消費増税問題と民主党政権運営について

埼玉県所沢市 河登 一郎

1.財政悪化の最大の原因は「官」/公権力を中心とし、特別会計を含む血税の浪費構造であり、その凄まじい実態を具体的に知悉していたのが民主党でした。だからこそ、マニフェストに明記し、候補者が大声で主張し、国民が圧倒的に支持したのです。

2.しかし、現実に政権についてみると、官僚組織は想像以上に強力だった。それは賢いか否かの違いというより、行政に関する知識の量と経験の圧倒的な違い=プロとアマの違いです。「政治主導」は機能せず、実態は「官僚主導」です。

その結果、部分的には「天下りを減らし」「財源を捻出した」面はあっても、トータルとしては「換骨奪胎」「焼け太り」が事実上の成果として残りました。

3.消費税増税による増収が大きく目減りする点について整理し直すと、

(1)逆進性を是正するためにきめ細かく手を入れるほど、その分は目減りし、そのための行政経費は無視できず、それでも不公平は大きく残る、

(2)益税の目減りと不公平、輸出品への還付による目減りと不公平、

(3)最大の目減りは消費減(景気/経済成長へのマイナス)です。

@GNP決定要素は消費税だけではありませんから正確な試算はできませんが、この構造的不況の下で消費税を上げれば国民が消費を控えることは自明です。

A民主党政権もさすがにそれは分かっているから、増税法案に「成長率が実質2%を切れば増税は実施しない」趣旨の付帯条件を付けましたが、官僚は曖昧な表現で作文しているので、増税は実行されるでしょう。

4.野田首相が云われるように「消費税増税と並行してムダ遣い削減策を粛々と」実行できれば良いけれど、現実は逆の方向へ爆走中です:

(1)大型公共事業が(自民党が凍結していたムダな事業も含めて)一斉に復活しています。

(2)「東日本大震災」の美名に隠れて、使い切れないほどの大型予算を計上し、被災者ではなく「除染ムラ」「震災がれき広域処理ムラ」が密室内で凄まじい利権に群がっています。

(3)3党合意で増税案付則に「防災・減災強化」を織込み、自民党は「10年間で200兆円の公共事業」!を支出する「国土強靭化基本法案」を提出しました。消費増税で消費が減るので、経済活性化対策は必要ですが、大型公共事業への大判振る舞いは最悪の選択です。

1)「10年間で200兆円」と云う超巨額予算を使うためには、ムダな/有害な公共事業にもジャブジャブと血税が費消されることは目に見えています。

2)大型公共事業は多くの場合、随意契約や指名入札で天下り事業体が高値で受注する癒着/腐敗の構造が変わっていません。「退治する」はずの民主党政権がムダを拡大しています。

3)批判するのは簡単で、建設的な代案を示さなければ「批判のための批判」に終わります。血税無駄遣いの伏魔殿たる大型公共事業に代わる経済活性化政策としては、(i)規制緩和:農地法/都市計画法/電気事業法など無用な規制が経済の効率を妨げています、(ii)再生可能エネルギーなど戦略産業の育成強化:「10年間で200兆円の公共事業」の1/10の経費で10倍の効果が期待できます、(iii)減税と年金充実:国民が安心して消費できる環境が重要です。特別会計と特殊法人をゼロから見直せば無限に近い原資があります。

5.小沢新党を含む多数党員が離党し、残った党員の中にも消費税増税/無責任な原発再開などに反対している議員が多いことは当然の結果です。とはいえ、小沢新党でも「効果的な財政改善策」が簡単に実行できるとは思いません。特に最終的な顔ぶれを見ると、当初期待していた優秀な議員が離党を思いとどまったことが気になります。民主党の実力ある論客あと10名が「民主党の原点」に戻れば、小沢さんのマイナスイメージをプラスに変えて再び国民の支持を戻す可能性もあったのに残念です。政局はこれからも続きますから、まだこれからもチャンスはあると思います。少なくとも現在の民主党/自民党/公明党の野合を通じた「大政翼賛会」にしてほしくないと切望してやみません。

6.恐らく現政権は、強い「官」の血税無駄遣いを止めるには力不足を悟った時点で、財政危機を救うためには、弱い「民」からとるしか方法がないと判断したのでしょう。であれば、「国民のために命をかける」なんて偉そうに云わないで、事実を率直に公表して、「官」対策に全国民を味方につけなければいつまでたっても「官軍」には勝てません。