自動車専用道路(高速道路)について

 東京都文京区 岡戸 知裕

日本の高速は高速?

欧米では100キロが速度制限つまり高速だという認識はありません。ドイツでは無制限で同じドイツ語圏のオーストリアでは130キロ、フランスでも130キロです。

また基幹線で2車線というのも欧米では非常識です。よって混んで当たり前でしょう。

原因として、日本において自動車専用道路に対する考え方そのものが欠如しているからだと思います。

面白いことに、無料化論議の中で、賛成と言われた方に聞いてみると、大概欧米での生活体験のある方が多いというのは面白い事実です。よって賛成派は少なくなるのかも知れません。

 

世界一高い通行料金で景気回復する訳がない!

フランスも通行料金を徴収していますが、目安として10キロ1ユーロ(125円)で都心から成田まで70キロとして約880円です。成田までは2050円ですからいかに高いか分かると思います。この高額料金が設定されたのは日本が右肩上がりの好景気の時代ですが、実態は上がるどころか景気は急降下で深刻なデフレと2番底に遭遇しています。

この高い通行料金で景気が回復すると思っている人はかなり経済オンチという他ありません。

 

通行料金徴収は二重課税

世界の常識では、ガソリン税は道路建設の為の税金で一般道と専用道路を建設しています。

日本ではさらに通行料金をとって全額高速道路の建設にあてています。

さらに徴収しつづけて、狐や狸しか通らないような場所に高速道路を建設する必要があるでしょうか?

次に二重課税問題があります。通行料を払って専用道路を走っている車両は、同時にガソリン税という道路建設税を支払っており二重課税になります。

ガソリン税には暫定税率というガソリン税に上乗せした税金が負荷されているのもおかしな話です。これも右肩上がりの経済が前提の時代に設定されました。

 

東京の外郭環状線

首都高が混む最大の原因はこの外郭環状線がないということに起因します。

都心まで呼び込んで分岐させるというやり方は実におかしなことで都市の設計がお粗末という他ありません。首都高の60%は通過するだけの車両で混むのは当たり前です。

首都圏にGDPの50%が集中しているという事実から、景気回復を望むのであれば、まずはこの首都圏に対する景気刺激を考えるべきでしょう。現実は車の通りを悪くして、景気回復を阻害し、大気汚染を促進しているわけです。

 

日本は軽自動車大国になる

あまりに高い保有税、走行段階で掛かる通行料やガソリン税、駐車場代金や駐車料金など、考えられるすべての税金や料金を賦課されているのが自動車です。

日本が昭和40年ごろに国際収支が黒字になったのも自動車輸出が始まったせいですが、あまりに高い保有コストの為、今では車離れと軽自動車化現象を起こしています。

あのトヨタでさえリーマンショックの前に国内は赤字で、北米での黒字が国内の赤字をカバーしていた訳ですが、今はカバーできるものは何もありません。

日本人の生活自身、大きく車の生産に頼ってきましたが、これからは難しい状況になるでしょう。それでは次の産業はといってもこれほど裾野の大きい産業は他にありません。

 

高速道路は単なるバイパスである

一般道の混雑を和らげる為にあるのがバイパスの存在であるのにも拘らず、そのバイパスが無料になると混むからダメだという論理が通るのでしょうか?

ある地方都市でバイパスを有料にしたら街中にトラックが入ってきて夜も寝られないという現象がおきたという笑えないニュースがありました。

常識で考えれば混んだ高速には誰も乗らないでしょうし、乗ったら降りようとするでしょう。有料なので降りられないといのが現実です。

 

角栄時代の遺物

日本の自動車専用道路が有料になった経緯は、角栄時代にまだ自動車が高級耐久消費財で、ガソリン税からだけで日本国内に専用道路を建設することが困難だということから有料化になったいきさつがありますが、現代において自動車が人の足として使われるようになった現在も引き続き高額な料金を徴収し続けて良いのかという当たり前の意見と景気という観点からみても高額な通行料金は阻害要因でしかないというのも明白な事実です。

道路建設に使う税金いついては、国道、専用道路を含めて自動車ユーザーが支払ったガソリン税や軽油引取り税から出ているので、車を所有していない人が負担するということはありません。無料化反対論者の中には、道路建設が一般税で行われているのではという誤解があると思います。

大前さんに言わせれば、日本は見えざる税金が高いという表現になりましょうか。

無料化が良いのか悪いのかは東京湾アクアラインが明白に答えを出してます。

1兆円という膨大な建設費を投入し高くて誰も使えない道路を建設しましたが、これを無料化とはいわないまでも例えば500円以下という払い易い金額まで下げれば、1兆円という建設費を返済するだけの通行量にまで増やすことができるのではないでしょうか。

勿論千葉や神奈川に与える経済的な影響は計り知れません。

 

JRや連絡船への影響は?

影響がでるので無料化をやめろというのは、木を見て森を見ずの議論です。

今景気が2番底に突入しているときに政策としてやれることは即実行すべきです。

つまり政府の政策立案者として看過できない経済状況にあるのは確かです。

無料化については遠く信長が楽市楽座を行って域内の景気を良くしたという歴史の教訓もあります。議論の余地はありません。

交通機関は飛行機、新幹線、車との役割分担が基本的にあります。

例えば、福岡に行くには、飛行機、大阪/名古屋までの中距離は新幹線、横浜などの近距離は車または鉄道と一応役割分担があります。

それぞれの交通機関は、競争関係にあり努力してもらわないと生き残れません。

例えば、フランス新幹線TGBには大きな家族割引があり、鉄道による家族旅行を容易にしています。(日本の新幹線の料金は高すぎます)

また連絡船も近距離高速輸送を行うとか、長距離高速輸送という観点では東京-小樽線や東京-福岡線など就航させても良いのではないでしょうか。つまり無料化になると困るというのは、非常に短絡的な意見です。無料化によって競争原理が働くことを期待します。

飛行機と自動車の発達で死んでしまった世界の鉄道事業ですが、日本の新幹線が鉄道の復権という新たな答えを世界に示しました。これも競争原理のなせる業でしょうか。

競争してもらいましょう、日本航空のようにならないように!

 

混雑について

混むということは、人が集まっているということで、経済現象として捉えればむしろ好ましい訳です、混むのがいやなら新幹線に変更するなり、飛行機にすれば良いわけで、高速道路では混むと乗らないという選択肢もあります。

 

環境問題

無料化反対意見の大部分が環境派です。

環境保全については、すでに答えが出ています。つまり石原氏が都内の大気汚染をドラスチックに改善したように、環境保全の達成は排出ガスの規制にあります。

もうすでに電気自動車の時代は目前で、ガソリン車の排出ガスの規制強化と電気自動車への購入促進など早急な改革が必要です。

 

高速道路無料化実験はいつか来た道へ戻るため?

交通量の少ない道路で無料化してもあまり実験として意味を成さないと思います。

例えば北海道では、そもそも高速が必要な地域かどうかというくらいですから無料化しても高速を使うようになるのでしょうか?

良い結果がでなければ今まで通りの高い通行料金で景気回復を阻害し、狐や狸の遊び場になるような高速道路を建設してゆくことになるのでは?

 

地方交付税によらない地方の活性化

高速道路を無料化することにより、それまで料金として徴収されてきた金額が観光地に落ちることになります。これで地方の自立や活性化に大きく貢献することになります。

例えば、1000円高速の影響で青森のマグロで有名な大間では、首都圏からの観光客で混雑し、みやげ物屋や食堂などの売り上げが3倍という結果で出ているとのことです。

つまり今までは中央からの地方交付税や箱物建設によって地方の活性化を目論んできたわけですが、これからは観光の振興によって活性化を図る必要があります。

 

最後に:

内需拡大で必要な政策は長期休暇の取得率をあげること。

いわゆる先進国の中で日本が飛びぬけて休暇取得日数が少ないという悲惨な事実があります。

家族旅行という発想がないのではないのでしょうか。お父さんが働いてばかりでは景気はよくなりませんし、父親の子供に対する影響力はもっとあってしかるべきです。

これからの日本の目標は生活大国になることでしょう。

 

生活大国になることが日本を救う

私は今フランス人と一緒に仕事をしていますが、昨年の彼の夏のヴァカンスは5週間でした。

オーストリアでは週末、アウトバーンでのトラックの走行が禁止になっています。

発想の転換が必要なのは明らかです、でないと新らしい日本に脱皮することができません。明治維新が物語っているように過去の延長線上に日本の未来はありません。

明日の日本を支える産業の育成ということも重要ですが、ひとつひとつの家族の幸せが集まって国全体の幸せにつながるような政策が日本を救うでしょう。