官僚と闘う政治の注目情報詳細(20105)

 

1.検証チーム発足!民主党いよいよ特別会計176兆円に切り込む

2010412日 日刊ゲンダイ)

 霞が関は戦々恐々だ。民主党が、特別会計の抜本的な見直しに乗り出す。特会の検証チームが発足したのだ。まもなく始まる事業仕分け第2弾の陰に隠れて目立たないが、これは画期的なことだ。文字通り、予算の全面組み替えが視野に入ってくる。

「国の予算というと、一般会計ばかりが問題になりますが、特別会計の方が規模としてはずっと大きい。一般会計の10年度予算は約92兆円ですが、特別会計は約381兆円と、4倍規模。特会の歳出純計は176兆円で、国債償還費を除いても、102兆円に上ります」(財務省関係者)

 特会は、各省庁が特定の事業を行うために設けられた目的限定の会計だ。言うまでもなく、原資は、われわれが納めた税金や保険料である。しかし、一般会計と違って国会のチェックも甘いため、所轄官庁は好き勝手に使い、余剰金を貯め込んできた。ここから天下り先の独立行政法人にも予算が回されている。特会のおかげで役人が甘い汁を吸い、デタラメがまかり通ってきたともいえる。

「JAL破綻で注目を集めた空港整備の特別会計がいい例です。特会でムダな空港を造り続け、自民党の族議員は空港建設で業者に利益を誘導。官僚たちは関連団体にゾロゾロ天下ってきました」(霞が関事情通)

 民主党は、衆参両院の財務・決算関係の委員会に所属する約100人で、17ある特別会計ごとに検証グループを結成。ムダを洗い直し、11年度予算編成の財源確保につなげる構えだ。

 まずは、GW明けに見直し第1案を出す予定だ。

 特会検証チームの一員で、メガバンク出身のため企業再生や財務諸表に精通している福嶋健一郎衆院議員は「総力を挙げて切り込む」と、見直しの方針をこう語る。

「特別会計は戦後復興期から高度経済成長期に設けられたものが多く、すでに役割を終えているものがある。特会を全廃することを前提に見直しを進めます。仮に特会として残すにしても、規模が適正なのかどうか、使い道が正しいか、ムダな人件費を計上していないかなど、企業のバランスシートを見るように、ひとつひとつの項目を細かくチェックしていきます。ストックとフローの面からも、厳しく審査する。かなりの財源が捻出できると思います」

 

●もう官僚にはデタラメはさせない

 一体どのくらいの財源が確保できるのか。「特別会計への道案内」などの著書がある元国会議員政策秘書の松浦武志氏は、こう指摘している。

「特別会計の資産から負債を差し引いた約100兆円のストックが埋蔵金と呼ばれるものですが、このうち外為特会の長期預託金など少なくとも17兆円はすぐに取り崩せる。フロー部分でも、毎年4兆〜6兆円程度は簡単に浮かせられるでしょう」

 ざっと20兆円の財源は確保できる計算だ。民主党には、「金融ボーイズ」と呼ばれる金融業界出身の議員が数多くいる。金融のプロの目で特別会計を見直せば、いくらでも財源は出てくるはずだ。既得権益を侵される官僚の抵抗は凄まじいだろうが、ここで政治主導を発揮できれば、日本の形は大きく変わる。

(日刊ゲンダイ201049日掲載)

 

 

2.厚労省、局ごと約束 達成の成否、人事評価に反映

2010421日 朝日新聞)

 長妻昭厚生労働相は20日、厚労省と局の組織目標を公表した。局ごとに政策に関する目標を定め、達成の成否を局長の人事評価に反映させる方針。同省ホームページにも掲載し、いわば厚労省版マニフェストとして国民に公開する。

 目標を半年毎に更新することで新たな成果も迫られることになり、前例主義で事業の継続性を重視する「役所文化」がはびこる霞が関では異例だ。

 省の組織目標は「役所文化を変えて、生活者の立場に立つ」などの全体像を示している。局ごとの目標達成の期限は原則として9月までの半年間。各局の提案を受けて政務三役が決めた。

 局の目標はそれぞれ5〜9項目ある。「医師不足の実態調査の公表」(医政局)、「2011年度以降の子ども手当ての制度設計」(雇用均等・児童家庭局)、「失業者向けの住宅手当て制度の支給件数増」(社会・援護局)、「介護予防事業の新たな取り組み実施」(老健局)など。

 1年間を期限にした数値目標もある。「ハローワークでフリーター23万人を正規雇用化」「ハローワークの職業紹介による就職率26%以上」(いずれも職業安定局)など。また、生活者目線で制度を見直すために、7月に省内に「アフターサービス室」を新設する。

 目標を設定したのは、長妻氏が昨年10月に導入した厚労省独自の人事評価制度を踏まえたもの。新人事評価では、全職員が半年ごとの業務目標を立てて、「コスト意識・ムダ排除」などの視点を取り入れる。その評価基準に、組織目標が活用される仕組みだ。今後は課や室の目標についても順次定め、半年ごとに更新していくことになる。

 

 

3.民主「公務員庁」新設へ 参院選公約 労使交渉を担当

2010422日 朝日新聞(夕))

民主党は22日、公務員制度改革の一環として、労使交渉を担当する「公務員庁(仮称)」を設置する方針を固め、参院選のマニフェストの原案に盛り込んだ。公務員の労働基本権を回復する一方で、労使交渉による給与カットで国家公務員の人件費の2割削減を進める。

 原案は、党の地域主権・規制改革研究会(玄葉光一郎会長)が作成した。マニフェストは5月末に正式決定し、来年の通常国会に関連法案の提出を目指す。

 「公務員庁」は、幹部職員人事を一元管理する内閣人事局とは別に内閣に置く。定員管理を行っている総務、財務の両省の一部を統合。給与・手当・退職金の規定などを見直すとともに、担当大臣が、民間企業の経営陣と同様に労使交渉の当事者となる。

 公務員の給与は中立機関の人事院の勧告に基づき決める。公務員庁が設置されると、人事院の仕事は公務員共通の研修や官民の給与比較の研究などの分野に限定される。

 民主党は昨年の衆院選で、「非現業」の公務員に、労働基本権のうち争議(スト)権と団体交渉権の一部である協約締結権を付与することを公約する一方で、国家公務員の人件費の2割削減を打ち出した。国の出先機関を地方に移管するだけでは不十分で、労使交渉で踏み込む必要があると判断した。(山下剛)

 

 

4.国家公務員の新規採用半減へ=11年度、人件費抑制−原口総務相

2010427日 時事通信)

 原口一博総務相は27日の閣僚懇談会で、2011年度の一般職の国家公務員の新規採用を、09年度(9112人)比でおおむね半減させる方向で調整する方針を示し、各閣僚に協力を要請した。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で国家公務員の総人件費2割削減とともに、定年まで働ける環境づくりや天下りあっせんの全面禁止を掲げている。退職者が減少する中、4500人以上という異例の採用大幅抑制に踏み切ることで、人件費抑制を目指す。

 閣僚懇で鳩山由紀夫首相は、積極的に取り組むよう強く指示。原口一博総務相は、閣議後会見で、「真に必要な国家機能を確保しつつ厳しい抑制を行う」と述べ、今後各府省と調整を進める考えを示した。

 方針では、政府が原則廃止を目指す地方出先機関の新規採用は原則2割以内とする。このほか▽本省で企画立案にかかわる職員▽専門的な知識を生かして行政サービスを提供する専門職種▽再任用や官民人事交流の受け皿となる任期付き職員−に分類し、それぞれ抑制率を定める。

 ただ、影響の大きい府省からは「移行期として現実的な対応をしてほしい」(前原誠司国土交通相)、「地方機関の削減率が多くなっている。戸別所得補償を実施する上で配慮してほしい」(赤松広隆農林水産相)との声が早くも上がり、今後の調整が難航する可能性もある。

 

 

5.子ども手当「トンデモ申請」で大騒ぎするマスコミの悪意

2010429日 日刊ゲンダイ)

「ついに出た」とうれしそうに報じた不謹慎なメディアもあった。兵庫県尼崎市に住む50歳代の韓国人男性が先週、554人分(8642万4000円)もの子ども手当を申請していた。市役所は「制度の趣旨に合わない」と門前払いしたが、マスコミは「予想されたトラブルが早くも出た」と大喜び。「それ見たことか」「言わんこっちゃない」と鬼の首を取ったようである。

 まったく、この国のメディアはどうかしている。たとえこの男性がどれだけ窓口で粘ろうとも、都内で一戸建てを買えるほどの金額は右から左に支給されないのだ。子ども手当には受給要件がある。厚生労働省のホームページでも、「母国で50人の孤児と養子縁組を行った外国人については、支給要件を満たしません」と書かれている。どれだけ大金を要求されても、「条件を満たさない」と突き返して終わりなのである。それを「大変だ」「とんでもないことになる」と大騒ぎすれば国民は混乱する。

「子ども手当をめぐっては、早くから養子縁組を使った不正受給の可能性が指摘されていました。だからこそ、政府は基準を設けた。受給には『子どもと親の間に生活の一体性があること』という要件があり、基本的には子どもと親が同居していないとダメなのです。ただし、仕事や学校の都合で別居はOK。在日外国人の場合も同じですが、来日前に同居していた事実があり、帰国後は同居すると認められる必要があります」(政府関係者)

 この男性が不正受給を計画したのかどうか分からないが、シレッとして常識外れの“要求”をする感覚は理解に苦しむ。普通だったら「トンデモ申請に待った」と報じられておかしくない。だがそれも、民主党嫌いのメディアの手にかかると、「子ども手当は欠陥制度」という論調になるのだ。内閣支持率が落ちるのもムリはない。

(日刊ゲンダイ2010426日掲載)