疑似・大統領制

東京都小平市 小俣 一郎


日本を東西2つの州に分け、イギリスやフランスに等しい経済力や人口を有する大きな受け皿をつくり、そこに現在国が持っている権限・財源・人の多くを移してしまう。そしてそこにアメリカ大統領制の長所を取り入れ、日本に合うように調整する。それが日本の政治を変える近道ではないだろうか。

 

具体的には、電気の周波数を境に東西2つの州に分け、そこに

1.州知事は直接選挙で選出し、任期は4年、連続2期まで。

2.州知事選挙では副州知事候補も事前に告知し、ペアーで選択する。

3.州知事に事故があった場合は、副州知事が任期の残りを担当する。

4.州の幹部スタッフには、州知事のブレーンを多数外部から採用し、州知事交代の際には入れ替える。

5.州議会は一院制とし、任期2年、解散なし。

6.州知事選挙は、必ず州議会選挙と同時に行う。

といったしくみを取り入れるのである。

 

いま日本では、年ごとにトップリーダーである首相が交代している。これで政治が安定するわけがない。第二院である参議院の力が強すぎる日本型議院内閣制は既に制度疲労しており、首相の交代や政権交代といった変化でも蘇生しない状況になってしまっている。

また、国民の価値観が多様化し、求めるものの組合せが複雑になってきている。それに中央集権制のままで対処する、すべてを国中心に処理すること自体に無理があるとも言える。

 

そこで47都道府県を廃止して、2つの州にして、内政の多くをそこに移し、現在の都道府県の権限は基礎自治体に移し、国は、外交・防衛、司法、通貨、基本的な社会保障等のみの担当とするのである。

地方に力を与えて、国と州、基礎自治体の役割分担を明確にすれば、それぞれを個別に選択することにより、国民の多様な考えをより政治に反映できるようになる。

 

直接選挙で州知事を選び、任期を4年とすれば、移した内政の多くは安定するだろう。

州民の直接の支持を背景に人事権を握れば、州職員をコントロールすることができる。また、ブレーンを多数幹部スタッフとして採用すれば、州知事の意図をより正確に州職員に伝えることができ、州知事は公約を実行しやすくなる。さらに、4年の任期が担保されれば、第4の権力といわれるマスコミの過剰な報道に振り回されることも少なくなるだろう。

 

2月6日に名古屋で、河村さんがトリプル選挙に勝利した。河村さんという強烈な個性の持ち主が名古屋という大都市を動かしたわけであるが、これは市長が直接選挙だからこそ実現したことである。

河村さんを支援した、同じく支持率の高い、橋下大阪府知事は「日本の政治をバージョンアップする方法を端的に言えば、リーダーを選挙で直接選ぶことにつきます。」(朝日新聞・平成2311日)と語っている。改革のポイントは『直接選挙』なのである。

 

しかし、憲法の制約等もあり、議院内閣制自体をやめてしまうのは非常に難しい。そこで、内政の多くを国から州に移すことによって、直接選挙の範囲を大幅に広げてしまうのである。

 

現在の地方自治体の選挙方法では首長と議会の選挙が別々の時期に行われることがあり、そのために、河村さんが苦労したように、議会自体が大きな抵抗勢力になってしまうことがある。そこで、米国下院と同様に、州議会の任期は2年とし、2回に1回は州知事選と同時、とする改革も必要である。

州知事選挙を州議会選挙と同時に行うことにすれば、州知事を支持する勢力が州議会でも多数の議席を得るだろう。そうなれば、州知事と議会が大きく対立し政治が進まない、といった事態は避けられる。州知事が暴走する危険性も、2年後に州議会選挙を単独で行い、州知事に対する中間選挙の形にすることで防ぐことができるだろう。

 

いま地方議会にも住民の厳しい目が注がれている。もし州議会の任期が2年になれば、議員は絶えず選挙民の選択にさらされることになる。また47が2になるので、議員数も大幅に減少する。権限・財源の移行でその役割は増え、マスコミの報道も大幅に増える。住民の監視の目もより厳しくなる。州議会は間違いなくいまの都道府県議会より格段に活性化するだろう。

 

より多くの権限を持つことになる基礎自治体の議会にも「任期2年」を導入するとよいかもしれない。そうなれば、現在の都道府県議員の多くが選挙に参戦することも加わって、現在「3ない議会」と揶揄されているようなぬるま湯的な議会は無くなるはずである。

 

国の権限・財源・人を地方に移し、国の役割を少なくすることで国の機能を再生し、地方の役割を増やすことで、政治をより身近なものに、より国民の目が届くものにする。

日本を2つの州に分けることにより、それを契機として、現在の日本の政治が抱えるいろいろな問題を大幅に改善することができるのではないだろうか。