消費税の逆進性対策に第3の選択肢

東京都小平市 小俣 一郎

 民自公の3党合意で、消費税増税が大きく進みそうであるが、この消費税増税で大きく問題になっているのが「逆進性」である。

 これに関して政府から「給付付き税額控除」が、自民党からは「軽減税率」が対策として出されているが、「逆進性」という観点からだと「現金給付」の方に軍配が上がるようである。

しかし、対象者をどこで線引きするか、所得や財産をどのように把握するか、といった問題がそこには存在する。そこで野田政権は「マイナンバー」という番号制で対応することを提案しているが、その実現にはかなりの時間がかかるだろう。一方、自民党の「軽減税率」にしても、対象品目をどのように決めるのかといった難しい問題を抱えている。

そこで、逆進性対策の第3の選択肢として提案したいのが『基礎自治体に裁量権を付与した定額給付金』である。つまり、国は定額給付金として給付金額を決定するが、対象者の線引きや具体的な実施方法については基礎自治体に裁量権を与えるのである。

そして、これが大きなポイントであるのだが、「住民に給付しない場合や、住民が受取申請をしない場合は、その金額は国庫に返すのではなく、その基礎自治体の自主財源に組み込み、基礎自治体が自由に使えるようにする」というしくみをそこに加えるのである。

具体的には、まず逆進性対策として国民一人一人に給付する金額を国で決定し、その金額に基礎自治体の人口を掛けた金額を国から基礎自治体に給付する。次に、基礎自治体の議会で、住民への具体的な「給付金額」「給付方法」を、「給付しない」という選択肢も含めて、議論し、決定するのである。そしてそこで決められた金額が、決められた方法で、基礎自治体から住民に給付されることになる。

これを採用すれば、まず消費税の「逆進性」の問題は解決できる。さらに、一人当たりの給付額を、今回の増税分に留まらず、現在の5%の分等をも考慮して決定すれば、不況で苦しんでいる低所得者層への対策にもなる。

次に、この件に関しての「財源と権限」が国から基礎自治体に移るので、結果的に地方分権を大いに推進することになる。

そして、基礎自治体の議会が「給付金額」や「所得等による線引き」「給付方法」を議論し、決定するので、議会に対する住民の関心が高まり、基礎自治体が活性化することになるだろう。

この方式だと、給付方法を基礎自治体が選択できるので、「現金」で給付するのか、それとも「現物」で支給するのか、基礎自治体の知恵が試されることになる。

例えば、期限付きにした「地域振興券」にすれば、住民に給付された金額は一定の期間内に基礎自治体の中で消費されるわけである。それは地域経済の活性化につながるはずである。

また、過疎地域では、タクシー券のような形で現物支給するとか、給付自体を行わないで、別の形で弱者対策を行うという選択をした方がより地域住民のためになるかもしれない。

その他、給付金額を住民税や学校給食費の滞納分の補てんに回すといったことも選択肢に含め、いろいろな施策を自由に組合せて行うことを認めて、すべてを基礎自治体の裁量に任すのである。そこではまさしく、首長の、議会の力量が問われることになる。

いま、生活保護の不正受給が大きな問題になっているが、福祉にしろ、医療にしろ、社会保障の最前線は基礎自治体が担当している。今回の消費税増税が社会保障対策であるならば、基礎自治体に「財源と裁量権」を与えることは、その目的に大いに合致していると言えるのではないか。

基礎自治体は住民税のみでなく、固定資産税も担当しており、また一番身近なところで住民と接している。その意味でも、国が一律に給付の線引き基準を決定するよりも、基礎自治体が担当した方が地域の実情により合った基準を設定できるだろう。また、その作業を通じて基礎自治体が住民の状況をより深く把握することが、基礎自治体の社会保障への対応力を強化することにもなるだろう。

 「定額給付金」には麻生内閣の際の経験がある。基礎自治体はその経験を踏まえて、より良い制度設計ができるだろう。またこれは恒久的な制度なので長期的な視点で考えることもできる。

 消費税を上げなければならないのであれば、国には、地方を含めて、より政治が良くなる方向で制度をいろいろと工夫して欲しい。