官僚と闘う政治の注目情報 (201011)

 

1.言いたい放談 愛川欽也

2010930日 東京新聞)

  昨年、政権交代が起きて長妻さんは厚労相になられ、僕はいよいよ長妻さんの活躍が見られると期待していた。ところが前に官僚の厚い壁があって、長妻さんの姿が少しずつ隠れてしまった。僕は残念でたまらない。民主党の幹部は長妻さんを見捨てて、官僚を守ったとしか思えない。長妻さんがどんなに一人で頑張っても、長い自民党政治の中で存分にやってきた官僚体質はそう簡単に変わらないと思う。それを変えようとして働き始めた長妻さんを、民主党幹部は応援しましたか?助けようとしましたか?

 

 

2.抵抗官僚、更迭も辞さず 前原外相、強硬姿勢を誇示

2010106日 朝日新聞)

 前原誠司外相は5日、日本外国特派員協会(東京)での質疑応答で「言うことを聞かない役人は、人事も含めた毅然とした対応をとる」と述べた。「伏魔殿」ともいわれる外務省で、自らの外交方針に抵抗する官僚は更迭も辞さない「強行姿勢」を誇示した。

 

 

3.”天敵を追い払った厚労省”

2010108日 週刊朝日)

 確かに、長妻氏の官僚たたき、特に天下りやムダを排除する姿勢は、郡を抜いて強硬だった。

 「厚労行政を隅々まで変える」ために立ち上げられたプロジェクトチームは、実に37。年金記録回復委員会に始まり、予算監視・効率化チーム、業務改善推進プロジェクトチーム・・・・・。

 退任直前の9月になっても、同省所管の独立行政法人や公益法人などの廃止を視野に入れた整理合理化委員会を立ち上げた。

 天下りを「現役出向」にすり替えた退職管理基本方針では、どの省も、受け入れ先の法人名をズラッと列挙した。ところが厚労省はゼロだった。

「菅さんは長妻さんを厚労相から更迭しても、首相補佐官に起用する意向でした。でも、仙谷さんが『この政権は官僚とうまくやらないといけない。あそこまで対立しちゃダメだ』と、その人事案を突っぱねたそうです」(前出の官邸周辺)

 長妻路線と仙谷路線は百八十度違ったようなのだ。

 昨年の政権交代で、国民が期待したのがどちらだったかは言うまでもない。

 

 

4.「長妻ルール」形骸化 「官僚主導に」逆戻り?

20101015日 日本経済新聞)

 厚生労働省で長妻昭前厚労相が命じた省内ルールをなし崩し的にやめる動きが進んでいる。政務3役が週末に大量の職員を登庁させることがなくなったほか、職員が政治家と接触したことなどを大臣に報告するルールの厳守も緩んでいる。省内からは「官僚主導が完全に復活した」(厚労省幹部)との声もでている。

「厚労省改革」を訴えて乗り込んできた長妻氏が去り、官僚が全面に出て動き始めた。政治主導の後退なのか、長妻氏の空回りだったのか。細川氏の手腕が問われる。

 

 

5.長妻昭・前厚生労働大臣 核心インタビュー

年金記録問題やムダの削減では手応えを感じた。社会保障改革への提言を続け、国民に信を問いたい」

20101022日 DIAMOND online

――年金改革と共に注目された取り組みが、厚生労働省の「体質改善」だ。

 

 これまでは、必要のない天下り先を残したり、予算を余らせずに使い切ったりと、役所を肥え太らせる官僚が評価された。こういった役所体質を変えれば、厚生労働行政は確実に改善されると考え、様々な取り組みをした。

 大きな取り組みは、今年4月に「省内事業仕分け室」を設置したことや、厚労省の管轄下で天下りの温床となっていた独立行政法人などの役員ポストを厳しく削り、民間から公募することを始めたことだ。

 職員の人事評価については、従来の基準を変えて、コスト意識、業務改善能力、新政策立案能力、コミュニケーション能力、情報公開能力など「厚労省に不足する7つの能力」を評価軸にして、優秀な人材を積極的に起用した。

 たとえば今年7月末の人事では、「省内事業仕分け室」の初代室長を全省庁で最年少の官房長に抜擢、また、ノンキャリアの職員を厚労省始まって以来となる総務課長に抜擢している。

職員に目標を持たせるための組織作りも行なった。政策アドバイザーとしての「大臣政策審議室」、制度改善に役立てる「アフターサービス推進室」、民間人を室長にした「わかりやすい文書支援室」などが立ち上がった。また、「貧困問題は旧厚生省、雇用問題は旧労働省の役割」といった縦割り意識が依然として残る省内の連携を図るため、37のプロジェクトチームを発足させている。

 役所体質を改善するために、国民への定期的な情報公開も重視した。ホームページ上で、これまで無視されていた国民からの苦情やそれに対する改善策、消えた年金がどれくらい戻ったか、日本年金機構が起こした事務処理ミスなどを、原則毎週公表している。

 面白いもので、「前例がないからやらない」と弁解することが多い前例踏襲主義の役所は、逆にいったん前例を作ってしまえばそれをやり続ける組織でもある。これらの取り組みは今後も続けなければならない。

 

――体質改善への取り組みによって、関係者の意識はどのように変わったか?

 

 巨大組織のリーダーは、何度も同じことを言う必要がある。大臣になってから、外部から巨大組織に入った経営者のアドバイスなどを聞きながら、繰り返し自分の考えを述べ、理解してもらえるように努めた。しかし、理解してくれる人もいれば、どうしても理解してくれない人もいた。

 実際、官僚からの反発は強かった。省内事業仕分け室を設けたときには、「自分で自分のムダを削るなんてできない」という悲鳴が聞こえてきた。

 特に反発が強かったのは、天下り規制だ。私が官邸へ働きかけて、全省庁で独立行政法人などの役員ポストを公募するようになったが、厚労省については公益法人についても公募することにしたため、「厳し過ぎる」「いい学生を採れなくなる」と言ってくる幹部もいた。OBから現役の官僚に、「天下り先を減らさないように頑張れ」という圧力もあったと聞く。

痛みを伴う改革は、誰しも嫌なものだ。しかし、政権交代前はいったいどういう状況だったのか。年金記録は消えてなくなっているし、C型肝炎の感染者リストも隠匿されている。あげく、グリーンピアなどの年金保養施設に対して、莫大な年金保険料が流用されている。そんな滅茶苦茶な状況でも、知らぬ存ぜぬの体質だった。

 そういった体質を大転換することは、ゆくゆく厚労省の大きな力となり、道を開くことにつながるはずだ。今後社会保障費は、今の給付レベルを上げなくても年間1兆円ずつ増えていく見通しだ。そんな状況で、厚労省がまだムダ使いや天下りを続けていたら、消費税の引き上げに賛成する国民など出てこないだろう。