私版注目情報(9月)&コメント
東京都渋谷区 深津 輝雄
@ 部分連合厳しい道(首相、政策ごとの協力模索)(7月13日朝日新聞)
今回の参院選で、衆参両院は多数を占める勢力が異なるねじれ状態になった。菅首相は『夫々の党とは政策的に共通する部分もあり是非夫々の政策を持ち寄って合意出来る形にして政策を実現したい』と部分連合で国会を乗り切る考えだ。参院選の焦点となった消費税10%程度の引き揚げについても食料品などへの軽減税率を制度設計に入れており、増税分の使い道は、社会保障費や財政健全化に充てる方向で自民・民主両党案とも大きな差異はない。ただし自民党が同じテーブルに着くには民主党のマニフェストの見直しを迫ることも考えられる。公務員制度改革については、国家・地方公務員合わせて総人件費の2割削減を主張するみんなの党と、国家公務員の人件費の2割削減をマニフェストに盛り込んだ民主党とは、連携は可能に見える。地方公務員の労働団体から手厚い支援を得ている民主党が、痛みを伴う改革を地方に広げるには、相当な党内調整が必要である。
(コメント)
政策調整をする場合、例えば自民党が主張するような消費税増税を同じテーブルで議論する場合、直接関係のない民主党の主張するマニフェストの見直しを迫ることは、政策調整の阻害因子になるのでこのような駆け引きを取り外す取り決めを慣習にしてほしい。公務員制度改革も是非実現して頂きたい。
A 2兆円特別枠民主提言(概算要求,成長戦略に優先配分)(7月22日朝日新聞)
民主党は22日、2011年度予算の概算要求基準に対する提言をまとめた。国家公務員の人件費削減に全力で取り組むとともに、『ムダ使いの根絶』や『総予算の組み換え』で財源を確保し、総額2兆円規模の特別枠を設けることを打ち出している。提言は予算編成の基本的な考え方として『歳出の大枠を71兆円とし、今年度国債発行額を上回らないよう全力を挙げる』とした。特別枠は、『元気な日本を復活させる特別枠』と名付け、政府の新成長戦略に基づきデフレ脱却や雇用拡大につながる事業に優先配分する。1.1兆円増額した地方交付税は、同水準の財源を確保すると明記する。社会保障費の自然増1.3兆円の自然増分も原則として認める方針だ。20年以上を継続した事業は廃止を前提に検証、特別会計の事業仕分けの結果を反映、独立・公益行政法人は廃止を前提に見直しなど、歳出削減の具体策を織り込んだ。
(コメント)
2兆円規模の特別枠を設け『元気な日本を復活させる特別枠』としたが予算の裏付けがないので、少額に留めざるを得なかったと推察するが、特別会計を叩けばもっと出て来る筈である。
B グアム工事ペ−ス抑制(海兵隊移転,米国は環境影響評価公表)(7月23日朝日新聞)
在沖縄海兵隊の移転に伴う米領グアムでの基地拡張工事に関する環境影響評価報告書を22日に公表した。急激な人口増加による環境への悪影響を防ぐため、工事ペースを抑制する内容で2014年の海兵隊の移転期限に間に合うかどうか不透明になってきた。日米の合意では、米軍普天間飛行場の移設とひきかえに、在沖縄海兵隊とその家族約9千人(うち海兵隊8千人)をグアムに移転されることになっている。
国防総省は、昨年11月に公表した環境影響評価報告書で移転工事のピークになる14年に人口約18万人のグアムに建設作業員約8万人が流入する見通しを示した。これに対し、米環境保護局(EPA)が上下水道の処理能力を超えていることを指摘し、同省は計画に見直しを進めてきた。ピーク時の人口増加を約4万人と算定し、公共施設、港湾、道路などの許容限度に合わせて工事のペースを管理していくことになった。
(コメント)
在沖縄海兵隊とその家族約9千人をグアムに移転させるのに、人口の一時的な増加とインフラの整備に苦しんでいるようだ。一方普天間飛行場の辺野古周辺の海岸に移転することが決まった。地元の合意を得ていないので絵に書いた餅と言わざるを得ない。11月の
C 南シナ海 中国活発(ASEANフォーラムの焦点)(7月23日朝日新聞)
中国など6カ国・地域が領有権を争う南シナ海が最近緊張を増している。中国が海洋権益の拡大を目指す姿勢を強め、周辺諸国とのトラブルが相次いでおり米国も警戒を強めている。23日ハノイで開かれるアセアン地域フォラムでもこの問題が大きな焦点になっている。
優良な漁場である南沙諸島の周辺海域に活動する中国漁船と周辺国とのトラブル、中国、台湾、ベトナムが領有権を争う西沙諸島周辺海域でも中越間の緊張が高まっている。中国の最近の動きの背景には、胡錦濤国家主席が主張する海洋への意識強化を唱える権益拡大方針がある。とりわけ石油資源の確保で、南シナ海は、その輸送ルートの生命線だ。米国のゲーツ国防長官は、6月初め、南シナ海問題を取上げ『米国は領有権争いのいずれにも加担することはないが、航行の自由を妨害する武力行使や行動には反対する』と中国を牽制した。中国は、海南島に潜水艦基地を造り、南シナ海を弾道ミサイル原潜の要塞にしようとしていると警戒している。
一方では、アセアン側各国とも中国との経済的な結びつきが強まり、アセアン諸国と中国間で、自由貿易協定が発効しており中国に強く踏み込めない事情があるので、中国の存在感は一層高まっている。
(コメント)
南シナ海の緊張が高まっているのもわが国も他国のこと傍観している訳にも行かない。米国の防衛基地が後方に退けば、直ぐに中国、韓国などの船などが日本近海に出現することになる。そういう意味でアメリカの抑止力は必要になっているのではないか。
D 特別会計仕分けにすがる民主(捻出は未知数)(7月23日朝日新聞)
菅政権は、10月にも実施する『事業仕分け』の第3弾で特別会計を取上げる。非効率な事業や仕組みを見直し、予算編成の提言で『仕分けの結果を確実に11年度予算で実現する』と宣言した。
民主党の玄葉政調会長は、22日11年度予算編成についての提言の中で『特別会計の事業仕分けではなく、特別会計の制度自体を仕分けすることも、大きな政治的判断として必要だ』と意気込みを語った。
菅政権は、11年度の新規国債発行額を今年度と同じ44.3兆円以下、国債の元利支払費を除いた歳出費を今年度と同じ71兆円以下に抑える方針。今年度は10兆円超の税外収入を確保してしのいだが、税収が大きく伸びない限り11年度も数兆円の税外収入が必要だ。玄葉氏は『財源の捻出はどのくらいできるかはわからないが、党の提言に仕分け結果を確実に11年度予算で実現する』と明記し財源の確保のねらいを鮮明にした。
玄葉政調会長、蓮ほう行政刷新相は近く調査チームを結成し18特会すべてを対象に資金の流れや事業内容、運用益などを調べる。新たな埋蔵金の余地があるとすれば為替介入のための資金を管理する外国為替資金特別会計や国債の償還や利子の支払いに備えたお金を管理する国債整理基金特別会計だ。外為特会には、為替差損に備える約20兆円の積立金、国債整理基金特会には10兆円超の基金がある。これらの積立金は、制度上の根拠もはっきりしており慎重論も根強い。財源確保とともに特会を通じて流れるお金が無駄な事業を生んできた状況を見直すことも求められる。社会整備事業特会の空港整備特会は、地方空港の整備を賄い利用者の少ない空港乱立を招いたと批判されてきた。今年度の歳出規模は、4,600億円で航空会社が支払う空港使用料などを主な財源に一般会計からも1,100億円を繰り入れている。巨額の財源確保は期待薄だが、無駄見直しの象徴として前原国交相も改革に意欲を見せる。これまで事業仕分けで『仕分け人』を務めてきた土居丈朗慶応大学教授(財政学)は、『歳出削減に繋がる無駄は簡単には出て来ない。所管官庁が独立王国のように運用してきた非効率になった特会を外部の目で見て改革させることに期待したい』
(コメント)
『事業仕分け』の第3弾で特別会計を取上げることになった。民主党が背負う歴史的な使命であると言っても過言ではない。繰り返しになるが、行政刷新を担当する部門は、他の省庁に特会の廃止、不適切な天下り人事が発覚した場合の処置権限などを強化すること、@改善結果の報告 A改善による予算削減B天下り人事の廃止 C経過の報告(1年後)D罰則の規定化など大事なことは、行政刷新を担当する部門を各省庁の上位に位置づけすることである。
E 首相代表選出馬を表明(両院議員総会で参院選敗北を陳謝)(7月30日朝日新聞)
民主党は29日、参院選を総括する両院議員総会を開いた。菅直人首相は、消費税をめぐる自らの発言について『不用意な発言で大変重い、厳しい選挙を強いたことを心からお詫びする』と陳謝。その上で首相は、『9月の代表選で改めて私自身の行動を含めて判断いただく』と語り、代表選に立候補する意向を正式に表明。総会では、幹事長をはじめ、首相の退陣を求める声もある一方、首相続投を支持する発言もあった。
総会は2時間余りに及び代表選出馬の表明した上で、「枝野氏ら現執行部体制で少なくとも代表選まで対応させて頂きたい」と語った。
(コメント)
『参院選を総括する両院議員総会を開き、菅直人首相は、消費税をめぐる自らの発言を陳謝。代表選に立候補する意向を正式に表明した』ことは予定の行動であろうが妥当だ。菅対小沢の代表選前の民主党議員の発言『民主党は次の新しいステージに向っている時に、もう一度昔に戻ることは許されない』誠にその通り。
F エコカー補助 効果一巡(再延長せず 9月打ち切り)(7月31日朝日新聞)
(1) エコカー補助制度(9月で終了)
リーマン・ショック後の深刻な不況から抜け出るために導入されたエコカー補助制度が、期限通り9月に終了。政府内には景気を下支えするため延長を求める声もあったが、個人消費の回復につながったと確認されたため、打ち切りが決まった。政府の後ろ盾がなくなり、業界は自律回復が迫られることになる。
エコカー補助金は燃費基準などが一定の数値を満たした新車の購入時に乗用車なら最大25万円が助成される制度。昨年の4月政府の緊急経済対策の目玉施策として打ち出された。同12月には、景気の先行きが不透明と半年間の延長が決まった。円高傾向が続き、輸出の減速や欧州の金融不安が残るため再延長を求める声もあったが、直島経産相はこれを一蹴した。緊急対策直前、昨年3月自動車の国内生産は、前年同月比で50.0%減、新車販売は、25.3%減と歴史的な落ち込みを見せていた。補助金制度の効果で、国内新車販売は昨年9月から前年比プラスに転じ、今年6月にはリーマン・ショック2年前の数字を上回った。
(2)家電エコポイントも失速気味(12月で終了)
エコカー補助と同様、消費刺激策として導入された省エネ家電購入に対するポイント給付制度。今年12月まで購入した薄型テレビやエアコン、冷蔵庫が対象になるが、制度開始から1年たち効果は薄れつつある。
薄型テレビの出荷台数は1〜6月が前年同期比73.3%増、1年後に迫った地上波テレビ放送の完全デジタル化の影響も重なり、経済効果は大きそうに見える。しかし金額ベースに直すと5月に4%減少、エコポイント制度を開始して以来、事実上初のマイナスに陥った。台数は出ても商品単価の値下がりに歯止めがかからない状況だ。冷蔵庫やエアコンは、1〜6月で、出荷台数でも前年比横ばいで景気対策に効いていない。
(コメント)
エコカー補助制度、家電エコポイントは、一時的にせよ、景気対策に寄与してきた。恒久的な景気対策は必要である。昨日(8/19)のテレビで菅首相が林業の活性化を唱え出した。
G 大量水銀,誰が捨てた?(都内焼却炉ストップ,被害3億円) (7月31日朝日新聞)
なぜ、焼却炉が停止される程度の水銀が検出されたのか?これらの工場に運ばれるのは、一般家庭ごみを中心とした可燃ごみだ。組合は、産業廃棄物の不法投棄の疑いが強いと見て廃棄物の特定を急いでいる。
(コメント)
廃プラを燃やすようになって23区の区民も分別意識が緩くなったのか、あるいは産業廃棄物の不法投棄なのか調査中だが、組合が産廃の不法投棄を疑うことは、ごみ不足から産廃の受け入れを暗黙了解で容認していたことに繋がり問題ではないか。
H 辺野古V字・I字併記へ(普天間移設滑走路案)(8月1日朝日新聞)
米軍普天間飛行場の移設問題で日米両政府は、移設先の
(コメント)
5月の日米共同声明では、代替施設の位置、工法の検討を8月末に完了させる米軍普天間飛行場の移設問題で日米両政府は、移設先の
I 長期金利1%割れ(7年ぶり国際投資が加速)(8月4日朝日新聞)
4日の東京金融市場は、米国の景気減速の懸念が一段と強まる中、荒れた展開になっている。経済の体温計に例えられる長期金利が2003年8月以来7年ぶりに1%の大台を割り込み、外国為替市場でも1ドル=85円代前半まで円高ドル安が進み、日経平均株価は9500円台を下回っている。
長期金利の代表的な指標は新発10年物国債の流通利回りで国債が買われれば金利が低下(債権は上昇)する。景気がよい時には上がり、悪い時には下がる傾向がある。国債発行の動きなどでも上下し、住宅ローンや企業向け貸出金利に影響を与える。長期金利は世界的に低下傾向が続いている。欧州の財政・金融不安に加え、最近は米国の景気回復ペースの鈍化に対する不安も浮上。各国で他の金融商品に比べれば安全とみなされる国債の市場に資金が集まっているためだ。FRB(米国連邦準備制度理事会)が来週追加の金融緩和に踏み切るという観測が浮上。3日発表の米国個人消費支出が市場予想を下回ったことも重なり3日の米長期金利は低下した。これを受けた4日の東京市場は1.02%より更に下がった。長期金利が1%を割れば、内外の景気の先行きに対する市場の慎重な見方の表われと言える。
(コメント)
住宅ローンや企業向け貸出金利など様々な金利に影響を持つ長期金利が1%を割り値下がりした。加えて、外国為替市場では円高ドル安が一段と加速し、欧州不安に加え、世界経済を左右する米国の景気が落ち込むのではないかという不安感が行く先を求めて『円高』、『株安』、『国債高』になって行った。自動車などの輸出産業には厳しい状況だが、政府、日銀は連携を密に対応する必要がある。
J ハブ港湾に京浜・阪神(伊勢・北部九州落選)(8月4日朝日新聞)
国土交通省は3日、ハブ港湾に京浜、阪神の2地域を指定する方針を固めた。韓国・釜山港などに台頭するアジアのハブ港に対抗するため、国内貨物が両港湾に集まるよう後押しする。9人の有識者による検討委員会による評価が行われた。京浜と阪神は貨物集荷量やターミナルのコスト削減などの面で高く評価された。
日本の港湾は、かって強い競争力があったが、シンガポール、上海、釜山などが台頭し国内トップの東京港でも世界26位で、アジアのライバルに大きく引き離されている。前原国交相は重要港湾103のうち岸壁や防波堤の国直轄の新規事業として予算の配分する港を43箇所に絞り込むと発表した。バラマキ型の予算を見直し『選択と集中』で港の競争力を高める狙いだ。
(コメント)
地方の港湾も日本全体の物流計画から考えないと国際競争に太刀打ち出来ない。前原国交相が2つのハブ港湾に貨物の集荷を集中するなどしてコスト削減を図ることは正しい方向である。100余の港湾の予算も43の港湾に重点を絞り予算の『選択と集中』で港の競争力を高めることを狙うのも効果的な方法である。
K 官房機密費使途照会へ(東京地検 総選挙直後の2.5億円)(8月7日朝日新聞)
民主党への政権交代が決まった昨年の総選挙直後に2億5千万円の官房機密費を不当に引き出していたとして、自民党の河村官房長官(当時)が詐欺および背任の容疑で告発された。東京地検は、これを受けて内閣府に使途を照会する方針を固めた。河村氏は自民党が大敗した衆院選から2日後の昨年9月1日、それまでの毎月の使用額の2.5倍にあたる2億5千万円の機密費を引き出したことを鳩山政権発足後の11月に平野官房長官(当時)が公表し発覚した。大阪市の市民団体は、今年1月『政権交代が確実になり、政策遂行のための費用が不要になっていた』『自民党議員の個人的な利益を図る目的だった』として河村氏を告発した。
2月には鳩山内閣が『異常な支出』とする答弁書を閣議決定していた。鳩山首相(当時)は今年3月、機密費の支出内容の公表を検討する考えを語った。
(コメント)
民主党への政権交代が決まった昨年の総選挙直後に毎月の官房機密費の2.5倍を引き出していたことは、明らかに不当な出費である。自民党の河村(当時)官房長官が詐欺および背任の容疑で市民団体から告発されたが、是非、麻生前総理の飲み代にも化けていないのか手を緩めず徹底追及してほしい。