私版注目情報(8月)&コメント
東京都渋谷区 深津 輝雄
@民主敗北、衆参ねじれ(首相続投『消費税説明不足』)(7月12日朝日新聞)
政権交代後、初の大型国政選挙になる第22回参議院選挙では民主党は改選議席を大きく下回り44議席にとどまり、与党議席の過半数を割り込み、衆参両院で多数派が異なる『ねじれ』状態になり、厳しい政権運営になることは確実になった。民主党は参院選直前に鳩山首相と小沢幹事長がダブル辞任し支持率はV字回復したものの、首相の消費税増税10%発言により消費税が争点化し苦戦になった。9月の代表選に向けて、党内対立の激化も激しくなることが予想される。みんなの党は民主党政権への批判票を吸収する形で躍進し、自民党は、改選議席で51議席を獲得し改選議席で第1党になった。
(コメント)
消費税増税発言は致命傷であった。「消費税については、前向きに検討する」だけで充分であった。
財務省に洗脳されたのではないか。参院選で東京地区に立候補された小川敏夫さんが、池袋の会合で言われたことは、今回の参院選は重要だ。もし与党で過半数を取れなければ、3年後の参院選は大勝した後だけに現状維持にならざるを得ない。そうすると6年後にしか挽回の機会はない。民主党に与えられた使命は、財政の安定化ではなく、まずは特別会計に代表されるムダ使いの排除の徹底ではなかったのか。鳩山内閣では、民主党の政策を実行するための予算が捻出できずに、バラマキとか予算の裏付けがないとか批判されたが、官僚との綱引きに負けているとしか言いようがない。
A一括交付金 国が関与(地域主権大綱 自治体の自由度後退)(6月22日朝日新聞)
菅内閣の地域主権戦略会議は21日、地域主権戦略大綱をまとめた。昨年衆院選マニフェストの柱に掲げた『ひも付き補助金の一括交付金化』は来年度から実施を明記。大綱は『明治以来の中央主権体質から脱却し、この国のあり方を大きく転換する改革』と位置づけられる。中でも政府が使い道を決めて配る補助金を自治体が自由に使える財源に改める一括交付金化だ。公共事業など投資関連の補助金は、来年度から、通常経費関連の補助金は2012年度から段階的に一括交付金化する予定。もう一つの目玉である国の出先機関改革では、『原則廃止』を明示した。各府省が所管する機関について、自治体に移せる事業を洗い出す『自己仕分け』を実施、年内に工程を明示、来年の通常国会に法案を提出する予定。
各省庁の抵抗も強く、原案にあった『地域が自己決定できる財源』は削除。『(国が)制度の評価・改善を図る』など制度設計に府省の関与を認める記述が追加され自治体の自由度は原案より後退した。
出先機関改革でも厚生労働省所管のハローワークの扱いが焦点だ。橋下
地域主権改革がめざすのは?
@ 義務づけの廃止 政府が法令で自治体の仕事を縛る→条例など自治体の裁量に委ねる
A 町村への権限の移管 市町村が出来る仕事を都道府県が実施→市町村に移管
B 国の出先機関の原則廃止 河川管理、中小企業支援→二重行政の排除
C ひもつき補助金の一括交付金化 地方への補助金21兆円→自治体の自由裁量
(コメント)
省庁の抵抗でひもつき補助金の一括交付金化も原案より後退した。21兆円の財源を自治体が自由裁量で使えるようにすべきだ。国の出先機関の原則廃止は行政が二重化するので廃止は当然だ。ハローワークの業務も地方移管してサービスを競争させるべきだ。保育所の義務づけは廃止し自治体に移管すべきだ。
B菅政権 壮大な社会実験(『増税で成長』常識を覆すか)(6月25日朝日新聞)
菅政権の経済政策には、『第3の道』、『最小不幸社会』など増税と経済成長の両立という発想には、一部には辛らつな批判もあるが、非常に興味深い。増税は消費を冷やし不況を悪化させるというのが、常識的意見である。首相の見解の背後には、ブレーンのひとりとされている大阪大学の小野善康氏の理論がある。需要と供給が釣り合った状態をシーソーのバランスに喩えると良い。市場原理に任せておくと自動的にシーソーは水平に調節されるとするのが伝統的な経済学である。一方シーソーが斜めになって動かなくなった不況という状態を認め金融政策で強制的に釣り合いを誘導する必要を論じるのが新ケインズ派。 それに対し小野氏の理論は、不況とはシーソーが真っ二つ折れてしまった状態で市場の自立的調整も量的緩和やインフレも目標など中央銀行による誘導も期待薄とする。つまり景気に効く処方箋はないと考える。不況により多くの失業者がいるのはもったいない。だから政府は増税からの資金で失業者を有効利用して物的・人的インフラを建立することを提唱する。増税分は労働報酬で直ぐ国民に還元されるから国民全体では貧乏な時間は僅かな時間に過ぎない。デフレ時には、「あれも買える,これも買える」という貨幣が持つ魔法を手元に置くだけで、買えるものが自動的に増えるからデフレが深まってもお金を使わない。それを打破するために政府が税金で魔法を取上げ失業者に回し彼らに購買を実行させる。 相対的にお金が余っている人からそうでない人に向けてお金を流す所得税の方がふさわしい。
小野氏の本来の主張もそうだ。首相が明らかにしているのは消費税増税である。ここに理論と政治学の間に齟齬が見られる。不況も先行きの不確実性にと戦う自信を失って貨幣に執着している状態だと解釈している。『視界不良からくる貨幣型不況』への宣戦布告である。新政権の『常識に反する』壮大な社会実験が、果たして今後の経済学の歴史を塗り替えられるか。(帝京大学教授 小島寛之氏)
(コメント)
壮大な社会実験をするのはいかにも大胆だ。菅さんが消費税増税を唱えた時、64%の当初の支持率が落ち、45%にまで下落した。自ら墓穴を掘った感じ。自民党にもゆとりが出てきた。
菅首相の一連の発言のブレで自民党など野党は労せずして得点を上げている。7月5日の読売の世論調査では、菅内閣を支持するが45%、支持しないが39%で、選挙区選の投票先は民主32%(前回33%),自民19%(前回17%)と自民のほぼ倍あった民主への投票が17ポイントから13ポイント差に迫られた。
ここで菅内閣も起死回生の手を打たないことには、とてもではないが、現状維持の54議席の確保さえも難しい。鳩山、小沢のツートップの辞任を引き替えに獲得した高支持率も菅さんの消費税増税発言で、すべて元に戻ってしまった。
C新年金7原則、政府まとめる(超党派議論 道遠く)(7月2日朝日新聞)
菅内閣は、新たな年金制度の基本的な考え方(7原則)をまとめた。『年金は国民の信頼低下も著しい。現行制度に代えて国民の信頼が得られる新たな年金制度を一刻も早く構築することが不可欠だ』と6月29日の新年金制度検討会で新制度創設の意義を強調した。参院選のアピール材料にするため、前倒しにされた。民主党が主張してきた年金制度の一元化や所得に応じて年金額が決まる所得比例年金の考え方、最低限の年金額を補償する『最低補償年金』は盛り込まれた。財源については『保険料を充当する部分と税財源を充当する部分を明確にする』とのみ記載し明記を避けた。『党派を超えた国民的議論』を呼び掛けているが、保険料方式の自民党案と民主党案の隔たりは大きい。
新年金制度7原則
@ 全員が同じ制度に加入 D 消えない年金
A 最低額を補償 E 未納・未加入ゼロ
B 負担と給付の明確化 F 国民的議論で制度設計
C 安定財源で持続可能に
D中国、東シナ海で訓練(米韓演習を警戒、牽制?)(7月3日朝日新聞)
韓国の哨戒艦沈没事件を受けて準備を進めている米韓の軍事演習に、中国軍が神経を尖らせている。米国が中国の裏庭である黄海に空母の派遣を予定しているからだ。『哨戒艦事件を口実に米軍が黄海に進出しようとしている』と警戒しており、派遣されれば軍事的緊張が高まるのは避けられない。
中国軍の東海艦隊は、6月30日から7月5日までの予定で、東シナ海沖で実弾射撃訓練を開始した。
一帯の海域は航行禁止となっている。北京の外交筋の間では、超音速で艦隊を追撃する『空母キラー』と 呼ばれている対艦弾道ミサイルを試射するとみられている。中国軍は、台湾有事の際、米軍の空母艦隊が近海に進出するのを防ぐ『アクセス拒否』能力を高めているからだ。沖縄―台湾―フィリッピンにつながる中国の防衛ラインを米空母が越えることについて中国筋は『中国に対する重大な挑戦と脅威で、軍事衝突 に発展しかねない』と警戒感をあらわする。
(コメント)
日本の周辺での軍事的な小競り合いは細かい記事で見落しがちなるので、出来るだけ記載したい。
E最大級天下り先解散へ(3年以内3800人に転職を促す(7月6日朝日新聞)
国土交通省は、同省の発注業務を独占的に受注する見返りに、同省のOBらの天下りを大量に受け入れてきた建設公済会と空港環境整備協会(整備協)を3年以内に解散させる方針を固めた。前原国交相は6日、独自に雇用した3800人には転職を促し、700億円溜め込んだカネは退職金を支払い後、残りは国庫に返納させる方針を表明する。
建設公済会は8つの地方整備局ごとにあり、4255人の職員(うち国交省OBは531人)旧建設省を中心に、国交省の最大級の天下り先で8人の理事長はいずれも同省のOBだ。ダムや道路の工事価格の積算や用地交渉、巡回や管理のほか河川敷や道路の占有許可などを独占的に受注してきた。
国から年間600億円規模の業務を請け負う一方内部留保は164億円に上り、事務所の土地や建物を含めた正味財産は535億円(2008年度)に達する。
一方、整備協は、全国18の国管理空港で駐車場を運営し収益で騒音対策や住民の健康診断などを担っている。国管理の空港はほとんどが赤字だが整備協は確実に収益が見込める駐車場事業を独占し、08年度の 正味財産は171億円に上る。職員213人のうち115人が国交省と防衛省からの天下りだ。天下り3人を含む常勤役員5名の平均年収は1370万円だった。国交省は建設公済会が独自に雇用した3700人のうち正規職員 2100人には内部留保を退職金に充てて転職を促すほか、1年契約の者や独自採用者の転職を促す。
整備協も独自採用の職員100名の転職を促す方向で検討している。民間の競争に委ねれば、コストは下がる。世界一高いとも云われている航空運賃に上乗せされる着陸料の値下げにつながる可能性がある。
2法人の土地や建物の売却を進め、退職金支払い後余剰金は国庫に返納する。公益法人のもたれ合いの関係に、国交省はようやく自らメスを入れる。問題のある国の関連組織を解体させるというのは、前例のない荒療治だ。
(コメント)
前原国交相が決めた前例のない荒療治に対して拍手を送りたい。他の省庁も前原国交相を見習い、是非前例のない荒療治を断行して頂きたい。ムダは未だ多くある筈だ。官僚と厳しく対峙せよ。
F択捉でロシア軍演習(7月7日朝日新聞)
ロシア国防省は4日付け、極東とシベリアで同軍の軍事演習「ボストーク2010」が極東とシベリアで、北方領土・択捉島で戦術演習を行ったと発表した。武装勢力への対応を想定した演習で兵士1500人以上、兵器や軍用車両200点が投入された。「ボストーク2010」は6月29日〜7月8日の日程で18の演習場で2万人、30以上の艦船が集結して行われた。
岡田外相談話
『北方領土での軍事演習は我々の立場からは認められない。極めて遺憾である。今までなかったことを、何故、この時期に…という感じはする』と語った。
Gハローワーク地方移管(都道府県と国 続く綱引き)(7月8日朝日新聞)
『地域に密着した休職者の一体的支援』を理由にハローワークの地方移管を求める都道府県と『全国ネットワークの維持』を訴えて反対する国の綱引きが続いている。政府が6月にまとめた『地域主権戦略大綱』には、国の出先機関の原則禁止は盛り込まれたが、歩み寄りは見られなかった。
Q:自治体はなぜ求めるの? A:一括支援できる。
地方移管に積極的なのは
地元産業界や教育界、市町村のネットワークを生かせば地域で一元的な労働行政が出来ると主張。職業紹介を民間委託できるように規制緩和するなどの内容が盛り込まれている。上田
Q:厚労省が反対する理由は? A:全国一律の利点を主張
厚生労働省が地方移管に反対する理由は、全国統一のサービスが出来なくなるということ。全国ネットで職業紹介することで、都道府県の境を越えて就職できるが地方移管すると同じ自治体内と選択肢が狭まると主張している。求職者は就業支援と雇用保険は、一緒に扱われることを望んでいるので、就業支援だけを地方移管することに難色を示している。
Q:議論どうして加速? A:職員減・統廃合 苦情増す
職員の削減やハローワークの統廃合が進んだことも影響して使い勝手が悪くなった地方から『国がやらないなら、自治体でやらせて』の声が高まった。小泉内閣の公務員総人件費改革で、2001年度ハローワーク全国615→545に、職員も今年まで800人以上削減した。ところが、リーマン・ショック以後休職申し込みや失業給付申請が急増、職員の負担が増えた。結果的に『待ち時間が長い』『対応が悪い』と言う批判が相次いだ。『地域主権戦略大綱』のは出先機関の原則禁止が盛り込まれた。各省庁は出先機関の『事務・権限仕分け』を行い、方向性を示さなければならない。長妻厚労相は『色々な議論の余地はある』と語り、原則とは異なった仕分け結果になる可能性もある。
H中国、日本国債へ投資増(欧州危機 外貨準備振り替え)(7月17日朝日新聞)
今年に入り、中国が日本国債への投資を大幅に増やしている。財務省の国際収支統計によると、証券投資での買い越し額は1兆2千7百億円(1〜5月計)と過去最高だった2005年通年の5倍になった。欧州の財政不安とユーロ安を受けて、中国当局が外貨準備を日本国債に振り向けているためと見られている。中国の通期の買い越し額は、2千億円台に留まっていたが、欧州の金融市場が混乱しし始めた今年に入り、積極的な購入を開始、5月には買い越し額が7千3百億円に膨らんだ。中国の存在感が高まっている。中国の外貨準備高は214兆円(世界の首位)でユーロ安が急速に進み、日本への証券投資が膨らみ投資先をユーロから円資産に振り替えた可能性が高い。売買の大半は中国当局の外貨準備の運用によるもので、専門家は『円高傾向の続く中、国債の金利も低下しており、国際市場が安定化する方向に向っている』と見ている。
I戦略局 あっさり挫折(限界を感じた首相)(7月17日朝日新聞)
省庁間の壁を打ち破る政治主導の司令塔が首相の知恵袋の衣替え。政権交代の目玉になる筈だった『国家戦略局』構想を菅首相があっさり断念した。松井前官房副長官は鳩山政権で、国家戦略室を局に格上げする政治主導確立法案を中心になってまとめた。『官邸主導での予算編成は、国家戦略構想の中心だ。マニフェストでも首相直属の国家戦略局を設置し、新時代の国家ビジョンを作り政治主導で予算の骨格を策定することになっていた』菅氏は2010年度予算編成の基本方針や新経済成長戦略を取りまとめ、更に税と社会保障の共通背番号制度の検討に手を伸ばした。参院選敗北後室を局に格上げするめども立たなくなったのを機に首相に意見具申する戦略室に特化した。『予算編成は、財務省、内閣官房、政調が調整しながらやる』ことになった。『自民党政権への先祖帰り』ではないかという批判もある。
(コメント)
政治主導の司令塔が機能を縮小して、首相への意見具申、情報提供に徹することになったのは、参院選での敗北でねじれ国会になり、局への格上げが困難になったためである。政治主導をどうやって具現化するのだろうか?鳩山さんのように愚直に理想を求める姿勢があってよいのではないか?
J普天間移設『工法8月決定』を断念、米に複数案提示(7月22日読売新聞)
沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で、日米両政府は、代替施設の位置や工法を『8月末日』までに決定するとした今年5月の日米合意の実現を事実上断念する方向で調整に入った。16日までの日米協議で双方の隔たりが埋められなかったことに加え、日米合意に対する沖縄の反発が強いためだ。日本側は8月末の時点では、複数案の提示にとどめる方向で調整を始めた。米側は菅政権の合意履行に期待を寄せたが事態は進展せず、再び日米間に緊張が高まりそうだ。15,16日の日米協議では、沖縄の合意なしには移設作業は進まないのでやむを得ないと言う発言もあった。4案の1本化は
(コメント)