官僚と闘う政治の注目情報詳細(2010年2月)
1.テレビの猛反発は必至 総務相「新聞社の放送支配禁止」表明
(2010年1月15日 J-CASTニュース)
「プレス(新聞)と放送が密接に結びついて言論を一色にしてしまえば、多様性や批判が生まれない」。原口一博総務相は2010年1月14日、新聞社が放送局を支配する「クロスオーナーシップ」を禁止する法律を制定したいという考えを明らかにした。
現在は「日本テレビ=読売新聞グループ」というように新聞とテレビが系列化しているが、先進国では異例で「言論の多様化を阻んでいる」との批判がある。もし実現すればメディアの大改革につながるが、オールドメディアの激しい反発が予想される。
「クロスメディアの禁止を法文化したい」
原口総務相は1月14日、東京・有楽町の外国特派員協会で開かれた講演で、新聞・テレビの「クロスオーナーシップ」に関する記者の質問に次のように答えた。
「マスメディア集中排除原則、これを法案化します。そして、クロスメディアの禁止、つまり、プレス(新聞)と放送が密接に結びついて、言論を一色にしてしまえば、そこには多様性も、民主主義の基である批判も生まれないわけであります。これを法文化したいと考えています」
日本では、放送局の寡占化を防ぐ「マスメディア集中排除原則」が総務省令で定められている。原口総務相はすでに、この原則を法律レベルに高める考えを記者会見などで示している。法案の具体的な内容はまだ明らかでないが、特派員協会の会見で、クロスオーナーシップの禁止を法案に盛り込む意向を表明した。
欧米の先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェックを確保するため、新聞社が放送局を系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が設けられている。日本でも、総務省令(放送局に係る表現の自由享有基準)にクロスオーナーシップを制限する規定があるが、一つの地域でテレビ・ラジオ・新聞のすべてを独占的に保有するという「実際にはありえないケース」(岩崎貞明・メディア総合研究所事務局長)を禁止しているにすぎない。
その結果、読売新聞と日本テレビ、朝日新聞とテレビ朝日といった新聞とテレビの系列化が進み、テレビが新聞の再販問題を一切報じないことなどに見られるようにメディア相互のチェック機能が働かず、新聞もテレビも同じようなニュースを流すという弊害が生じている。原口総務相が表明した「クロスオーナーシップ禁止」の法制化は、このようなメディアの歪んだ状態を正す可能性をもつ。
「言論が一色になることはジャーナリズムの世界ではあってはならない」
だが、クロスオーナーシップで利益を得てきた新聞・テレビからは激しい反発が起こることが予想される。テレビ朝日や東京MXテレビで働いた経験をもつ独立系映像メディア「アワープラネット・ティービー」の白石草代表は
「問題はどこまで本格的に踏み込んで規制をするか。欧米のようなクロスオーナーシップ禁止が実現すれば放送業界も大きく変わるだろうが、新聞業界の反発はすごいだろう。現在はまだ大騒ぎになっていないので、騒ぎにならないうちに民放連(会長は朝日新聞出身)がつぶそうとするのではないか」
と推測する。新聞業界の抵抗を暗示するように、新聞・テレビの主要メディアはどこも、原口総務相の「クロスオーナーシップ禁止」の法制化に関する表明を報道していない。講演翌日の1月15日には総務省で定例会見が開かれたが、新聞やテレビの記者からはクロスオーナーシップについての質問は出なかった。つまり、黙殺したのだ。
唯一、ネットメディア「ビデオニュース・ドットコム」の竹内梓カメラマンが質問すると、原口総務相は
「一つの大きな資本体がテレビも新聞もラジオもとると、言論が一色になる。そういうことはジャーナリズムの世界ではあってはならないと伝えられているわけで、いろんな国が出資規制を置いている。そのことについては、私たちもしっかりと、国会でも議論いただいている。その議論をふまえた一定の結論を出していくということを言ったわけです。主要メディアが報じなかったかどうかは、私のコメントできるところではありません」
とクロスオーナーシップ禁止の目的について、改めて説明した。実は、前日の特派員協会での質疑応答で原口総務相の発言を引き出したのも、ビデオニュース・ドットコムを運営する神保哲生さんだ。神保さんは
「原口さんの回答の全体的な印象として『既得権益を壊さないといけない』という強い意志が感じられた。政治家がメディアに手をつっこむのはリスクが大きいが、これはぜひやりたいと考えていると思う。ポイントは、このような問題があるという認識が世論に広がるかどうかだ。新聞・テレビがまったく報じようとしないなかで、どのように世論形成していくかが課題となるだろう」
と話している。
<関連記事>(編者注)この情報は殆どの大新聞には掲載されていないようですが(すなわち無視しているようですが)、日本経済新聞に次の記事が小さく掲載されました。
新聞社の出資規制議論へ(2010年1月19日 日本経済新聞夕刊)
原口一博総務相は19日の閣議後会見で「新聞と放送、様々なメディアを同一資本が一色で支配することは言論の多様性に問題がある」と述べ、新聞社による放送局への出資など「クロスオーナーシップ」のあり方を議論する考えを明らかにした。相互出資に関する基準の明確化などを、分科会といった場で検討していくという。
2.<公務員法改正案>首相要求で幹部異動 次官降格も容易に
(2010年2月4日 毎日新聞)
政府が今国会で提出する国家公務員法等改正案の素案が3日分かった。「内閣の重要政策を実現するため」に首相が各閣僚に部長級以上の幹部の異動を要求できる規定を設けるなど、首相官邸の意向を幹部人事に直接反映できる仕組みを明文化する。また、事務次官を局長級と同格とみなし、降格を容易にする。いずれも政治主導・官邸主導で政策立案を推進するため、官僚の人事異動を柔軟に行えるようにする措置で、衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた「新たな幹部人事制度」の輪郭が示された。
素案では「首相または官房長官は、内閣の重要政策を実現するために適切な人材を登用する必要があると判断する時は、任命権者(閣僚など)に幹部職員の任免の協議を求めることができる」と明記。また、任命権者側には幹部の任免の際、「あらかじめ首相及び官房長官に協議する」ことを求めている。
現在、局長級以上の人事では、正副官房長官で構成する「閣議人事検討会議」の了承を経る手続きがあるが、同会議には法的根拠がないため、「幹部職員人事の内閣一元管理」として明文化する。
一元管理の事務を担う内閣人事局長は官房副長官を充てる。政務の副長官が担当する見通しだ。幹部職員の公募は「首相が一元的に実施する」とした。官民人材交流センターは廃止し、「民間人材登用・再就職適正化センター」を設置し、その下に「再就職等監視・適正化委員会」を置いて天下りを監視。
次官級は、局長級と「同一の職制上の段階に属するとみなす」と規定。降格を「勤務実績がよくない場合」などに限る国家公務員法規定に該当しないようにする。麻生政権が昨年の通常国会で提出した改正案(廃案)に盛り込まれた、局長級を降格できる「特別降任」の規定は盛り込んでいない。【小山由宇】
◇国家公務員法改正案(素案の要旨)
■内閣の人事管理機能の強化
1、幹部職員人事の内閣一元管理 首相は幹部職員、各任命権者が推薦した者と、公募に応募した者の能力を審査▽合格者で幹部候補者名簿を作成▽幹部は名簿から任用▽首相、官房長官は、内閣の重要政策実現に適切な人材登用が必要と判断する時は、任命権者に幹部の任免の協議を求めることができる▽任命権者は任免の際、あらかじめ首相及び官房長官と協議▽公募は首相が一元的に実施。
2、幹部職員人事の弾力化 事務次官及び局長に準ずる官職は、同一の職制上の段階に属するとみなす
3、内閣官房に内閣人事局を置き、局長は官房副長官から首相が指名
■国家公務員の退職管理の一層の適正化
1、民間人材登用・再就職適正化センター 内閣府に置き、組織改廃で離職した職員の再就職、官民人事交流を支援▽センター長は首相が指名する閣僚
2、再就職等監視・適正化委員会 センターに第三者機関として置く▽委員長と委員4名は衆参両院の同意を得て首相が任命
3.長妻大臣が語る [サービス向上を目指して 〜日本年金機構の発足について〜]
(2010年2月4日 鳩山内閣メールマガジン第17号)
みなさん、私は、厚生労働大臣の長妻昭です。日々、社会保障等の充実と役所文化を変えるべく奮闘しております。
さて、1月に新たに日本年金機構が発足してから、一ヶ月が経ちました。
日本年金機構の前身の社会保険庁は、50年にもわたり、年金記録の管理を怠り、国民の期待を裏切ってしまいました。政府自身の信頼も地に墜ちました。
背景には、「年金を払ってやる」という、知らず知らずのうちに染みついた傲慢な意識や、お役所仕事の体質があったと思います。
民間会社であれば、はるか以前に倒産していたでしょう。
この度、もう一度、国民の皆様に信頼回復のチャンスを頂いて、日本年金機構として再出発しました。
今後の仕事ぶりを国民の皆様にご覧頂き、この再出発についてご理解を頂く努力を続けなければなりません。
新しく就任した紀陸孝理事長を中心に、社会保険庁から移籍した職員も、新たに1000人以上民間から採用された職員も、共に力を合わせて、国民の皆様の期待に応えるべく、職務に励んでいく必要があります。
国民の皆様の中には、「年金だけが頼り」と祈るような気持ちで年金相談に足を運ぶ方も多くいらっしゃいます。相談員を前にして、十分に説明を尽くせないお客様もいらっしゃるでしょう。
日本年金機構の職員には、目の前のお客様が、自分の親や家族だと思って、真摯に対応していくよう指導してまいります。
お客様の声に耳を傾け、お客様本位のサービスを実践するため、「お客様へのお約束10か条」を掲げ、サービスに努めてまいります。
そして、いつの日にか、国民の皆様から、「サービスを学ぶなら日本年金機構に学べ」と言われる組織にしたいと思っています。
お客様本位のサービスを実現するためには、国民の皆様の厳しいご指摘が欠かせません。日本年金機構と厚生労働省は、国民の皆様の声を募集しております。メールでも是非、皆様のご意見をお寄せください。
日本年金機構と厚生労働省は「安心できる年金」という共通の目標に向かって二人三脚で取り組んでまいります。
4.「政治主導確立法案」決定、国会に提出
(2010年2月5日 読売新聞)
政府は5日の閣議で、内閣官房に外交・内政の基本方針を検討する国家戦略局を設置するなどとした「政治主導確立法案」を決定、衆院に提出した。
今年度内の成立で、4月1日施行を目指す。
同法案は内閣法、内閣府設置法、国家行政組織法などを改正するもの。首相官邸に国会議員や民間人を集中投入し、「官邸主導」の政権運営を目指す狙いだ。
政治主導の仕組みを作る立法措置の第1弾という位置づけで、来週以降、政府は国家公務員の幹部人事を一元化する「内閣人事局」新設が柱の「国家公務員法等改正案」を、与党は副大臣と政務官を計15人増員する「国会改革関連法案」を国会に提出する予定だ。
政治主導確立法案は、国家戦略室を「局」に格上げし、現在3人の官房副長官を1人増員、そのうち1人を局長とする。局長の下には政務官級の「国家戦略官」を置く。
また、民間人の政治任用を念頭に首相補佐官の枠を現行の5人から10人に倍増、政務三役を補佐する民間人ポストとして内閣官房に「内閣政務参事」と「内閣政務調査官」、各省庁に「政務調査官」を新設する。
このほか、行政刷新会議を内閣府に置き、法的根拠を明確にする。内閣府に税制調査会を設置し、経済財政諮問会議を廃止することも盛り込んだ。