大統領制型道州制

〜トップリーダーを直接選挙で選ぶ〜

東京都小平市 小俣 一郎

 1月14日に菅第2次改造内閣が発足したが、これは「問責辞任がなければ審議拒否」という野党が数を持つ参議院の、数の力に屈する形で行われた異例の改造であった。

 しかし、与謝野氏が入閣したことにより、自民党は徹底抗戦の継続を決めた。菅内閣が何とかこらえるのか、それとも総辞職するのか、あるいは総選挙へと進むのか、政治の混迷は当分続きそうである。

 

 この日本の政治が安定性を欠く大きな原因として、「首相が直ぐに代わる」ということと共に、「第二院である参議院が大きな力を持っている特異な議院内閣制」という日本の制度的な欠陥を挙げることができる。現在の制度では、一部を除いて、参議院の賛成がなければ法案は成立しない。議院内閣制を採用する国で第二院の力がこれほど強い国は他にはない。参議院が直接の引金、あるいは遠因となって首相が辞任したことも何回もあった。

 

日本と同じ議院内閣制の国として英国がよく比較されるが、英国の上院は貴族院であり、下院の優越が確立され、下院に大きな権限がある。故に、選挙で勝てば、党首が首相になり、基本5年間の任期が担保され、約束したマニフェストを5年間をかけて実行するという体制になるわけである。たから、同じ議院内閣制にもかかわらず、英国では首相はあまり交代していない。

 

この日本政治の制度的な欠陥は、当然戦後ずっと存在していたわけであるが、自民党長期政権という大きな流れの中で問題はなんとか吸収されてきた。2007年からはねじれ国会になったが、当時は例外的に政権与党が衆議院で3分の2を持っていたので今日ほどの弊害にはならなかった。それが民主党政権となり、本格的な政権交代が実現して、にわかに顕在化してきたわけである。しかし、参議院は憲法に規定されている制度であり、そう簡単には変えることはできない。

 

 ではこれを改善する良い方法はないのだろうか。

 

 日本を東西2つの大きな地方自治体に分け、それぞれの知事を直接選挙で選び、4年間をその知事に託す、というのはどうだろうか。

 

 日本には50ヘルツと60ヘルツという電気の周波数の違いがある。それを境として日本を2つに分け、東は東京州、西は大阪州とし、そこに国内政治の多くの権限と財源を移してしまうのである。

47都道府県は廃止し、2つの州にし、日本の政治の運営主体を国・道州・基礎自治体とする。そしてその役割を改めて見直し、明確化するのである。いわゆる道州制である。

道州制を導入すれば、国の役割を大幅に減少させることができる。そうなれば、相対的に国会の力は弱くなる。「良識の府」のはずが、政党の数の論理が横行している参議院の暴走も抑えることができるわけである。これならば憲法を改正しないで行える。

 

この東日本、西日本という規模は、他の国と比較しても十分に一国に値する大きさである。つまり、その州知事を選ぶことは、それこそ東日本国・西日本国の大統領を選ぶようなものである。実現すれば、2人の州知事は首相と肩を並べる日本のトップリーダーということになる。

 

東京州・大阪州は、大きいとはいえ、法律上は地方自治体である。だから、知事は直接選挙で選ばれることになる。これは画期的なことである。首相に並ぶトップリーダーを国民が直接選ぶことができるようになるのである。憲法を変えずに「首相公選制」が実現するようなものである。

いまの政治不信は、首相が国民の選択とは関係ないところでころころと代わり、決定されていることも大きな要因となっている。もし東京州・大阪州が実現し、自らの投票でその知事を選ぶことができるようになれば、国民の意識も当然変わることになるだろう。

直接選挙になれば「選んだ者の責任」もより問われることになる。そうなれば、選ぶ側にもより責任感が出てくるだろうし、「より慎重に選ぶ」という好ましい現象も付随して起こってくるはずである。

 

そして州知事には4年の任期が担保されることになる。州知事はそれを背景に思い切った政策を打つことができるようになり、結果として、日本の国内政治の大部分が安定的に運営されることになる。

有能なトップリーダーが選ばれれば、そこには多くの権限が集中するので、政治決断のスピードも格段に上がり、日本の政治は一気に好転することになるだろう。

 

道州制は、安倍内閣のときに担当の大臣が置かれ、また道州制ビジョン懇談会により十分に議論されている。政権交代のために最終答申まではいかなかったが、内容的には既にまとまった体系ができ上がっており、その気になればいつでもその方向に進める。

 道州制ビジョン懇談会で示された道州制の理念は、「時代に適応した『新しい国のかたち』をつくる〜中央集権型国家から分権型国家へ〜」であり、具体的には「国・道州・基礎自治体の役割の見直し」「国の役割を限定し、地域に主権」「国家組織の再編」などが掲げられた。ただ、「地域間格差をどうするか」「大都市をどのように扱うか」等の問題も残っている。

 

 しかし、日本を2つに分けるのであれば、東京州は首都圏、大阪州は関西圏・中京圏という地域を含むので、道州制に移行することによる道州間格差というものは起こらない。もちろん道州内格差は当然残るが、それはいまの日本国全体としても同じであり、道州内で調整すればよいことである。そして、少なくとも東京一極集中は、東西の二極になり、分権は前進する。

 また、このように東西の大きな州にしてしまえば、東京特別州を作るかどうかといった大都市をどうするかという問題も基本的には解消できる。現在も首長・議員を選挙で選んでいる東京23区をそれぞれ基礎自治体としてしまえば、基礎自治体にでこぼこはあるが、制度的にはその役割を特定することができる。

 

 道州制を導入すれば、国の役割は、外交とか、国家戦略とか、国家的基礎部分の決定、統一すべき基準の制定等に限定されることになる。当然、国会や首相に求められる資質も変わってくるだろう。

いまは中央集権で、多くの権限と財源を国が持っているので、国会が迷走するとそれが直接地方にも波及してしまう。しかし、東京州・大阪州が存在すれば、それとは別次元で、主体的に動くことができるのである。

 

そして国の権限が少なくなり、そこで議論される問題が限定されることになれば、国会議員を選ぶ基準もより鮮明になり、国全体の政治も安定することになるだろう。

中国・北朝鮮の一党独裁体制はもちろん、米国もロシアも韓国も大統領制で、その任期は安定している。日本の周りはみんな長期政権なのである。国・東京州・大阪州の三極になれば、日本の政治もやっと長期政権の仲間入りができることになる。

 

 東日本、西日本という大きさは、当然、他の国との経済競争にも十二分に耐えうる大きさであり、また、西と東に分かれることにより、東西日本が「善政競争」を行うことにもなる。

 

 通常の一国に十分に値する東西日本の州知事を選ぶことは、それこそ大統領を選ぶことに擬することができるだろう。そのような『大統領制型道州制』とでも言うべき制度に、大胆に日本の政治を変えることが、いま必要なのではないだろうか。