究極の福祉自治体
千葉県柏市 峯木 貴
日本各地の地方自治体が疲弊しているというなかで、福祉政策を推し進めた結果、人口が増え、被介護者が減るという理想的な状態となっている「長野県下條村」を紹介する。
ひとつ付け加えたいのは、この改革は、一人の村長が、国、県、村議会、職員といった既得権益の反対を押し切って20年の歳月をかけて達成した結果である、ということである。
1.村の概要
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人口:約4,200人
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面積:37.66ku
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位置:長野県の南部、飯田市より車で20分程度
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産業:第1次産業人口26.9%、第2次産業人口31.4%、第3次産業人口41.7%
(農林業の割合が比較的高い地域である)
2.子育て支援
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この人口規模で村営保育園を建設し、かつ保育料を安くしている。
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補助金なしで村営住宅を建設し、家賃を安くしている。近隣の飯田市の半額ほど。結果、周辺の自治体から移住する若い夫婦が増えている。
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18歳まで医療費無料。
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教育ローン保証料補給制度により、村が教育ローンの保証人となる。
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中学生の海外体験学習をグアム島で実施。
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子供議会の運営。中学生が村の財政等について議論する。村長に提言することもある。
3.高齢者福祉
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脳刺激訓練教室や運動機能向上教室などを開催し高齢者の健康の維持を図っている。結果、被介護者が減り、介護保険料が安くなっている。
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保健師が県から派遣され食事指導を行っている。(ただし、これは県下全域で行われているもの)
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男性の寿命がとても長い。全国で31位。
4.人口構造
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特殊出生率は2.04で日本一である。全国平均は1.39。
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人口ピラミッドを見ると、89歳以下のすべての世代でほぼ人口が同一レベルである。つまり、高齢者、若年者の数が全国平均より割合が多い。一般的には40歳から70歳ぐらいまでが多く、高齢者、若年者が少なくなっている。
5.経費節減
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60人の村役場の職員を34人までに削減。結果、一人ひとりの能力が向上し、効率のよい行政を運営することができた。
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下水道をやめすべての家庭を合併浄化槽とする。下水道は莫大な費用が掛かるため。
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教育長を欠員とし年間約1千万円の経費節減。教育長は法律により設置しなければならないが、欠員ということでクリア。村長の見解は、しっかりした校長がいれば、屋上屋を架すような教育長はいらない、ということ。
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道路は村民たちで作る。資材は村が調達するが、工事は村民たちで行う。事業費が5分の1になったほか、村民のコミュニティーが向上するという結果となった。
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一人当たり100万円の基金。経費の節約により44億円ほどの基金を積み立てることができた。
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経常収支比率が全国で第6位。長野県で第2位。人件費や公債費が安く、極めてローコスト経営である。