消費税増税と民主党の政権運営について

埼玉県所沢市 河登 一郎

 

「消費税増税法」が成立しました。条件付きとはいえ、20144月に8%、1510月に10%になります。民主党政権の運営にも関連があります。要旨は下記の通りです。具体的且つ建設的なご批判を歓迎します。

 

1.日本の財政が危機的な状況にあることは、自明だと考えますので説明は省略します。

(その割には円高が続きますがここでは深入りしません)

 

2.財政悪化の最大の原因は「官」/公権力を中心とし、特別会計/特殊法人・独法を含む浪費構造で、民主党はその凄まじい血税浪費の実態を熟知していました。だからこそ、マニフェストに明記し、候補者が主張し、国民が圧倒的に支持したのです。

しかし、現実に政権についてみると、官僚組織は想像以上に強力だった。行政に関する知識の量と経験の圧倒的な違い=プロとアマの違いです。その結果「政治主導」は機能せず、実態は「官僚主導」です。

部分的には「天下りを減らし」「埋蔵金を捻出した」面はありましたが、トータルとしては「換骨奪胎」「焼け太り」が事実上の成果として残りました。

 

3.官による血税浪費を止められなければ、将来世代の負担を軽減するために残された数少ない選択肢として消費税増税、「強きを助け、弱きを挫く」政策が残ったのです。

私は、現時点で消費税増税すべきでないと考えます。理由は、複数面での目減り、特に消費へのマイナスが大きいこと及び低所得層に対してフェアーでないからです。

(1)逆進性を是正するためにきめ細かく手を入れるほど、その分は目減りし、巨額の行政経費がかかり、不公平は大きく残ります、

(2)益税の目減りと不公平、輸出品への還付による目減りと不公平、

(3)最大の目減りは消費減(景気/経済成長へのマイナス)です。

@構造的不況の下で消費税を上げれば国民が消費を控えることは自明です。正確な試算はできませんが、期待した税収増は大きく目減りし、バラマキ歳出は増加します。

A3党にもその位は分るので、増税法案に経済成長率に関する付帯条件をつけましたが、官僚の曖昧な作文ですから、よほどのことがない限り増税は実行されるでしょう。

 

4.消費に代わる景気刺激策として、公共事業で政府支出を増やせば、乗数効果を伴って経済が活性化するというケインズの主張を一般論として認めるとしても、日本の公共事業の実態は、乗数効果どころか、国民の血税が歪んだ形で一部の利権者を潤している実態を強調しすぎることはありません。実例は無限にあります。

 

5.「消費税増税と並行してムダ遣い削減策を粛々と実行」できれば良いですが、現実は逆の方向へ爆走中です:

(1)大型公共事業が(自民党が凍結していたムダな事業も含めて)公約に反して、説明もないまま一斉に復活しています。

(2)「東日本大震災」の美名に隠れて、使い切れないほどの大型予算を計上し、被災者ではなく「除染ムラ」「震災がれき広域処理ムラ」が密室内で凄まじい利権に群がっています。この点は、官僚世界を熟知した古賀茂明氏の「官僚の責任」に活写されています。

(3)3党合意で増税案付則に「防災・減災強化」を織込み、自民党は「10年間で200兆円の公共事業」!を支出する「国土強靭化基本法案」を提出しました。

@「10年間で200兆円」と云う超巨額予算を使うためには、ムダで有害な公共事業にもジャブジャブと血税がばら撒かれることは目に見えています。中心になってまとめたのが悪名高い族議員であることからも想像できます。

A大型公共事業が多くの場合、随意契約や指名入札で天下り事業体が高値で受注する癒着/腐敗の構造は変わっていません。「退治する」はずの民主党政権がムダを拡大しています。

Bこのような構造では、巨きい政府に巣くう一部の悪徳政治家、権力を私益に結びつける官僚、反社会勢力を包含する悪徳企業が、公正な競争を避け密室内で巨利をピンハネ、末端で「仕事をする」人たちにはその数分の一しか還元されない実態が温存されたままです。

C「消費増税分は全額福祉に当てる」も事実ではありません。お金にひもをつけるわけではなく、法律にも抜け穴があるので、増税の相当部分はムダな公共事業に使われます。

D財務省が増税実現のためにあくどい手段を使っていることも看過できません。

・反対派への脅し:予算配分や強制捜査権/刑事告発権を持つ国税庁/査察部を使って;

・賛成派への利益誘導:某宗教団体の脱税容疑対応や新聞など出版物への軽減税率適用;

・「租税特別措置法」は、財務省が恣意的に使えるアメとムチで、不公正の温床です。

 

6.批判するのは簡単で、建設的な代案を示さなければ「批判のための批判」になりますので、大型公共事業に代わる経済活性化政策としてポイントだけ列挙します。

(1)規制緩和:農地法/都市計画法/電気事業法など無用な規制が経済効率を妨げています、

(2)再生可能エネルギーなど戦略産業の育成強化:規制緩和と公正な競争が機能すれば「10年間で200兆円の公共事業」の1/10の経費で10倍の効果が期待できます、

(3)不公平税制撤廃/減税と年金充実:国民が安心して消費できる環境が重要です、

(4)地方分権:権限と財源を併せて移譲することです。

 

・・・「官」を大掃除すれば原資は充分にあります:特別会計廃止、出先機関廃止、ムダな公共事業中止、天下り禁止、歳入庁への統合など実施すれば、埋蔵金だけでなくフローとしての財源も充分に捻出できます。