「コンクリートから人へ」からの転換期
千葉県柏市 峯木 貴
民主党による政権交代が達成された理由の一つに、「コンクリートから人へ」という理念をあげたことが考えられる。
コンクリート=箱もの(公共工事)、人=社会福祉、ととらえると、「コンクリートから人へ」は「公共工事から社会福祉へ」と読み替えることができる。この流れは自民党政権末期にはすでにあったのだが、民主党ははっきりと公約に掲げた点が国民に受けたのだと思う。公共工事という間接的な恩恵より、社会福祉という直接的な恩恵を選んだともいえるだろう。
ところで、このスローガンも昨今ほころびかけていることは周知のとおりである。
公共工事は箱ものとかバラマキともいわれ、自民党時代からも悪しきものだと削減される一方であった。社会福祉もバラマキと揶揄されているがこれは悪しきものであるのにかかわらず、増加させることが良いことと考えられている。しかし、公共工事を削減して社会福祉を増加させようとした結果どうなったか。社会福祉に回すお金が無くなってきたのである。
ここで、公共工事と社会福祉を別の観点から整理する。
公共工事は(地方空港のような単に無駄なものや、整備新幹線※のように地方の活力をそぐ、無駄なだけでなく有害なものもあるが)、一般的には公共投資といわれ、それを行うことにより経済に対する波及効果が出てくる。これを乗数効果といい、1.6〜2.4といわれている。つまり、1兆円投資すると、経済効果が1.6〜2.4兆円になるということである。そして公共投資ということで将来の子孫のための財産となる。
(※補足:大都市から地方にひと、もの、かねが移動するのではなく、整備新幹線により、地方から大都市へ吸い上げられ閑散とした地方都市となってしまう。新青森や秋田(整備新幹線ではないが)というターミナル駅を見ると分かるだろう。)
一方社会福祉は(セーフティーネットという観点からは非常に重要なものであるが)、配布する相手は、条件を付けることが難しいため不特定多数となり、公共工事よりバラマキ型になりやすい。もし、大学に合格することが条件で子育て給付をすれば、それは社会福祉ではなくなってしまうだろう。生活保護の人に職を探すことを前提に、といえばそれは生活保護ではなくなる。また、年金生活の人に対して条件を付けることはできない。乗数効果を見ると、社会福祉では0.4〜0.6となってしまう。つまり払ったお金に見合った経済発展をしない。多くのお金が預貯金に回ってしまうからである。
経済効果とはGDPの伸びである。そして、社会福祉の源泉は何かというとGDPである。であるから、GDPが増加しない政策を取ると、社会福祉まで削られることになる。それをここ20年ぐらい、自民党政権末期から民主党政権にかけて行ってきた。
つまり、公共投資を削って社会福祉に充ててきたのである。そして、現在民主党があげているスローガンは相変わらず「コンクリートから人へ」である。
このように投資効果がないバラマキを続ければ、いずれ経済は疲弊してしまう。いや、すでに20年も続けているのだから極度に疲弊しているだろう。
いまこそ「コンクリートから人へ」の理念を見直すべき時期である。まず投資を考える必要がある。(しつこいようだが、最低限のセーフティーネットは必要不可欠である。)投資であるから投資先は十分に吟味する必要がある。そして、投資効果が現れたら、それを社会福祉に回せばよい。それこそ消費税を上げるのである。
よく、「無駄な公共工事を止めて社会福祉に回せ」という方がいるが、それは誤りであると思う。公共工事を止めてむやみに社会福祉に回したため、逆に社会福祉の源泉がなくなってしまったのである。無駄な公共投資を行わないで、将来につながる公共投資に回し、そして、その剰余金を全て社会福祉に回せ、といえばよい。