−2.外務省や金融庁が先行してオープン化できた理由 記者クラブ問題座談会(中)

20091230日 J-CASTニュース)

亀井静香金融相の「第2会見」は大臣室で開かれている

 政権交代をきっかけにして、大臣の記者会見の風景が様変わりした。新聞やテレビの記者に混じって、フリーやネットの記者が質問できるようになったのだ。政治主導でこじ開けられた風穴はさらに大きく広がろうとしているが、このような変化はなぜ実現したのか。

 

■それまでとは違う多様な質問が出るようになった

 

A 首相会見はまだオープン化が実現していないが、いくつかの省庁では大臣会見が開放された。まず動きがあったのは、外務省だね。

 

B 外務省では岡田克也外相が918日、記者クラブ以外にも記者会見を開放すると表明した。クラブからは反発があったが、「原理主義者」とも呼ばれる岡田外相らしく自らの意志を貫いて、929日にオープン化を実施した。

 

C オープン化された会見は、どんな様子だったの?

 

B 参加した報道関係者は約80人で、会見場は満席になった。そのうちフリーやネットの記者・カメラマンは約20人。従来から参加資格があった外国特派員協会の記者たちも「今日は開放のお祝いだ」と言って、たくさん来ていた。

 

A ニコニコ動画のクルーも来ていて、会見をネット中継していたね。

 

C 記者クラブの記者と外部の記者で、質問の仕方に違いはあった?

 

B オープン化初日ということで、外部の記者の質問はオープン化に関するものが多かった。だがフリージャーナリストの中には日米外交について鋭い質問をする者もいて、それに対する岡田外相の回答が朝日新聞の記事になっていた。

 

A つまり記者クラブの記者も、外部記者の質問の価値をある程度は認めているというわけだ。

 

B その後の会見でも、フリーやネットの記者が質問した内容を、新聞や通信社が記事にするという現象が起きている。もちろん、その逆のパターンも多いわけだが。

 

C 記者会見の開放によって、それまでとは違う多様な質問が出るようになったという効果もあるのではないか。

 

B 外務省の職員に聞いたら、「新聞や通信社の記者はどうしても今起きていることに関する近視眼的ともいえる質問が多くなりがちだが、クラブ以外の記者はもっと長いスパンに立った質問をする傾向がある」と話していた。

 

C ところで、なぜ外務省は他の省庁にさきがけて会見をオープン化できたのか。

 

B 一つは、岡田外相が就任前から記者会見のオープン化に強い意欲をもっていたことがある。もう一つは、外務省では首相官邸や他の省庁と違って、会見の「主催権」が記者クラブでなく、省のほうにあったというのが大きい。

 

A 役所の会見は記者クラブの幹事をつとめる記者が進行役をつとめることが多いが、外務省では報道課の職員が前に出て仕切っている。それは省の主催だからというわけだね。

 

■亀井金融相の奇策「もうひとつの会見」

 

C 外務省に続いて大臣会見をオープン化したのは、確か金融庁だったね。

 

B 金融庁の場合はなんといっても、亀井静香という突破力のある政治家が大臣だったのが大きい。亀井金融相はジャーナリストの上杉隆さんの要請もあって、就任後まもなく、会見のオープン化を記者クラブに提案した。

 

A しかし記者クラブの答えは「ノー」だったね。金融庁の会見はクラブ主催なので、その同意がなければ会見をオープンにできない。普通の大臣ならここであきらめてしまうところだ。

 

B ところがなんと亀井金融相は、記者クラブ向けの会見の直後に、クラブ以外の記者のための「もうひとつの会見」を開くようにした。

 

C まさかの奇策だった。これには我々も「その手があったか」と驚いた。

 

A クラブ向けの「第1会見」は会見室で開かれているが、「第2会見」のほうは大臣室で行われているんだよね。

 

B 第2会見に出席する記者は毎回20人〜30人。フリーやネットのほか、雑誌や業界紙、海外紙と多様なメディアが参加していて、質問もバラエティーに富んでいる。

 

C 雰囲気はどんな感じなんだろう?

 

B 第1会見の様子は庁舎内のテレビで見ることができるが、第1と第2ではだいぶ雰囲気が違う。第1会見では亀井金融相はピリピリしていて喧嘩腰だが、第2会見はリラックスムードで冗談もよく出る。クリスマスの1225日の会見では、ネット中継向けに「投げキッス」まで飛び出した。

 

A 第2会見は大臣室でソファーに座って話すから、場所の違いというのも影響しているのかもしれないね。

 

B 「権力側のペースで会見が進められている」という指摘もあるが、大臣の本音が出やすいというメリットもないわけではないと思う。第1会見と第2会見はどちらも金融庁のサイトで発言が公開されているので、どちらが優れているかは、実際に読んで比較してもらうといいだろう。

 

C 記者会見の発言録といえば、第2会見のほうは質問した記者の社名と氏名が掲載されている。

 

B これはフリージャーナリストの岩上安身さんの提案によるものだ。会見する大臣は顔と名前をさらして答えているのだから、質問する記者も名前を出して責任の所在をはっきりさせるべきだ、という考え方にもとづいている。

 

A 第2会見のほうはニコニコ動画がネット中継しているから、その時点で名前が外に出てしまうんだけどね。

 

B 一応ルールでは、もしどうしても名前を知られたくない場合には、名前を隠して質問することも認められている。だが金融庁の職員によると「名前を出したくない」と言った記者はいままでに一人もいないそうだ。

 

C 会見録に記者の名前を出すルールは、外務省でも取り入れたそうだね。

 

B ただ、記者クラブの中には、自分の名前が会見録で公開されたり、ネット中継でそのまま流れてしまうことに抵抗感があった記者もいたらしい。

 

C それはなぜ?

 

B 個人名が出るとネットで誹謗中傷されるのではないかという漠然とした恐怖心があったようだ。同様の意見は他の記者クラブでも聞いたことがある。

 

C やっぱり大手マスコミの記者はネットに不信感をもっているのかな。

 

■参加できても質問できない「奇妙なルール」

 

A 外務省、金融庁とオープン化が進んだが、他の省庁の動きはどうなっているのか。

 

B あまり話題になっていないが、法務省でも大臣会見がオープン化されている。記者クラブの説明によれば、従来からオープン化されていたが、外務省や金融庁の動きを受けて、改めて外部にも開放することを確認したということだ。

 

A そのほかでは、環境省と総務省でオープン化に向けた動きが進んでいる。

 

B 環境省は小沢鋭仁大臣が9月に会見オープン化を記者クラブに提案しているが、まだ実現にいたっていない。対照的に、総務省は紆余曲折があったものの、20101月から大臣会見をオープン化することになった。

 

C それまでは記者クラブ以外はオブザーバー参加ということで、会見に出席できても質問ができなかった。これは総務省だけでなく、他の省庁のほとんどで実施されている「奇妙なルール」だ。

 

B 12月になって実際に会見に行ってみると「記者として参加しているのに質問できない」という不合理さが身にしみた。そこで会見終了の合図があった瞬間に手をあげて「問題提起」をしてみた。

 

A 「質問できないので、問題提起をさせていただきます」と言って、記者クラブ向け以外の「もうひとつの会見」を開いたらどうかと提案したわけだね。

 

C 周りの反応はどうだった?

 

B ピーンと緊張感が走ったが、特に制止されることはなかった。原口一博総務相も最初は驚いたようだったが、きちんと受け止めて「会見をもっとオープンなものにしたい」という自分の意見を述べてくれたよ。

 

A 「インターネット中継も大歓迎」と言ったそうだね。総務省は情報通信政策を司る役所なので当然ともいえるが、映像配信という点で競合するテレビ局の中には不満をもっている社もあるようだ。

 

B 会見が終わったあと、ある新聞社の記者から「良かったじゃないですか」と言われた。その記者は「自分はオープン化に賛成だが、反対している社もあるのでなかなか前へ進まない」と話していた。

 

A そんなこともあったが、結局、総務省の記者クラブは20101月から大臣会見のオープン化を決めた。参加できるだけでなく、質問もできるようになった。

 

C 総務省も大臣からの提案がきっかけとなっているが、記者クラブが内部で協議して自ら開放することを決めたのは、外務省や金融庁と違う。総務省のクラブは、正会員だけで30社もある。幹事社に話を聞いたが、意見をまとめるのに相当苦労したらしい。保守的といわれる記者クラブが主体的に開放した点は評価してもいいのではないか。

 

 

4−3 首相官邸OKすれば他省庁も一気にオープン化? 記者クラブ問題座談会(下)

20091231日 J-CASTニュース)

外務省から始まった「大臣会見オープン化」の波は少しずつ、他の省庁にも広がっている。長年にわたって記者会見を独占してきた記者クラブは、旧政権にとってかわった閣僚やネット時代に生まれた新興メディアによって、門を開くことを強く求められている。その姿は150年前、異国からやってきたペリーに開国を迫られた江戸幕府のようだ。記者クラブは今後、どう対応していくのか。

 

A   外務省、金融庁、総務省と記者会見のオープン化が進んできたが、肝心の「首相会見」の見通しは?

 

B   鳩山首相は1224 日の会見で「来年はもっとオープンにする」と明言した。それとは別に、官邸の政務三役が「今年度中にオープン化するから、もう少し待ってくれ」とあるジャーナリストに言ったという話もある。

 

C   首相会見を主催しているのは内閣記者会、つまり記者クラブなので、政府側の意向だけでは決められない。おそらく記者クラブは抵抗するだろうから、本当にオープン化が実現するか、まだ予断を許さない。

 

A   だがもし首相官邸の門が開けば、他の省庁も一気にオープン化に向かう可能性が大きいね。

 

C   だが、役所の中にはオープン化したくないところもあるだろう。特にガードが固いのが、警視庁と宮内庁だ。警視庁には以前、J-CASTニュースも「記者会見に参加させてほしい」と申し入れたことがあるが、木で鼻をくくったような対応だった。

 

A   宮内庁も「菊のカーテン」という別称があるほどなので、そう簡単にオープン化には応じないだろう。

 

C   ただそれ以外の省庁は、首相会見がオープン化されれば、同調せざるをえなくなる。やはり官邸の会見が開かれるかどうかが、大きなポイントといえる。

 

B   政府以外も変わりつつある。自民党は野党になってから、総裁や政調会長の記者会見がクラブ以外にも開放されるようになった。面白いのは、入り口にいる守衛の態度まで変わったこと。以前は冷淡な感じだったが、いまは笑顔で迎えてくれる。

 

A   国民新党も広報には積極的なようだね。なにしろ記者クラブと喧嘩して「もうひとつの会見」を強行した亀井金融相が代表だから、記者クラブ以外のメディアにも寛容だ。

 

B   その一方で、旧態依然としているのが社民党だ。党首や幹事長の定例会見が開かれているが、主催は「与党クラブ」と呼ばれる記者クラブだ。政権交代前は「野党クラブ」が仕切っていたというが、社会党以来の慣行をそのまま続けているということなのだろう。

 

新たに参加する記者の力量が試されている

 

C   記者会見をオープン化するうえで、問題となるのが参加資格をどのように設定するかだ。クラブ以外の者の参加を認めるといっても、セキュリティやキャパシティの観点から無制限に許可するわけにはいかないだろう。

 

A   その点、外務省と金融庁は参加基準が異なっている。外務省は日本雑誌協会や日本インターネット報道協会などいくつかの報道団体に加盟しているメディアか、その媒体で記事を書いている記者であることを参加条件としている。一方、金融庁の基準はそこまで形式的ではない。個々の記者から参加申請を受けるたびに、それまでの実績をみてケースバイケースで判断している。結果として、金融庁のほうが広く参加を認めることになっているが、特に問題は起きていない。

 

C   1月から新たにオープン化する総務省は、外務省とほぼ同じ基準だというが、これだと参加が認められないジャーナリストも出てくる。ただ、どんな基準がいいか一概には決めにくいので、試行錯誤しながら基準を考えていくしかないだろう。

 

A   記者会見がオープン化されたからといっても、それだけで記者会見の質が上がるわけではない。新たに参加するようになった記者がどんな質問をするのか、その力量が試されているともいえる。

 

B   記者クラブ問題に長年かかわってきたビデオジャーナリストの神保哲生さんは外相会見が開放されたとき、「ボールは投げられた。それをどう打ち返すか。今度は我々のほうが試される番だ」と話していたが、そのとおりだと思う。

 

「個人的にはオープン化に賛成」という記者たち

 

C   今回の一連の動きを通して「記者クラブ問題」が大きくクローズアップされるようになったという側面もある。特にネットでは反響が非常に大きかった。

 

A   ネットだけでなく新聞各紙も、記者クラブや記者会見オープン化の動きについて、特集を組んで紹介した。産経新聞は1030日付けの紙面で「記者クラブ制度は必要だと思うか」というアンケートの結果を紹介したが、その結果は「NO(不要)」と答えた人が78%にも達していた。産経はよくこの結果を掲載したと思う。

 

B   だが、ほとんどの新聞は1回特集記事を書いて終わりという感じで、個々の具体的な動きをしっかり伝えているとは言いがたい。

 

A   テレビに至っては、完全に「見て見ぬふり」を決め込んでいる。大臣の記者会見で記者クラブに関する発言が出ても、その部分は決して放送されることはない。

 

C   その意味では、会見がオープン化された結果、ネット中継やアーカイブ動画で会見内容がそのまま見られるようになったのは画期的だといえるね。

 

B   新聞やテレビにしてみれば、記者会見のオープン化は既得権益の侵食につながるので、消極的な報道になってしまうのは当然ともいえる。ただ、記者クラブの記者に話を聞くと、「個人的にはオープンにしたほうがいいと思っている」という人が多い。

 

A   一記者として個人的にはオープン化に賛成でも、社内事情やクラブ内の他社との関係で積極的に行動するわけにもいかない、ということだね。また会社の仕事で手一杯で、記者クラブの改革のために使う時間やエネルギーはほとんどない、というのが実情だろう。

 

B   ニューヨークタイムズのマーティン・ファクラー東京支局長も「大きい新聞の記者とよく話すが、彼らも本音では今の記者クラブ制度が好きじゃないと思う。ただ、彼らは自分の会社に反対できないから、その本音をなかなか公の場で言えない」と話している。

 

A   会社によっても見解は分かれている。朝日新聞の930日付けの記事によれば、朝日新聞や日経新聞、共同通信は記者会見オープン化に賛成の立場だが、読売新聞や時事通信は消極的な姿勢をみせている。

 

C   そうはいっても、時代の流れからすると記者クラブ主催の会見も「オープン化」は避けられないだろう。ジャーナリストの上杉隆さんなどはさらに進んで「民間の親睦団体にすぎない記者クラブが公的機関の会見の主催権をもつのはおかしい」という主張をしている。

 

役所が記者会見を主催すべきなのか?

 

A   どの役所も外務省のように自ら会見を主催すべきだという意見だが、これには異論もある。記者クラブ側は「役所が主催すると、会見を恣意的にコントロールされる恐れがある」と反論している。

 

B   だが実際に会見に参加してみると、クラブ主催だからといって権力側と緊張感のあるやり取りができているかどうか、疑問も感じる。

 

C   かつて新聞記者として記者クラブに所属した経験からすると、記者会見では政治家への配慮や他社との相互牽制が働くことが多い。重要な質問はあえて記者会見では聞かずに夜回りのときにぶつけようという思惑もあり、質問を自己規制してしまうことがある。

 

B   ある省庁の記者クラブの記者も「クラブの内部にいるとどうしても他社の目が気になって、空気を読んで質問するようになってしまう」と話している。

 

A   逆に役所や政治家が主催しているからといって、厳しい質問が出ないというわけでもない。たとえば民主党の小沢幹事長の会見は党主催だが、記者からは天皇特例会見や政治資金問題などについて、小沢氏が嫌がる質問がよく出ているよ。

 

C   重要なのは、会見の主催が役所かクラブかということではなく、そこに参加する記者の姿勢ではないか。

 

B   実は、記者クラブの幹事をつとめる記者からも「役所に会見を主催してもらいたい」という声が出ている。記者の本来の仕事からすれば、会見の進行役をしたり、参加の可否を判断したりするのは不慣れな作業なので、負担感が大きいようだ。

 

A   むしろ役所のほうが、記者登録などの事務作業やルール作りに慣れているし専門のスタッフもいるので、記者クラブが無理して「会見のオープン化」を引き受けなくてもよいのではないか、という考え方もある。

 

C   いずれにせよ、「開かれた会見運営」は必然の流れだろう。ただ、セキュリティや誰を参加させるのかという参加基準の解決には少々時間はかかりそうだ。

 

 

5.またウソがバレた!日本の大マスコミの「米国激怒」報道

201018日 日刊ゲンダイ)

 沖縄・普天間基地移設問題で、鳩山政権の先送り方針に「米国激怒」と連日煽(あお)る大マスコミ。だが、米国務省ホームページの記者会見を見ると、ア然とする光景が映し出された。怒っているのは米国政府じゃない、日本の大マスコミの特派員記者だったのだ。

 

 米国務省のホームページではクローリー国務次官補と各国記者たちのやりとりの詳細がビデオと文書で確認できる。例えば昨年12月15日の内容はこんな感じだ。

 

日本人女性記者「日本政府は、普天間基地の新しい移転先を検討している。米国は受け入れられるのか」

 

クローリー次官補「現存する計画があり、それを進めることがベストだと考えている。しかし、われわれは日本政府と協議を続けていくつもりだ」

 

 この部分だけ見ても、米国は決して“激怒”していない。むしろ日本政府が打ち出した新たな方針に対し、現実的な対応を取ろうとする様子が分かる。しかし、呆れるのはその次の質問だ。

 

女性記者「私たちは皆、(在日米軍再編)ロードマップが“ベスト”だと知っている。しかし、日本政府は新しい移転先を検討しているんです」

 

 なんて言っているのだ。この「私たちは皆」(All of us)とは一体誰を指すのか。鳩山政権が見直しを打ち出した以上、少なくとも日本政府じゃないことは確かだ。当然、国民の総意でもない。それなのに「ベスト」と言い切っているからワケが分からない。

 

 そういえば、1週間後の12月21日、藤崎駐米大使がヒラリー国務長官に「呼び付けられて叱られた」一件も、「呼んでない。大使が立ち寄った」と、このクローリー国務次官補が否定したものだ。藤崎大使の一人芝居がバレたわけだが、あの一件でも日本の大マスコミは一方的な藤崎大使の発言報道だけで終わらせてしまった。日本の国民は、朝日や読売を見る前に、米国務省のホームページを見た方が正確な情報が得られるというものだ。

(日刊ゲンダイ201015日掲載)

 

 

6.経営不振に記者クラブ問題 海外メディア続々「日本離れ」

2010110日 J-CASTニュース)

外国メディアの「日本離れ」が加速している。米大手紙や「タイム」といったメジャーな雑誌が、続々と東京支局を「店じまい」しているのだ。この背景には、メディア業界の不振があるとは言え、「関心が中国に移っているのはもちろん、記者クラブなどの『取材のしにくさ』が一因。このままでは日本の情報発信力が低下するばかり」と危惧する声が高まっている。

   財団法人フォーリン・プレスセンター(FPC)の調べによると、日本で活動している外国メディアの記者は188機関・570人(091020日現在)。一見すると多いようにも見えるが、ここ数年で東京支局を廃止する例が相次いでいる。

米タイムもニューズウィークも東京支局を閉鎖

   例えば部数では全米第4位のロサンゼルス・タイムズは08年秋、東京支局を閉鎖。日本関連で大ニュースが起きると、ソウル支局の記者が東京に出張して取材するという。ニューヨーク・タイムズやワシントンポストも、東京での取材人員を縮小している。

   ここ12年ほどを見ると、それ以外にもシドニー・モーニング・ヘラルド(豪)、オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(同)、ニューズウィーク誌(米)といった報道機関が東京支局の閉鎖に踏み切っている。

   また、朝日新聞が1017日に報じたところによると、国際週刊誌としてはニューズウィーク誌と同様に有名な米タイム誌も、101月に、東京支局を閉鎖する。

   このような現状に、日本の影響力低下を危惧する声があがっている。

   例えばニューヨーク・タイムズ東京支局での勤務経験もあるジャーナリストの上杉隆さんは、タイムの支局閉鎖に

「タイムもですか…」

と落胆した上で、閉鎖の背景を

「経営難に加えて、中国に比べて、各社が日本を取材するためのインセンティブが落ちている、ということがあります。加えて、日本特有の記者クラブ制度によって、会見に出られないことが多々ある。これでは、記者は記者クラブのない中国などに流れてしまいます」

と説明。

一度出て行ったメディアは戻ってこない

   つまり、(1)経営難(2)中国に関心が移っている(3)日本は取材がしにくい、といった大きく3つの理由があるとみている。さらに、「閉鎖後」についても悲観的だ。

   「支局を閉じるのは簡単ですが、開いたり復活させるのには非常に労力がかかります。一度出て行ったメディアは、まず戻ってこないと思ったほうが良いでしょう。実は自分が勤務していたニューヨーク・タイムズの東京支局では、日本以外にも韓国など周辺国をカバーしていました。相対的に韓国の情報については薄かった訳ですが、今後は逆に日本についての情報が薄くなり、日本の情報発信力が相当落ちてしまう。鳩山政権では記者会見のオープン化に向けての取り組みを進めていますが、もう手遅れなのではないでしょうか。もっとも、この責任を負うべきは、一義的には(会見を閉鎖的にしてきた)メディアの側だと思いますが…」

 

 

7.辺野古移転の現行案 当時の自公政権と沖縄県で「合意ナシ」

2010112日 日刊ゲンダイ)

●民主党政権の会合で防衛省が“白状”

 鳩山首相が方針先送りを決めた沖縄・普天間基地移設問題で、衝撃の新事実だ。新たな移設先を検討する民主党政権の政府・与党会合で、現行の辺野古移設計画(V字案)は、当時の自公政権と沖縄県の間に「合意ナシ」だったことが分かったのだ。

 大マスコミはなぜか一行も報じないが、驚きの事実が確認されたのは6日。首相官邸で行われた「沖縄基地問題検討委員会」だ。この席で防衛省は、06年5月に当時の沖縄の稲嶺恵一知事と額賀福志郎防衛庁長官が交わした「在沖米軍再編に係る基本確認書」について、両者間で「100%合意したとは言えない」と明かしたのだ。

「これは大変な話です。この確認書はその後、日本政府が米側に『移設計画は沖縄も賛成』と説明する根拠に使われた。仮に今回の防衛省の説明通りなら、自公政権は県の合意もなく勝手に計画を決めたことになるし、鳩山首相が先送りを決めたことで『日米同盟の危機』と大騒ぎしたのは一体何だったのかということにもなる。自公政権はもちろん、今ごろ非を認めた防衛省の責任は重大ですよ」(沖縄県政事情通)

 それにしても、防衛省が今になって“白状”したのはなぜか。普天間問題に詳しい前衆院議員の保坂展人氏はこう言う。

「24日に投開票される名護市長選では、辺野古移設容認の現職の苦戦が予想されている。そんな中で計画を強行すれば地元住民の反発感情が高まり、機動隊配備という事態になりかねません。防衛省も現実的に判断して計画続行は難しいと考えたのではないか」

 鳩山首相が言うように、5月まで時間をかけてジックリやった方がいい。

(日刊ゲンダイ201019日掲載)